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2008年から始まった人口減少、加速度的に進む少子高齢化、そして歯止めのかからない東京への一極集中。これらの課題に立ち向かうべく、第2次安倍内閣が2014年9月に打ち出した政策が「地方創生」である。
それから約3年。全国の自治体では、人口減少に歯止めをかけ、地域の特徴を活かした自立的で持続的な社会をかたちづくるため、様々な施策が実行されている。

2018年に命名150年を迎える北海道でも「まちを創る」、「ひとを創る」、「しごとを創る」という地方創生の理念のもと、多種多様なプロジェクトが進行しているが、広大な面積に全国最多の179市町村を抱えている事情もあって、その情報が自治体間や関係機関で共有しきれていない側面があった。
今回紹介する「北海道創生ジャーナル『創る』」は、道内で進展する地域創生の取り組みを広く共有するための季刊情報誌。2016年12月に創刊されたばかりの新しい情報誌だが、すでに大きな反響を呼んでいる。
その編集に携わる北海道庁の職員5人に、創刊の経緯やこれまでの取り組み、そして今後の展望について話を聞いた。

日野石達也
(ひのいし たつや)
北海道総合政策部
地域創生局 地域戦略課
七戸智輝
(しちのへ ともき)
北海道総合政策部
地域創生局 地域戦略課
高野はるな
(たかの はるな)
北海道総合政策部
地域創生局 地域戦略課
山下賢一
(やました けんいち)
北海道総合政策部
地域創生局 地域戦略課
横浜 賢
(よこはま さとる)
北海道総合政策部
地域創生局 地域戦略課

すべては若手職員4人のアイデアから始まった

「2016年の秋、当時の課長から『道内各地で地域創生に取り組んでいるが、それがなかなか伝わっていない。どういう情報発信をしたらいいか、若手で考えてほしい』と言われたことが創刊のきっかけです」
そう語るのは、北海道総合政策部 地域創生局 地域戦略課の日野石達也主任。同年12月に第1号が発行された「北海道創生ジャーナル『創る』」の編集リーダーを務める人物だ。
上司の命を受けて、若手課員4人が検討を重ねた結果、到達したのが、お役所っぽくない情報誌のスタイル。行政発の刊行物にありがちな、文字だらけの硬い内容ではなく、一般誌を研究してビジュアルと読みやすさを重視した。
今回、取材に応じていただいた日野石氏ら5人が在籍する地域戦略課は、北海道の創生を実現するために創設された地域創生局に所属。主に人口減少問題や地域振興施策に取り組むセクションだが、その一環として『創る』の編集にもあたっている。
「北海道は広くて179の市町村があります。地域ごとに抱えている課題は異なりますが、今まではその悩みや、各地の成功事例の共有が十分ではなかった。それを『創る』の誌面で紹介することで、道内の地域創生の取組を点から面へとつなぐお手伝いができたらという想いで取り組んでいます」(日野石主任)

「情報源はいくつかあるのですが、その1つに我々でとりまとめている道内市町村における地方創生関連の事業実施計画書などがあります。また、道内14ヶ所にある振興局や179市町村から寄せられる地元情報、さらに地方紙の記事なども参考にしています」(七戸主任)
驚くことに『創る』の誌面はすべて地域戦略課のメンバーが制作。外部の力は一切借りていないという。編集経験があるスタッフは皆無だったため、当初はかなり手間取ったようだ。

「外部に委託した方がカッコいい誌面になることは分かっています。でも予算に限りがありますから・・・(苦笑)。創刊号のときは取材に行く時間がとれなくて、振興局や市町村から寄せられた情報を加工して誌面を作るのがやっとでしたが、今はなるべく自分たちで取材をするようにしています」(日野石主任)

「最近は全誌面の約半分を編集部が取材していて、私たちが担当した記事には、“編集部取材編”というクレジットを入れています。他のページは振興局や市町村からの寄稿で構成していますね」(高野主任)

