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「AIが人から仕事を奪う」という言葉を聞いたことはないだろうか。果たして本当にそうなのか。ソフトバンク株式会社 Watsonビジネス推進部の立田 雅人が語る、IBM Watson 日本語版の使い方、導入企業にとってのメリット、そして留意すべきこと。IBM Watson日本語版をよく知れば、本当の付き合い方が見えてくる。


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日本語を理解出来るIBM Watson 日本語版"自然言語理解"が導く新しいビジネス

立田 雅人(たつた まさと)
2005年、日本テレコム(現ソフトバンク株式会社)入社。災害対策ソリューション、テレマティクス事業、サーバ仮想化技術を使ったホスティングサービスを担当。その後、クラウドコンピューティング事業の立ち上げに従事し、主に事業企画やサービス開発を統括。また、エヴァンジェリストとして講演やイベントでの活動を通じ、クラウド事業の普及および市場の活性化に寄与。2015年3月からはIBM Watson日本語版事業の立ち上げに従事。現在はセールス、マーケティング全般を統括。

最先端AIの実力から見えてくる、
「IBM Watson日本語版との付き合い方」。

- IBM Watson日本語版をIoTやWebと連携させた場合、どのような使い方がありますか?
立田 :IoTが集めてきたさまざまな情報の分析・予測に役立てることができます。IBM Watson 日本語版は類推して答えが出せるので、機械の言葉を人間が分かる言葉に翻訳し、コミュニケーションギャップを埋める使い方ができます。例えば、企業のコールセンターとお問い合わせをしてくるお客様では、持っている情報量も使う言葉も違います。IBM Watson日本語版なら、その間に入りコミュニケーションギャップを埋めることが可能です。また、eコマースサイトの検索窓では、希望の検索結果がヒットするようにスペースを区切ってたくさんのキーワードを入れて検索します。あれはコンピューターが理解できるように人が努力しているケースです。しかし、IBM Watson日本語版があれば類推してコンピューターが理解できるように翻訳するので検索も楽になります。
- 具体的な使い方として、できること・できないことを教えてください。
立田 :情報には構造化データと非構造化データというものがあります。図書館の本は図書館学に基づいた分類がされているため、構造化データと呼ぶことができます。一方、机の上にルールなく積み上げられた書類は非構造化データです。非構造化データから必要な書類を探し出すのは至難の業ですが、IBM Watson日本語版は質問の意味を理解して探し出すことができます。しかし、自ら課題を設定して答えを出すような、自立行動はまだできません。ただディープラーニングは実現しているので、将来的に自立できる可能性はあります。
- IBM Watsonの構成要素はどのようになっているのですか?
立田 :IBM Watsonは大きくOfferings(オファリング)とProducts(プロダクト)の2つに分類されています。Offeringsは製品と製品をつなげて作ったソリューションを指すのですが、製品になっていない開発研究段階の技術も入れており、進展中であるため「Offerings」という柔らかい表現になっています。Offeringsには3つの機能があり、Watson Engagement Adviser(ワトソンエンゲージメントアドバイザー)、Watson Policy Adviser(ワトソンポリシーアドバイザー)、Watson Discovery Adviser(ワトソンディスカバリーアドバイザー)に細分化されています。
・Watson Engagement Adviser  ...質問と答えを結びつける。
・Watson Policy Adviser     ...方針や決めごとに基づいたデータを見つけてくる。
・Watson Discovery Adviser    ...データとデータの間に関係性を発見する。
- Productsの内容も教えてください。
立田 :Productsにも3つの代表的な製品があり、Watson Explorer(ワトソンエキスプローラー)、Watson Content Analysis(ワトソンコンテンツアナリシス)、Watson Curator(ワトソンキュレーター)に細分化されています。
・Watson Explorer     ...テキストマイニングのソフトウェア。
・Watson Content Analysis ...数値データを分析、可視化する。
・Watson Curator      ...的確に情報を集約し整理する。
ProductsはOfferingsを実現させる機能です。例えば、Watson Engagement AdviserでIBM Watsonに色々な言い回しを勉強させる際には、実際に会話されている内容を元にテキストマイニングの技術をつかって事前に整理をします。また、分析して答えを出す際にはWatson Content Analysisが必要になります。現在、我々が呼んでいるIBM Watson日本語版とは、日本語を理解するWatson Engagement Adviserのことですが、必要に応じた機能をパートナー企業の協力のもと組み合わせて提案できます。
