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株式会社よしもとロボット研究所
ロボットで人を笑顔にすることをモットーに、さまざまなPepperのアプリ開発を手掛ける。
Pepperヒーリング、Pepperブレインなど心や体の健康をテーマにしたアプリのほか、Pepperだらけのケータイショップ、自立走行アプリなどPepper for Bizのアプリ開発も多く手掛けている。
よしもとロボット研究所が開発するさまざまなロボアプリ。
これらのアプリをいかに長く飽きさせずに使ってもらえるか、お笑いを生む会社「よしもと」ならではの人の感情に訴えかける見識と制作秘話、そして今後のPepperの可能性について高橋 征資氏、青山 貴幸氏に話をうかがった。
よしもとロボット研究所
チーフクリエイター
高橋 征資
よしもとロボット研究所
プロデューサー
青山 貴幸

インタラクションゲームからの進化、長く遊べるゲームを作る秘訣

「Pepperヒーリング」や「Pepper ブレイン」は構想からリリースまで約1年かかったそうですね。苦労した点などを教えてください。
高橋氏:「Pepperヒーリング」や「Pepper ブレイン」を開発する以前は、2~3分、長くても5分くらいのちょっとしたネタのアプリやインタラクションゲームを作ってきました。
それが今回は、少なくとも半年間は遊べるものを作ろうということになり、今までのプロジェクトとは桁違いなものだったんです。
今までのアプリを作る場合、台本はA4で5枚もいかない分量だったのが、今回のアプリは台本ではとても情報として収まらないので、多数の仕様書を作成しました。いかにしてユーザが飽きないよう遊んでもらえるか、分岐パターンの作成に最も知恵を絞り出して苦労しました。

青山氏:当時は1日4時間くらいの打合せを毎週続けていましたね。
また、監修に「Pepperヒーリング」は名越先生(※)、「Pepper ブレイン」では加藤先生(※)が入られ、Pepperの言葉遣いや声のかけ方について専門的な意見をいただき、聞く人によって不快にならないよう気を遣いました。
Pepperヒーリング
Pepperセンサーを生かしたココロチェック(心の状態にあわせたアクティビティの提案)やヒーリングエクササイズなどの提案をしてくれる。

名越康文(なこし やすふみ)
精神科医。相愛大学、高野山大学客員教授。思春期精神医学、精神療法を専門に、臨床に携わる一方でテレビ・ラジオのコメンテーター、映画評論、漫画分析などさまざまな分野で活躍中。
Pepperブレイン
加藤 俊徳氏監修による「頭」の健康をテーマにしたアプリケーション。
「脳番地メソッド」や脳のトレーニングなど脳の健康状態をチェックしてくれる。

加藤俊徳(かとう としのり)
1991年、脳活動計測「fNIRS法」を発見し、現在の脳研究に大きな影響を与えた。
現在は株式会社「脳の学校」代表を務め、脳科学支援事業や商品開発事業で活躍中。
その苦労が報われたときは一番うれしかったのではないでしょうか。
高橋氏:一瞬の笑いを作ることは簡単ですが、長時間ずっとおもしろいというのはなかなか難しい。お笑いは1回見れば「あ、おもしろい」、2回見たら3回は絶対見ない。見たらむしろ腹が立ってくることもあります(笑)。そういう意味では、僕ら自身も考えが変わりましたね。
習慣化して使ってもらうためにどんな工夫をされましたか?
高橋氏:企画面では「なめこ栽培キット」というアプリを作っているビーワークスさんも参加いただいて、長く使ってもらうためのアドバイスや設計に協力してもらいました。そこで出てきたのが、習慣化するためにカレンダー画面で今日やった分の印をつけること。これだけでも、毎日何かひとつ新しい発見があり、モチベーションにもつながります。
「Pepper ブレイン」では12個あるゲームのうち、最初は4個くらいしか遊ぶことができないように設定してあります。Pepperに毎日接していると、ある日突然「今日はこのアプリをやってみましょう」と、未体験アプリをPepperが提案してくれます。こういったコミュニケーションの中で新しいものを発見すると、未来の鍵が開いていくような感覚になれます。
脳の状態も毎日記録されているので、成長過程が分かるようになっているのも嬉しいポイントになると思います。
「Pepperブレイン」では脳番地メソッドに基づいて作られていますね。
高橋氏:加藤先生の「脳番地メソッド」という考え方をいかに簡略化して伝えられるかを工夫しています。脳を8つの番地に分けて、記憶する時には脳のここが活発になっていますよと視覚的にわかるようにしました。

