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アスクルが提供する個人向け通販サービス「LOHACO(ロハコ)」。このLOHACOには、テキスト入力をベースに問い合わせ対応を行うチャットボット「マナミさん」がいるが、新たに「IBM Watson(tm)」をベースにした対話型システムの採用を決めた。AI(人工知能)は、同社がマナミさんに求める「人間らしさ」「親しみやすさ」「ぬくもり」の実現にどう貢献しているのか。同社の小宮 りか氏に話を聞いた。

アスクル株式会社
カスタマーサービス&エンゲージメント
カスタマーエンゲージメント LOHACOエンゲージメント
小宮 りか氏
LOHACO
マナミさん
アスクル株式会社
中小企業向けのオフィス用品・現場用品の通販サービス「ASKUL」、大企業向けのオフィス用品・現場用品の一括購買サービス「SOLOEL ARENA」、大企業グループ向けの間接購買ソリューション「SOLOEL」、個人向け日用品通販サービス「LOHACO」などの事業を展開。近年は「テクノロジーファースト」を標榜し、ビッグデータやAI、ロボットなどを積極的に活用したイノベーションの創出を目指している。

IBM Watsonと他のシステムを連携させればライフスタイルに合った提案までを行える

2012年に開始した個人向けの日用品通販サイト「LOHACO」が非常に好調なようですね。
小宮氏:LOHACOは、オフィス向け通販「アスクル」で培ったノウハウとインフラを生かし、「くらしをかるくする」をコンセプトに展開しているサービスです。飲料・食品、酒類、化粧品、医薬品など、日々の生活に欠かせない多様な商品を低価格で提供するとともに、最短当日にスピード配送します。また、新しいライフスタイルの提案にも力を入れており、メーカ様と協創した商品開発などにも積極的に取り組んでいます。サービス開始以来、忙しい女性を中心に多くのお客さまに利用いただいており、2016年の段階で累計利用者数は300万人を超えています。
LOHACOには「マナミさん」という、いわゆるチャットボットがいますね。マナミさんを活用しようと考えたきっかけを教えてください。
小宮氏:LOHACOの成長に比例して、お客さまからのお問い合わせ件数が年々増加していました。電話やメールでの対応には限界があるため、よくあるお問い合わせと回答をまとめたFAQコンテンツの充実を図ったのですが、結局はお客さま自身がそれを探さなければなりません。暮らしに寄り添うサービスであるLOHACOならではの方法はないか──。そこで考えたのが「マナミさん」です。商品の特徴や購入・支払い方法など、お問い合わせをテキスト入力すると、マナミさんが答えてくれます。
マナミさんの開発に当たり、もっともこだわっている点はどこですか。
小宮氏:マナミさんは、お客さまの自己解決を支援するツールであると同時にLOHACOの「顔」のような存在。息吹を吹き込み、より人間らしく育てていきたいという思いがあります。ですから、マナミさんの話し方は「~ですね」「~ですか?」というように親しみのある口調にしていますし、商品とは関係のない問いかけにも反応できるようにしています。例えば、「かわいいですね」と入力してみてください。マナミさんは「照れちゃいます」と答えてくれます。もちろん、こうした表現の工夫だけではありません。何より大事なのは、お問い合わせに対して、的外れではなく的確に回答することです。定期的にミーティングを行い、マナミさんが解決できなかったお問い合わせを精査して、次に同じお問い合わせを頂いた際には、正確に答えられるようマナミさんを成長させています。
大量の問い合わせを精査して、正しい回答ができるように改善していくのは、とても大変な作業なのではないですか。
小宮氏:同じお問い合わせでも、お客さまごとに言い回しは異なりますし、非常に大変な作業になりますので、なんとか省力化したいと考えていました。そこで、マナミさんのエンジンを新しくし、「Watson」に変更しました。以前の仕組みでは、お問い合わせに対して、正しい回答を紐づけるには、自然言語のシステム化に精通したエンジニアが「お問い合わせ」の解釈を定義したりしながら、正しい回答と紐づけて1つずつ設定していく必要がありましたが、自然言語エンジンとマナミさんのようなWatsonをベースにした対話型システムのバーチャルエージェントであれば、最初から細かい言い回しの違いなどは気にすることなく、お客さまからのお問い合わせに対して、正しい回答をそのまま登録していけます。改善のための工数を約半分に削減することができ、マナミさんの成長のスピードアップにつながっています。
IBM Watsonの拡張性にも期待しているそうですね。
小宮氏:AIを導入することでマナミさんの正答率は向上していますが、ここで満足するつもりはありません。現時点のマナミさんは、配送日の変更について、どこへどのように問い合わせたらよいかといった解決方法を示すだけで、実際の配送日変更はオペレータに依頼する必要がありますが、将来的にはマナミさんだけでオペレーションを完結できるようにしたいです。また、単にお問い合わせに答えるだけでなく、お客さま一人ひとりに寄り添ったパーソナルな対応ができるマナミさんに育てていきたいと考えています。例えば、定期的に同じ商品を買っていただいているお客さまに「そろそろ買い置きがなくなる頃ではないですか?」と逆に質問したり、「いつも購入されている商品がセールになっていてお得ですよ」と提案したり、といった対応などです。そのためには、マナミさんとさまざまなシステムを連携させなければなりませんが、Watsonなら、そのようなシステム連携をスムーズに行えます。この点もWatsonを採用するきっかけになりました。
新しく生まれ変わったマナミさんの評価や評判はいかがですか。
小宮氏:マナミさんの見た目は変わっていないので、成長についてお客さまから直接評価をいただくことはありませんが、確実にマナミさんの成長は加速しています。現在、マナミさんへの問い合わせは、月に1万件ほど。メールや電話を通じたオペレータへのお問い合わせは月9,000件ほどです。多くのお客さまが、最初にマナミさんを利用して、それでもわからないことがあったらメールや電話で問い合わせを行うといった「いい住み分け」ができていますが、マナミさんのカバーする範囲が広がれば、オペレータ業務の効率化やサービスレベルの向上につながると期待しています。また、働く女性のお客さまの場合は、オペレータの問い合わせ窓口が開いている時間に連絡をできないことも多いのですが、マナミさんなら24時間対応できます。マナミさんの解決率が上がれば、お客さまにもっと安心してお買い物をしていただけます。
マナミさんの成長が本格化するのは、これからなんですね。
小宮氏:はい。お客さまがもっと気軽に話しかけられ、困っていることを解決するだけでなく、ライフスタイルに合った提案も行ってくれる。そんなマナミさんになれるよう、さまざまなチャレンジをしていきたいと考えています。
さらなる成長のために生まれ変わった“新生”マナミさんは、りらいあコミュニケーションズが提供する対話システム「バーチャルエージェント」に、日本アイ・ビー・エムとソフトバンクが共同で提供するWatson日本語版APIを活用することで誕生した。最新のAI技術を利用しつつも、それを前面に押し出すのではなく、親しみやぬくもりを重視している点が、顧客の日々の暮らしを支えるLOHACO、そして、マナミさんの特徴と言えるだろう。ただし、マナミさんの成長によってオペレータが不要になるというわけではなく、アスクルは役割を整理して考えている。昨今、話題になることが多い「人」と「AI」の関係に対しても1つの解を示そうとしているようだ。
 
 
取材協力 アスクル株式会社
http://www.askul.co.jp/
 
LOHACO
https://lohaco.jp/
 
IBM Watson
https://www.softbank.jp/biz/watson/
 
IBM Watson(バーチャルエージェント)
https://www.softbank.jp/biz/watson/planning/solution/virtualagent/
(取材日:2017.6.1)

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