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「SoftBank World 2016」で講演した木村情報技術株式会社。製薬会社のコールセンターにIBM Watsonを取り入れたサービスを展開する木村 隆夫 氏が考える、これからの事業展開、そして人工知能を活用したさまざまなアイデアとは―。

木村情報技術株式会社(以下、木村情報技術)は起業して12年目を迎える佐賀県の企業。医療とICTを掛け合わせた分野で活躍しており、医薬品の最新情報をWeb講演会というかたちで、一度に数千人、年間約30万人という医療関係の視聴者にライブ配信する事業や、医薬品業界向け出版、研修コンサルティング事業など幅広く手掛けている。

試行錯誤の末に辿り着いた、
IBM Watson日本語版の24時間お問い合わせ受付サービス

2015年11月初旬にIBM Watsonを知り、その翌週にはソフトバンクと日本で一番に契約を交わした、木村情報技術株式会社代表の木村 隆夫 氏。契約以降、今日に至るまで医療情報の発信にIBM Watsonを掛け合わせた研究開発を進め、現在では製薬会社、病院、薬局などで役立つシステムを開発。しかし、その道のりは簡単ではなかったという。

当初からIBM Watsonは、質疑応答が得意な人工知能だと聞いていた木村氏。「製薬会社は何百という製品を持っているため、オペレーターが答えられないことも多い。そこを人工知能に任せれば、コールセンターの一時対応ができるかも知れない―」。自身もかつて製薬会社に勤務していた経験から、AIとコールセンターが結びつくアイデアを思い付くまで、そう時間は掛からなかった。

木村氏が最初に取り掛かったことは、医薬品のデータや診療に関するデータなど、膨大な医療情報をIBM Watsonが認識するようにインプットすることだった。さらに、音声で答える仕組みもPC・スマホで作った。しかし、医薬品の質問を受け付けるコールセンターでは薬の副作用や保険のことなど質問が多岐にわたるため、想像通りの答えをしてくれない。そこで次に考えたのが、オペレーターがお客様からの質問の一部を復唱し、そこだけをIBM Watsonに答えさせる方法だった。「基本はオペレーターに任せるが、答えられる部分は人工知能に任せる」というやり方である。だがこれも、オペレーターの負担軽減とまではいかなかった。

しかし、木村氏は試行錯誤を糧に“24時間対応のお問い合わせ受付サービス”を考え出した。薬の説明に特化し24時間対応するほか、副作用などの派生情報はWebブラウザ内にクリックできる選択肢を設けることで対応。お客様に選択肢を出しプッシュされた情報にのみ反応することで、多岐にわたる内容を一度に質問されないようにコントロールした。「これならコールセンターの人員を増やすことなくいつでも対応できる。コスト面も効果が見込めるため、導入の話が進んでいる」と木村氏は語った。
ほかにも、薬に副作用が発生した際、厚労省に提出する報告書類の作成業務や、医師・薬剤師・看護師を教育するシステムを検討中だという。「当社ではIBM Watsonの機能を応用開発するセンターを設立しました。今は10人程度ですが、増やしていきたい」。試行錯誤の末、新しい道を切り開いた木村氏はそう語り、講演は幕を閉じた。

アフターセミナーインタビュー
IBM Watson日本語版から生まれる、ビジネスモデルに想いを馳せる

- IBM Watsonを利用したいと思ったきっかけは?

