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新たな学習方法として注目を浴びている効率的な記憶の定着化が図れるアダプティブラーニング。企業が簡単にアダプティブラーニングを導入できるプラットフォーム「Cerego(セレゴ)」がもたらす学習の変化について、日本国内で販売を行うサイバーユニバーシティ株式会社 代表取締役社長の緒方 惠一郎氏に話を聞いた。また、いち早く「Cerego」を導入した西日本旅客鉄道株式会社の平井 利幸氏に、導入の経緯や、ここまでの成果を伺った。

緒方 惠一郎(おがた けいいちろう)
1985年に日本ソフトバンク(現ソフトバンク株式会社)に入社後、営業を経てNovell、Click2Learn、Akamai等とのJV設立や新規事業企画に従事。2008年よりソフトバンクモバイルの研修部門にて全社と販売店向けのeラーニングを構築し、企業内大学のソフトバンクユニバーシティを設立。2012年より、文科省認可のサイバー大学の運営と法人向けeラーニングを提供するサイバーユニバーシティ株式会社の代表取締役社長。

企業や教育現場で活用できる、記憶の強化を効率的に図るシステム

アダプティブラーニングに出会ったときのエピソードを教えてください。
緒方:私がソフトバンクの総合研修統括部で研修全般の責任者をしていた当時、社員研修で英語を学ばせようという話が持ち上がりました。そのための教材を色々探した結果、「iKnow!(アイノウ)」というアプリに出会いました。「iKnow!」は英単語を効率良く覚えるためのアプリで、非常に出来も良かったため社員研修に導入したのですが、実は「iKnow!」で人の記憶を管理するエンジンが使われており、それが「Cerego(セレゴ)」だったのです。
世の中には英単語の他にも、受験や資格試験から社内業務まで覚えておかなければいけないものがたくさんあります。そうした数あるシーンで、クラウド上にある「Cerego」のエンジンを利用すれば人の記憶をサポートできる。そこで現在私が代表を務めるサイバーユニバーシティ株式会社が日本の総代理店となり、新たな学習方法として、「Cerego」を使ったアダプティブラーニングのソリューションを販売していくことにしました。
既存のeラーニングとアダプティブラーニングの違いを教えてください。
緒方:今までのeラーニングやその他の学習法でも基本や原理を学ぶことはできますが、記憶を強化して忘れないようにする手段において効率的とは言い難いところがあります。記憶を強化するには、例えば教科書にマーカーを引いて覚えたかどうかを振り返って確認する、というような、個人のアナログ的なメソッドに依存します。「Cerego」は、受講者が自分の記憶状態を意識することなく、アプリをタップし、出てきた問題に答えるだけで記憶が強化され、覚えていくことができるので非常に効率的です。
管理者側と受講者側、それぞれにとってのメリットを教えてください。
緒方:管理者側は、管理者用インターフェースが見やすく、今学習している人たちの様子をグラフィカルかつリアルタイムに確認することができます。ある受講者が学習を終えると、その人のアイコンが受講者全体のグラフの中で学習度合いに応じて上下します。また、管理画面から受講者の記憶の強度も確認できるため、これまではテストをしないと判明しなかった「この問題の答えは覚えているが、こっちは覚えていない」という状況を把握することができます。そのため、どうすれば簡単に覚えてもらえるか検討が可能になり、問題作成時の参考資料にもなります。一方、受講者側のメリットとしては学習時間の軽減が挙げられます。例えば、ある人が問題を回答するまでに10秒かかった場合、「Cerego」は正解・不正解に関係なく、その人の記憶に強く留まっていないと判断し、しばらくしてから同じ問題を出題します。そのため、受講者は次に何をやらなければいけないかを考える必要がなく、学習が効率化されることで負担も軽減します。もう一つ例をあげると、業務において複雑なマニュアルを覚えてもらう必要があるとして、日々の業務の間にまとまった時間を設けて勉強するのは難しいものです。しかし、「Cerego」はその人の記憶に合わせた問題を自動的に組み合わせて出してくれるので、隙間時間に短時間で効率よく学習することができます。
導入先にはどのようなメリットがあるとお考えですか?
緒方:AIがいつかは人間の脳を越えると言われています。しかし、テストも評価も人が受けるものなので、結局は覚えた内容を人が書き出す作業が必要になります。その過程において「人間の記憶に深くインプットする」という時間と労力を軽減するには、アダプティブラーニングが向いています。管理者側も受講者側も学習がラクになり、結果、学習活動をサポートする仕組みとしてAIとは違うアプローチにアダプティブラーニングの良さがあると思っています。
「Cerego」はどのような分野で活躍するのでしょうか?
緒方:もとはアメリカの大学や専門学校などで学習に使われることを目的に開発されました。国内では、テスト前に学校で学んだことをより深く覚える場所である塾等の教育現場でも需要があると考えています。さらに、企業へ目を向けると、ソフトバンクのような販売店が多数あり、多岐に渡る商品やサービスを扱っていて多くのマニュアルを覚えなくてはならない会社・業務にも活用できると考えています。商品もサービスも日々変化するので、ショップ店員の学習が追い付かないという課題も隙間時間を利用して効率的に学べるからです。同じ理由で企業のコールセンターでも、基本的な事柄の学習に使いスタッフ全員の基礎知識を固めてレベルの底上げができます。導入事例としては、現在、JR西日本様に導入され、運輸関係指令員の方が対応業務に関するマニュアルを覚えるために活用されているものがあります。アダプティブラーニングは、AIのように人の生活に劇的な変化を起こすわけではありません。しかし、学習の負担を減らして必ず人の役に立つものだと信じています。
平井 利幸(ひらい としゆき)
西日本旅客鉄道株式会社鉄道本部 運輸部 指令業務課。運輸関係指令員に関わる教育や指導を担当。日本の大手企業の中でもいち早く「Cerego」を導入し、運輸関係指令員の教育・学習効率の向上に役立てている。

