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「SoftBank World 2016」で講演した株式会社 空色へインタビューを行った。アパレルECサイトでの購入率を飛躍的に高めた自社サービス「OK SKY」に、IBM Watsonを組み合わせた同社の新たなる目標とは―。

株式会社 空色(以下、空色)は、接客サービスにより継続して買い物をしてもらえる顧客を一人でも多く増やす事業にフォーカスする企業。社員にはシリコンバレーで決済サービスを開発してきたエンジニアやアパレル業界で店長をしていたスタッフ、さらには同業界に20年以上従事してきた役員もおり、各業界で実務経験を積んできたスペシャリストが多数在籍している。

IBM Watson 日本語版を導入し進化を遂げた、
商用ファッション提案システム「OK SKY」

株式会社 空色では、2014年12月よりチャットを通して洋服が買えるショッピングサイト「PRIMODE」を自社事業として運営。アパレル店舗の敏腕スタッフや雑誌・広告で活躍するスタイリストがチャットに参加することで蓄積されたやり取りのノウハウを昇華し、2015年12月に「OK SKY」のサービスを開始した。

アパレル業界の売り上げの約8%がECサイトと言われ、その割合は毎年2~3%向上しているという。販売の戦略上ECサイトは大きな役割を担っているものの、専属の組織の立ち上げや膨大になる商品撮影、店舗とは違う商品の在庫管理、多数のキャンペーン情報をSNSやブログに掲載するなど、オペレーションは煩雑になりつつある。また、「単一ブランドでも数千から数十万点のアイテムがあるため、選択肢の多さが逆にお客様の集中を妨げる」と代表、中嶋 洋巳 氏は語る。しかし、チャットで商品の絞り込みをサポートする「OK SKY」により、導入企業のECサイトでは購入率が1%から15%にまで上昇したという。
そして、2016年8月より、「OK SKY」で蓄積された450万件以上のやり取りや30万以上の会話データをIBM Watsonに学習させ、同時に多くの顧客に対応できるサービスをスタート。会話の約70%を占めるニーズのヒアリングと提案商品の絞り込みをAIに任せ、完結できない場合は人にバトンタッチし、AIと人の強みを上手く組み合わせる接客サービスの提供を開始した。

最初の導入企業はハイティーンに人気を誇るブランド「OLIVE des OLIVE(オリーブ・デ・オリーブ)」。登壇した代表取締役である瀧 直人 氏は、「ターゲットである女子中高生がほぼ100%利用しているLINEアカウントに、IBM Watsonを搭載した「OK SKY」を導入し、店舗では限界のあるスタッフ(スタイリスト)一人当たりの接客数をさらに向上させ、売り上げアップを狙う」と語った。また、瀧 氏は「チャットの相手をスタイリストとAIを組み合わせて入れ代わり立ち代わり提供していく。スタイリストとお客様のやり取りをAIに学習させ、それをスタイリストにもフィードバックさせることで、接客レベルは飛躍的に向上する」と期待を寄せた。

また、このシステムは一部地方銀行にも導入されており、今後はチャットのノウハウを生かして金融業界や不動産業界への進出も考えているほか、「Facebook Messenger、Skypeなど、さまざまなプラットフォームで活用し、オンライン・オフラインの接客データをIBM Watsonに学ばせることで、さらに良質な接客サービスとしていきたい」と、中嶋 氏は抱負を語った。