木村 隆夫 氏:木村情報技術 代表取締役
木村氏 :2015年11月4日に開催された、医療・ヘルステック分野のグローバルカンファレンス「Health 2.0」のセミナーで知りました。IBM Watsonがあれば世界中の医学の文献から見つけるのに何十年もかかるような膨大な薬の情報を、1ヵ月で何件も見つけられる。それを聞き、いずれは私がしている仕事も全部IBM Watsonに取って代わられると思いショックを受けました。しかし、その1週間後にソフトバンク経由で使えることを知り、すぐに電話をして契約をお願いしました。実はセミナーで話を聞いて以降、IBM Watsonを医療で活用できるアイデアが20も30も思い浮かんでいたのです。
- サービスを生み出す際に苦労したことは?
木村氏 :問いかけられ方のゆらぎ対応です。IBM Watsonは質疑応答が得意で、何か言うと何か答えます。答えに関しては決まったものを1つインプットすれば良いのですが、その答えに紐づく質問の仕方には色々ありますよね。例えば、「あなたの名前はなんですか?」、「名前なんて言うの?」とか。全部「私の名前は◎◎です」と答えられないといけない。完全一致していなくても、IBM Watsonは答えを引っ張ってきてくれますが、質問のパターンをたくさん用意してQ&Aのパッケージを作るのは大変でした。

しかし同時に、これはチャンスだと思いました。こうしたパッケージの制作にはマンパワーが必要で、都心の大企業などでは人件費がかさみます。一方、私の会社は佐賀県の企業です。そこで佐賀県庁にこの話を持っていき、「佐賀を人工知能の拠点の県にしよう」という話を持ち掛けました。人工知能に関する相談があれば、佐賀の色々な人に協力を仰げる体制ができ、さらには開発環境のベースを構築できると考えています。
- 今のサービスを、どのように広げていきたいですか?
木村氏 :講演でもお話しした、24時間お問い合わせ受付サービスは製薬会社のWebサイトに導入されており、PCでもスマホでも利用できます。今まで24時間対応というものは無く、しかも人件費の削減もできるので、ひとつのビジネスモデルとなっています。現在、医療で製薬会社を中心に、10社ほど商談のアポイントを取っている状況です。

最近の話ですが、私たちの取り組みを知った医療関係ではない企業にもお話をしたところ、とても好評で話が進んでいます。私たちが持つIBM Watsonの仕組みは医薬品に限らず、コールセンターとしての質疑応答のノウハウを持っているので、他業種でも通用します。こうしたことからも、あらゆる業界から仕事をいただけるのではないかと思っています。
- IBM Watsonを活用したほかの構想をお持ちですか?
木村氏 :今後は、会員登録をすればIBM Watsonのツールを利用できる医療ポータルサイトを作ることも考えています。ツールの利用条件に会員登録を設け、10万、20万人の会員情報を集められれば、IBM Watsonの語彙力向上のみならず、会員情報とツールの使用履歴を紐づけてビッグデータ化ができます。そうすればマーケティングデータとしての価値も生まれ、また新たなビジネスモデルとなるのではないかと考えています。
- あなたにとって人工知能とは?
木村氏 :人工知能の普及によって「世の中の約半分の仕事が無くなる可能性がある」と言われていますが、本当にそうなるかどうかは、今後10年、20年経たないと分からないと思っています。むしろ、私にとって人工知能は“凄い可能性を持った魅力的なツール”で、人間の考えを拡張・サポートして、新しい何かをもたらしてくれるモノだと思います。これからも世の中の役に立ち、今まで無かったサービス・ソリューションを生み出していきたいと考えています。
医療×ICT分野の事業を展開する、木村情報技術株式会社。講演では試行錯誤の末に辿り着いた「IBM Watsonの24時間お問い合わせ受付サービス」によって、製薬会社のコールセンターにおける24時間対応、人件費削減に成功した事例が語られた。また、講演後のインタビューでは、コールセンターの仕組みをあらゆる業界へと広げていきたい考えをはじめ、地元の佐賀県を人工知能の拠点にしたいという想いや、医療ポータルサイトを作り、自社サービスをフックにマーケティングデータの収集を行ってみたいなど、IBM Watsonを軸にさまざまなアイデアが語られた。


取材協力 木村情報技術株式会社 様
https://www.k-idea.jp/
 
関連リンク
IBM Watson 日本語版
(取材日 2016.07.22)

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