JR西日本の導入事例:基礎知識向上と技術継承に役立てる

アダプティブラーニングを導入することになった経緯を教えてください。
平井:私たちは2014年から運転マニュアルなどのペーパーレス化を目指して全運輸関係指令員にタブレット端末を持たせています。データ化することでマニュアルのアップデートも簡単になりましたが、それだけではなく、業務知識が多岐に渡る運輸関係指令員の教育・学習もタブレット端末を活用して行えないかと考え、eラーニングのソフトを探しました。その過程でアダプティブラーニングの「Cerego」に出会いました。テストをして結果が出ないと善し悪しが分からないこれまでのeラーニングよりも、結果を出すまでの間に個人の記憶を判断して最適な問題を出せるところに魅力を感じました。
運輸関係指令員の学習に向いているとお考えになった点を教えてください。
平井:ひとつは仕事の合間に学習できる点です。運輸関係指令員は列車のダイヤが乱れたときに正常なダイヤにすることが主な仕事ですが、他にも夜間で列車が走らない時間に行われる工事の作業者の安全を確保する仕事や、イベントなどで乗客が増えたときに臨時列車を走らせる仕事、列車が遅れているときなどに運行状況をお客さまや社員へ情報提供する仕事など、覚えることが多岐に渡り、昼夜問わず非常に忙しい職種です。そのため、5~10問といった少ない問題を空いた時間に学習できることが求められました。もうひとつは現在の学習における記憶状況が分かることです。運輸関係指令員の業務は、取り扱い方を間違えると危険な状況を作り出してしまうケースがたくさんあり、状況によっては、正しい知識をもってすぐに判断できる即断力が必要な場面に遭遇します。そこで、知識の確認テストをするまで記憶の定着結果が分からないよりも、記憶の弱いところをすぐに補って底上げできる点が、我々の仕事に合っていると判断しました。
導入後の管理者、受講者の反応はいかがでしたか?
平井:管理者側の多くが50代のベテラン社員で、PCを使った新しい仕組みを上手く使いこなせるか不安はありました。しかし実際に使ってみたところ「感覚的にどこを触ればよいのかなど管理者画面が分かりやすい」と非常に好評でした。一方、受講者側も自分のレベルが確認できるため、互いに比較しあったり管理者とのコミュニケーションも増えるなど、意識の向上が見られました。また、今まで繰り返し教育していた内容と、復習が少なかった部分に対し「Cerego」はしっかり結果として判別できていたので「Cerego」への信用度が高まりました。教材を「Cerego」向けにコンバートする際には苦労しましたが、一度インプットしてしまえば後は問題をアップデートすればよいので助かっています。今後は文章だけではなく、例えば車両の音や駅の中で聞こえる音なども問題にして、学習に取り入れたいと考えています。
「Cerego」はどのような課題を抱えている会社に向いているとお考えですか?
平井:弊社はベテラン社員が減り、若い社員が増えてきました。社員の年齢構成に開きがあることで、ベテランから若手へ技術継承がスムーズにいかないことが社内の課題になっています。その技術継承が「Cerego」を通して解決できつつあることを考えると、上司と部下の世代に開きがある会社においてジェネレーションギャップを埋める役割を担わせるなど、技術継承が急務となっている会社には向いているのではないかと思います。
緒方氏はソフトバンクの研修責任者をしていた当時、英単語を効率よく覚えるアプリ「iKnow」のエンジンに「Cerego」が利用されていることを知り、自身が代表となったサイバーユニバーシティ株式会社の新しいソリューションとして取り扱うことを決めた。既存のeラーニングと比べ記憶の強化に重点を置いてリマインドされるため、受講者は次のアクションを考える必要がなくなり学習の負担も減るという。さらに、管理者用のインターフェースが見やすく受講者の学習状況を把握できるため、次なる対策の参考になりやすいこともメリットに挙げた。また、大手企業としていち早く「Cerego」を導入した西日本旅客鉄道株式会社の平井氏は、その経過や成果について、隙間時間に学習できることや、テストを待たずに学習過程で記憶を強化できる点が、非常に忙しい職種である運輸関係指令員の教育にマッチしており、さらにベテランから若手へ技術継承をスムーズに行う上でも役立っていると語った。

サイバーユニバーシティ株式会社
http://biz.cyber-u.ac.jp/
西日本旅客鉄道株式会社
https://www.westjr.co.jp/
(取材日 2017.05.23)

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