アフターセミナーインタビュー
IBM Watson 日本語版のさらなる可能性を追い求める

- 空色のサービスにおけるIBM Watsonの役割を教えてください。
中嶋 洋巳 氏:空色 代表取締役
小林 福嗣 氏:空色 取締役副社長
小林氏 :役割は3つあります。「お客様の個人情報の管理」、「チャットのやり取りやプッシュ通信の成功・失敗などの情報集積」、「チャットでレコメンドした商品を購入してもらえたかどうか」。そして、これらをお客様の情報と紐づけています。コミュニケーションを学習して返すだけではありません。
中嶋氏 :セミナーでもお話しした「OLIVE des OLIVE」様の場合は、接客インターフェースがLINE@になります。彼らの提供するアプリケーションがインターフェースとなり、裏側で動くシステムが「OK SKY」とIBM Watsonを組み合わせたものとなります。また、2016年の8月下旬より、LINE@のアカウントでもそうしたAPIとのつなぎ込みが可能となるため、今回実現しました。
- IBM Watsonを導入しようとしたきっかけは?
小林氏 :既存ビジネスの「PRIMODE」では、人力でのテキストのやり取りにあまり費用をかけられませんでした。ただ私たちの中ではチャットでの接客を充実させたい想いがあったので、人の代わりにテキスト解析をして学習できる人工知能を探していたところ、IBM Watson 日本語版に辿り着きました。
現在は、スタッフの代わりにデータを蓄積したIBM Watsonがチャットを代行します。会話の70%は要件定義なので、お客様が何を求めているかはこれまでの蓄積で解決可能です。ただし、商品を提案し、購入へと誘う部分は人が行うかたちで提供します。
中嶋氏 :例えばワンピースを欲しいお客様が購入する際、ワンピースだけを提案することはありません。「どういうシチュエーションで着るのか?」、「普段持っている洋服との組み合わせは?」、「このワンピースがなぜその人に似合うのか?」といったことは千差万別なので人が担当します。こうしたデータはこれから蓄積し、いずれはIBM Watsonでも購入までの全てのコミュニケーションができたらと考えています。
- 「OK SKY」の改良や、IBM Watoson 日本語版との組み合わせで苦労したポイントは?
小林氏 :チャットの基本の仕組みを作り、稼働を始めてから2年経っているので、その間に起きる問題をコツコツと解決して、現在の仕組みとなっていきました。また、蓄積した450万メッセージの内容の一部を解析し、分類を行ったうえで少しずつIBM Watsonの中に入れていったので、AIに内容を理解させることは難しくありませんでした。これはAIが日本語を分からないといけない前提ですが、IBM Watson 日本語版は日本語を理解できるので、そこは大きな利点でしたね。
- AIには、どのような可能性の広がりがあると考えていますか?
中嶋氏 :銀行のオンラインバンキングアプリでも採用され、2016年の8月1日からサービスを開始しています。旅行や不動産、化粧品など、店舗をチャネルとして持ち、ECサイトもある業種であれば、今までのノウハウをそのまま展開できることをお話しさせていただいています。業界によっては例えば、他社の商品と比較をする場合があるなど、機能的にアジャストさせる必要は出てきますが対応可能なので、私たちのサービスを多様な業種へと広げて、コミュニケーションのノウハウを蓄積していきたいと思っています。
- 今後、OK SKYのサービスをどのように改良していきたいですか?
中嶋氏 :大きく2つあります。ひとつはチャット内の流れをさらに自動化させることです。現在、1ヵ月で数百万人の来訪がある企業様からお話をいただいており、チャットをより自動化させることで全来訪者に接客していこうと考えています。もうひとつは接客といっても、お客様は店舗へ行く場合も電話の場合もあるので、それらをつなぐことです。商品の提案はチャットでも、購入は電話が良いかもしれない。また、購入意欲を高めるのは店舗が良いかもしれない。そうした個々のお客様が購入へ至るまでの最適なフローをAIに学習させながら、提案していこうと思っています。
- あなたにとってAIとは、何を実現してくれる存在ですか?
小林氏 :私は会社設立時から、ずっと人の能力を高めたいという考えを持っています。例えば私の能力が1であっても、システムの恩恵を受けることで2にも3にもなれる。そのベースをAIによって生み出していきたい。自分はコミュニケーションが苦手であっても、得意な別の人のデータをAIが持ってきて補填し、能力を伸ばしてくれるような仕組みを作りたいと考えています。
中嶋氏 :チャットで発生する購入意欲がECサイトで完結するケースもあれば、実店舗で完結する場合もあるので、そこもケアしていきたいです。「OK SKY」はお客様の位置情報を取れるので、それをもとにお近くの店舗へ誘導し、チャットからの引継ぎ情報も店舗スタッフが管理画面から閲覧できシームレスに接客できる。仮に店舗で購入しなくても、最後はまたチャットで接客し、購入に辿り着けるといった、リアル・Webに関係なく、AIを活用してお客様が購入まで楽しく完結できるプラットフォームとしていきたいですね。
セミナーでは、来訪者の1%ほどしか購入されないアパレルECサイトでの購入率を15%にまで上昇させた、株式会社 空色のチャットサービス「OK SKY」を紹介。さらに、チャットで洋服の購入を促す際に蓄積されたテキストデータを活用し、IBM Watsonと組み合わせた事例が語られた。セミナー後のインタビューでは、チャットで人のサポートを行うこの仕組みをアパレル以外の多くの業界にも広げていきたい考えがあるほか、リアル・Webに関係なく、実店舗とIBM Watson 日本語版を取り入れた「OK SKY」のシームレスな接客により、お客様が購入まで楽しく完結できるプラットフォームへと成長させたいという想いが語られた。 取材協力 株式会社 空色 様
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