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AI、ロボット、IoT──日々メディアをにぎわしている最先端テクノロジーが、徐々に現実の暮らしやビジネスに入り込み始めている。かつての「未来」は、どのように「常識」へと変わっていくのか。技術の発展が「3年後のビジネスの現場」に起こす変化について、各領域のキーパーソンがリアルな未来図を展望する。

2009年、上智大学経済学部卒業後、ソフトバンクモバイル(現ソフトバンク)に入社。営業部門で施策推進などに従事する一方で、2010年、ソフトバンクグループ代表・孫正義による後継者発掘・育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」の第1期生として参加して以来、新規事業の企画・提案などを手掛ける。2016年4月、SBドライブ株式会社を設立し、代表取締役社長兼CEOに就任するとともに、先進モビリティ株式会社の社外取締役も兼務する。
1972年、福岡県生まれ。宇宙ロケット開発や、スマホアプリ「TERIYAKI」「755」「マンガ新聞」のプロデュースを手がけるなど幅広く活動。有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」の読者は、1万数千人の規模に。2014年8月には会員制のコミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校」をスタートした。
2016年4月、ソフトバンクは自動運転技術を活用したモビリティサービスの事業化を目指し、自動運転技術を研究・開発するベンチャー企業と合弁でSBドライブを設立した。少子高齢化の影響で赤字続きの地方路線バスを自動運転でよみがえらせ、新たなインフラを築くためだ。
自動運転バスが過疎地域を走る姿を描いたイメージムービー
すでにいくつかの自治体と連携し、国家プロジェクトにも採用され、実証実験がスタート。2021年度の事業化を目指す。実証実験で見えてきた課題、現在地、2020年の予想、その先にある未来を、自動運転に高いビジネスポテンシャルを感じている実業家の堀江貴文とともに語り尽くす。

ホテル・飲食店がモビリティになる

自動運転がもたらす未来についてお二人はどのようにお考えですか。
佐治:現在のバスやタクシーはあくまで移動手段ですよね。自動運転が実現した未来では、これらの乗り物が居住空間や商業施設になっていると思います。

たとえば、ベッドを備えた「ホテルカー」。寿司、フレンチ、イタリアンなどモビリティによって味わうことのできる料理が選べる「レストランカー」が登場する未来を描いています。

そうなれば、食事をしたいときに、タクシーや電車で店に行く必要はありません。自宅前の道路で待っていれば、望むメニューを備えた飲食店型のモビリティが拾ってくれる。地方出張に行く際も、現地でホテルを予約する必要はありません。移動手段そのものがホテルなのですから。
堀江:普通にあり得る話だと思いますよ。そもそも今、モビリティも含めた僕たちのまわりにあるさまざまなボーダー(境界)は、人類が自由に移動していた狩猟採集民時代から定住する農耕民族に変わった際に想像された“フィクション”ですからね。

自動運転が実現すれば、社会は大きく変わると思います。「ライドシェア」が一般化し、モビリティの総数は減る。道路や駐車場は少なくなるでしょう。街は大きく様変わりするはずです。ただパーソナルモビリティは、形は変わるけど残っていくでしょうね。

佐治:僕もパーソナルモビリティは残ると思っています。バス停から自宅までの道のりに不便を感じる人が、地方などではかなりの数いるからです。自宅に入ってからパーソナルモビリティが必要な人もいるでしょう。
堀江:特に高齢者なんかそうですよね。車椅子型のパーソナルモビリティなんて、できるんじゃないかな。
セグウェイやキックボード型のパーソナルモビリティは、すでに中国企業からどんどん発売されているので、これらに乗って移動する未来は、そう遠くないでしょう。