- 導入を検討している企業が、留意すべきことを教えてください。
立田 :1点目はIBM Watson日本語版は育てるものだということ。今までのITソリューションは完成品が納品されて終わりでしたがIBM Watson日本語版は違います。専門的な知識を教えて育てていく必要があり、時間も掛かるので導入するなら早いほうが良いです。2点目は万能ではないということ。何に使いたいのか課題から考えてください。iPhoneやPepperはモノが目の前にあったので「触って機能を使ってください」と言えたのですが、IBM Watson日本語版は分かりやすいプロダクトではありません。機能ではなく課題から入り、何を解決できる手段として利用するのかを見極めることが大事です。
- AIが人の仕事を奪うことにはならないのですか?
立田 :実は留意すべき3点目がそれです。AIは人を助ける存在だということです。IBM Watson日本語版は人の仕事を奪いません。先ほどのコールセンターの例なら、オペレーターとお客様の間に入り、コミュニケーションギャップを埋めることで満足度を上げ、次のお客様の待ち時間も短縮するのでストレスも減ります。一方、オペレーターもお問い合わせに関する情報を焦って探し、待たされてストレスの溜まったお客様の相手をするというケースが減るため、心理的負担も少なくなるはずです。オペレーターはIBM Watson日本語版ができない別の業務に集中できる。これは営業の現場でも同じで、単純作業は人工知能に任せて営業マンはもっとお客様のことを考えるという役割分担ができます。お客様のことを知って色々考えるのはやはり人間の役割。IBM Watson日本語版は人が幸せになることを助けるものなのです。
- コスト面では、どのような効果が期待できますか?
立田 :起きている問題の機会損失が多いのであれば、それに充てる予算もあるかと思いますが、少なければ見合いません。しかし、課題を見つけて早めに導入すれば見合う場合もあります。IBM Watson日本語版はパートナー企業に提供され、そこから多数のお客様に使われるサービスとなります。早期に導入し使うお客様が増えていくほど単価が安くなるという考え方もあります。また、IBM Watson日本語版を別のサービスと組み合わせてワンパッケージにしたときのコストが、IBM Watson日本語版を使わずに1から作るよりも安価な場合も現実に起きています。
- 導入企業のメリットとして考えられることは何ですか?
立田 :やはりコミュニケーションギャップを解消できることが最大のメリットですね。企業のオペレーターの例を挙げ、IBM Watson日本語版は人を助けるものだと話しましたが、オペレーターを育てるのにもコストが掛かっています。コミュニケーションギャップの解消により、顧客満足度を上げることも重要ですがオペレーターの心理的負担を減らすことで職場環境が良くなり、離職率の低下にも貢献できると思います。導入企業もお客様も社員にとっても嬉しい状況が生まれるはずです。またeコマースサイトの例でも、検索による機会損失が減り、売り上げがアップし顧客満足度も上がると思っています。
- 今後どのようにIBM Watson日本語版を広げていきたいですか?
立田 :我々は通信の会社でアプリケーションソフトウェアやデータは作れないため、パートナー企業を増やしていきたいと考えています。IBM Watson日本語版の特長を分かりやすく伝えていくことはもちろんですが、価格的にもパートナー企業が使いやすいサービスにして、たくさん広げていきたいです。実際に「SoftBank World 2016」のときから1ヵ月で約10社増え、パートナー企業も40社を超えました。2016年中には最低でも10例のサービス実績をパートナー企業経由で生み出し、色々な活用方法を紹介できるようにしていきたいです。
- IBM Watson日本語版へ賭ける想いを教えてください。
立田 :「IBM Watson日本語版を使っています」という言葉を消していきたいですね。現在、AI・人工知能はニュースに取り上げられSNSなどにも拡散するバズワードと言われていますが、そこを乗り越えてどのソリューションにもいつの間にか使われている存在にしていきたいです。単なる流行ではなく、エンドユーザーであるお客様に便利だと感じていただけることが大事だと思います。情報革命で人々を幸せにするソフトバンクのビジョンをIBM Watson日本語版によって実現していたい。そう考えています。
IBM Watson日本語版はIoTとの連携により情報を分析・予測し、人と人の情報量の差を埋め、互いのコミュニケーションギャップを埋める使い方ができ、それが導入のメリットでもある。ルールなく集積されたデータから必要な情報を類推し、探し出すことが得意である一方、自我を持った自立行動はできないのが現状であるため、導入企業はできることを理解して課題解決にのぞむ必要がある。また、IBM Watson日本語版はIBM Watsonの一部の機能を指し、そのほかの機能は導入企業の課題解決の内容に応じて提供できるという。導入企業への提言として立田は「IBM Watson日本語版は育てるもの」、「万能ではないこと」そして「人を助けるもの」であることを挙げ、人の仕事を奪うのではなく幸せにする存在であると語った。今後はさらにパートナー企業を増やして実績を多く作ることにより、情報革命で人々を幸せにするソフトバンクのビジョンをIBM Watson日本語版によって実現したいという。