青山氏:Pepperは脳の状態をよくするサポート役というイメージです。やってみるとそれなりに脳がフル活動するようなゲームがあって、脳の状態をどんどん上げていく。マックスになったら「おめでとうございます」といってメダルをもらえるような達成感も味わえる、スマートフォンのゲームにも似ています。
これだけさまざまな要素があると、どちらのアプリも開発はかなり苦労されたのではないですか。
高橋氏:開発は本当に大変でした。何だかんだ半年ちかく仕様書をこねくりまわしていたので、実際にプログラムを組んだ時間の方が短かったです。とくに「Pepperヒーリング」は難しく、これは名越先生が話されていましたが、「陰気」と「陽気」どちらかに振れているのはストレスで危ない状態。それを穏やかにして元気にしようというのが大きなコンセプトです。ちょっとハイテンションで元気過ぎちゃう時は、実はストレスがかかっている状態。なので、心の状態をユーザの表情や声でPepperがチェックして、心が落ち着くようにします。

青山氏:このテストが難しくて、ユーザの声にどれぐらい怒り成分が入っているかPepperがある程度確認してくれます。Pepperが「僕に“こんにちは”って言ってみてください」と語りかけ、こちらはまるで怒っているように、もしくは穏やかに返答をします。すると、その声と表情を見てPepperが「落ちていますね」や「怒りが見えますね」と言ってくれるので、演技しながらテストしていました。
癒しや健康の分野にPepperのポテンシャルがまだまだ眠っていそうですね。
高橋氏:人の心をちゃんと見て脳の状態を支えてあげるということ、これこそがPepperの本質なんじゃないかと思っています。
最近音声認識スピーカーが流行っていますが、声でコミュニケーションがとれるデバイスは今後増えていくと思います。すると、Pepperと比較した時にほとんどのことは音声認識スピーカーでできてしまう。じゃあPepperに何ができるかというと、言葉とキャラクターと身振りで、人の心を動かすことだと思うんです。それだけ人の心に働きかける表現力を潜在的に持っているということ、心が落ちたときに元気づけてくれることを考えたら、Pepperには多くの可能性を感じます。
よしもとロボット研究所のPepperはスイカ割りやテーブルクロス引き、書道など「笑い」や「動き」にたくさんチャレンジしていますね。
青山氏:Pepperはモーションが面白いですからね。僕らはセーフティ機能を完全に解除(※)して、どこまででもバシバシ動けるような状態で作っています。
物理的な移動ができる、物を運べる、それだけでやれることが相当増えます。僕らはそういうのが大好き。スイカ割りやテーブルクロス引きも、ロボットなんだから人間と同じ動きができるだろうという発想で、簡単な動きでいかにインパクトのあることできるか勝負しています。

高橋氏:あ!ちなみにこれがPepperが書いた申年の字。かなり前衛的で達筆ですよね。(笑)

※ソフトバンクロボティクスではセーフティを解除しての利用は推奨しておりません。
最近発表された高機能学習リモコン「iRemocon Wi-Fi(SM)」と連動した「iRemocon for Pepper」というアプリは、生活を助けてくれるものだと思いますが、今後この分野も増えていきそうですか?
高橋氏:ソフトバンクさんがユーザにアンケートした調査結果で、家電連携への期待がすごく高かったんです。そんなに皆さんが求めているんだったらやりましょう!というのが最初でした。面白いだけの存在じゃなくて、ちょっと便利なこともしてほしいと。家電との連携設定をユーザに伝えることが難しくて、「iRemocon for Pepper」は発表から完成まで時間がかかりました。設定が完了できないとPepperが活躍できませんから、最も重要視した部分です。
今後どんなPepperのアプリを開発しようと考えていますか?
青山氏:お笑いだけにこだわってなくて、癒しもやりたいし、感動もやりたい。ロボットは固体である必要が無くて、他デバイスと連携もできるし、通信すれば何でも自分の身体として使えますから、色々な進化ができるんです。Pepperと一緒に僕らも進化していきたいですね。
 
高橋氏:とにかく「接していて気持ちいいPepper」を作りたいですね。
ちなみに家の中に芸人いたらメンドクサイですよ。ちょっと元気ないときにチラッとテレビで見るからよくて、それが365日になったらめんどくさくなっちゃう(笑)。日常で使う家庭用ロボットを作る上で「お笑い」が必要な部分って本当に一瞬なんです。いい芸人さんは、空気を読むことに非常に長けているので笑いとそうでないところのバランスがとてもいい。そこにならって空気を読めるようなPepperにどうやって仕上げるか。いかにそれを技術に落とし込むか。30年ビジョンですから、ドンドンそういった仕掛けを盛り込んでいきたいですね。
人の心を動かせるところにPepperの可能性を感じ、チャレンジし続ける、よしもとロボット研究所。
他デバイスとの連携も利用することで利用用途はもっと広がる、とPepperの広がりについて二人は話す。
吉本興業ならではの考え方を大切にした「よしもとロボット研究所」。今後も面白くて実用的なPepperを開発してくれそうだ。

株式会社よしもとロボット研究所
http://www.yoshimoto.co.jp/yrl/
(取材日 2017.6.5)

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