ただ個人的には、今座っているイスがそのまま移動する。そしてこのイスは、僕のオリジナルなパーソナルモビリティである――そんな未来を描いています。
もっと言えば、そこに「ホロレンズ」も備えたい。スケジューラーなどとも連携していて、運転だけでなく、僕が何も言わなくても、何もしなくても行き先をくみ取り、目的地に運んでいってくれる、みたいな。
そして自動運転バスなどにライドシェアする際には、それぞれのパーソナルモビリティはバスの後ろに連結される。当然、移動している間に充電されると。
パーソナルモビリティは、ビジネスポテンシャルもかなり高いと感じています。
スマホに例えれば、現在地はPDAのような状態で、そこからiPhoneが登場し世界を変えたように、高性能なパーソナルモビリティが未来をがらりと変えるでしょう。当然、開発に成功した企業は時代を制する。Appleのようにね。

2021年度の量産・事業化を目指す

自動運転バスが地方を当たり前のように走る未来はいつごろ実現しそうですか。たとえば、2020年には間に合いますか。
佐治:2021年度の量産・事業化を目指し、今まさにさまざまなテストを行っている段階です。
自動運転の前段階、自動走行を安全に行うための車両・システムの構築を進めていて、東京大学の柏キャンパスにある実験コース内で実際にバスを走らせ、テストを繰り返しています。
自治体や国、事業会社などとの連携も進めています。現在、北九州市、鳥取県八頭町、長野県白馬村、浜松市(自動車メーカーのスズキ、路線バスを運行する遠州鉄道も参画)の4市町村と連携協定を締結しています。経産省や内閣府が進める事業も受託し、沖縄県では公道における実証実験も始まり、この6月から7月にかけて石垣島で実施したばかりです。
沖縄で行われた実証実験の様子。関係者に自動運転の安全性や利点を紹介。車内にはPepperが案内役を務めていた。
空港(新石垣空港)から港(周辺離島へのフェリーが数多く出る石垣港離島ターミナル)まで、交通事故も発生する交通量の多い道路で乗客約10人、緊急時に備えたドライバーを乗せたレベル3の状態で行いました。交通規制は特になし。大きなトラブルは起きませんでしたが、多くの課題が出ました。

実際の道路環境においては、バス停付近に路上駐車している車両、左側を逆走してくる自転車も含めた周囲の交通者との「協調」が特に問題でした。
自動運転では安全を重視するため、障害物を検知したら、減速したり停止したりするため、“律儀に”反応してしまうからです。周りの車や人が、自動運転バスの動きを理解して交通ルールを守ってくれないと、自動運転バス側の技術や努力ではどうしようもないケースがあるということです。
街路樹などが妨げとなり、GPSの信号を正常に受信できないエリアが多くあることも分かりました。ただこの問題は車体に取り付けたLiDAR(レーザーレーダー)やカメラなどのセンサー、実用化の際には道標として道路に埋め込む磁気マーカーで克服できると考えています。
堀江:市販車両を改造しているんですね。僕はこれまで何度も自動運転の様子を取材してきたけど、海外ベンチャーが開発したEV(電気自動車)などを使う事業者がほとんどでした。

ぶっちゃけて言うと、その手のモビリティはスピードが遅いし、誰でも運行事業者になれるんじゃないかな。対してSBドライブは、ディーゼル車で市販車両をカスタマイズしている。システムも自前。国内では珍しいビジネスモデルなんじゃないですか?

佐治:SBドライブで使用している車両は、ディーゼルエンジンで走る300万円ほどの中古バスを改造したもので、時速は80km出ます。充電の必要は当然ないですし、走行距離もEVより長く走れる。エネルギー効率も現段階ではディーゼル車のほうが高く、メンテナンスしやすいというメリットもあります。
堀江:いずれは制御しやすいEVに置き換わっていくとは思いますが、それまでの過渡期をカバーするという意味では、価値ある取り組みだと思います。

ただ、正直な感想を言うと、実現が2021年って……。あと4年もかかります? 市販車両をカスタマイズするんだから、すぐに車両が増えそうな気がしますが。そもそも計画書にある「量産化」というのはどういった意味なんですか?

佐治:市販車両をカスタマイズしていけば、確かに走れる車両は増えます。ただバスは1台1台設計や仕様が違うため、その手間が非常に複雑です。そこで自動運転のシステムをカスタマイズしやすい専用車両の量産化を計画していて、実現までに数年かかってしまう、というのが現状なんです。

路線バスの自動運転化はあくまで“序章”

佐治さんは、それまで多くの新規事業を手掛けてきましたが、今、自動運転にターゲットを絞って取り組んでいるきっかけは何だったのでしょうか。
佐治:色々な要素が重なった、というのが正直なところです。
以前、スマホの販売戦略などを担当していた私は、ビジネスの将来性に不安を感じていました。私だけではありません。会社全体としてもです。
入社してからそれなりの年月が経っていたこともあり、何か大きなインパクトを残したい、とも感じていました。そんなとき、新事業を求めるアイデアコンテストが開催されました。
ちょうどその頃、父親が入院していて、病院に行くことが多かったんです。でも遠い場所に行くには時間もお金もかかる。面会時間にも間に合わない。普段の「移動」がいかに制約されているか考えさせられるきっかけになりました。
そこに地方の路線バスが運転手不足や乗客数の減少で疲弊しているというニュースを聞き、路線バスの自動運転化を思いつきました。

調べてみると、2009年からの5年間で約8000kmものバス路線が廃止され、全国約250のバス会社の約7割、1万以上の路線が赤字だと分かりました。
特に地方はひどく、廃止にすると移動手段のない高齢者や子どもが困るため、自治体が赤字を補填し、仕方なく運行している状況でした。赤字額は小さな自治体でも数億円規模。約6割を占める人件費も含めた運行コストの削減は喫緊の課題でした。

SBドライブは、ソフトバンクと自動運転技術を研究・開発するベンチャー企業の先進モビリティが協力し、LiDARやカメラ、AIなどを搭載したバス車両ならびに遠隔監視システムといった、ハード・ソフトをセットでバス事業者に提供するビジネスを展開していきます。
堀江:なぜ、地方の路線バスがここまで疲弊しているのか。海外の事情を見ると、腹落ちしたことがあります。国内では利用客が減ったからバスの本数を減らす。その結果、乗客がさらに減るという負の連鎖が生まれていますよね。

海外では考えがまったくの逆なんですよ。「空気だけでもいいから運べ」と。たとえばフランス・リヨンの田舎町では、バスの運行間隔は10~15分と短い。
市街地を走るトラムやメトロとの乗換えもスムーズで、バス停にはレンタサイクルも置かれたりしている。自家用車を利用するより公共インフラを利用した方が便利だから、乗客は自然と増えていくわけです。
国内でも路線バスの自動運転化が実現し24時間365日走るようになれば、利用者は増えるでしょうね。
グローバルな観点からしても、価値の高い事業だと思います。今後、自動運転車両しか乗り入れることのできないエリアは、確実に広がっていくでしょうから。コペンハーゲン、シンガポール、中国などが先行していくでしょう。

国内でもトラックの走行量が多い高速道路などは、自動運転以外の走行を禁止すればいい。僕は若い頃にヒッチハイクをしていて、よくトラックに乗せてもらいました。そうしたら驚いたことに、運転手の居眠り率の高いこと。居眠りしながら運転しているわけだから、ある意味自動運転の先取りですがね(苦笑)。隣に座っていて、ほんと怖かった。

佐治:先進モビリティは、いま堀江さんがおっしゃられた高速道路を想定した研究も行っています。高速道路をトラックが数台連なって時速80kmで陳列走行する。先頭車両が有人で、後続車両は無人というものです。
また少子高齢化はいずれ諸外国も直面する問題。今のうちに国内で対応しておけば、その対応策を海外に輸出できるとも考えています。

路線バスの自動運転化はあくまで“序章”だと考えています。自動運転が可能だと社会から認識されるためのモデルケースだと。ゴミ収集車、シャトルバスなどへの転用も考えています。
そしてその先には、冒頭お話ししたような未来を描いています。“移動”という概念を自動運転というテクノロジーで変えることが、僕が本当にやりたいことですから。
■本記事はNewsPicks Brand Designの制作のもと、2017年7月26日にNewsPicks上に掲載されたものです。
 
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