関係者のみならず、対外的な情報発信ツールに

創刊から1年。試行錯誤を重ねて、『創る』の誌面構成はほぼ固まってきた。
まず冒頭で地域創生に携わっている人物のインタビューを3~4ページにわたって掲載。次に様々な分野にスポットを当てる特集記事(6ページ前後)とレギュラーコーナー「地域が動く・プロジェクト最前線」(8ページ前後)が続き、巻末に「地域を創る人」(2ページ)を収録するというスタイルだ。
すでに5号まで発行されているが、注目度は号を重ねるごとに高まっている。

「先日はある大学の教授から『研究や教育の資料として使いたいので送ってほしい』という連絡をいただきました。地域創生の事例が分かりやすくまとまっているからだと思いますが、そういう反響は嬉しいですね。最近は『ぜひうちの取り組みを載せてほしい』というご要望もいただくようになりましたが、我々としては成果が見え始めたプロジェクトを取り上げたいと考えているので、トピックスの選定は毎回、慎重に行っています」(七戸主任)

「先日、首都圏の企業に北海道の情報を提供するイベントに参加するため、東京に出張してきたのですが、そこで『創る』をお配りしたら大変な好評をいただきました。道庁内の他の部局から『今度のイベントで配りたい』という要請を受けることも増えてきましたし、最近は対外的にも活用できていると思います」(山下賢一主任)
なるほど。最初に『創る』の話を聞いたときは「この時代になぜ紙媒体なのか」という素朴な疑問が沸いたのだが、話を聞くにつれ、むしろ紙媒体だからこそ重宝されていることが分かってきた。
考えてみてほしい。もし『創る』がWEB版のみの展開だったら、溢れる情報に埋没してここまで存在感を示せなかったに違いない。
忙しい大学教授や企業関係者に「このサイトをご覧ください」と言ったところで、実際にアクセスして目を通す確率は限りなく低い。それなりのボリュームの記事であれば、なおのことだ。
だが一覧性があり、興味のあるところだけ拾い読みできる冊子であれば事情は違う。手に取ることができる現実感が、地方創生への取り組みをリアルなものとして読者に伝えることにも繋がっているのではないか。
「道のサイトにはWEB版も掲載していますが、『創る』の場合、記事の内容やターゲットのことを考えると、紙の方が行き渡りやすいというか、相手に伝わりやすいと思うんですね。これまでは必要に応じて増刷をかけたりもしてきましたが、予算的な制約もありますので、最近はより多くの方に見てもらうべく、WEB版にも力を入れています」(日野石主任)

「サイトには当初PDFだけを載せていたんですが、最近はダイレクトに閲覧できるようにWEB版の作り込みもしています。ただ、我々のネット環境にもやや限界がありまして・・・(苦笑)。カッコよさを目指しつつも、日夜奮闘中という状況です」(七戸主任)

ICTを活用した地域創生も進展中

北海道といえば2000年代初頭より、IT企業の誘致を積極的に推進。2011~2020年度までの10年は「北海道ITアジャイル戦略」を掲げるなど、ITやICTの利活用に先進的に取り組んでいることが知られている。(北海道経済産業局が策定)
地方創生において、ICTがどのような役割を果たしているのか。最近の事例を尋ねると、最新号(12月14日発行の第5号)にも掲載された上士幌町の取り組みを紹介してくれた。

「十勝ハーブ牛や、熱気球のフェスティバルで有名な上士幌町ですが、2014年度のふるさと納税額は全国3位(9億9,475万円)。2016年度は実に20億円以上(21億2,483万円/全国19位)のふるさと納税がありました。
人口約5,000人の町が道内外から注目されるようになったのは、ICTを活用した地域創生に取り組んだ成果ですが、その推進役となったのが2001年に就任した竹中貢町長です。竹中町長は『都市と農村部の交流が活発でにぎわいのあるまち』の実現を掲げ、そのためにICTの活用は不可欠として、翌年以降、様々な施策を実行してきました」(七戸主任)
『創る』最新号によると、竹中町長は2002年に情報交流推進室を設置。2004年にホームページをリニューアルし、2008年には全国の自治体で2番目となるブログポータルサイトを立ち上げ、情報発信力の強化に努めてきた。

2010年にTwitter、2011年にFacebookの公式アカウントを開設するなど、SNSも早くから活用しており、2012年にはふるさと納税サイト最大手の「ふるさとチョイス」にも参加。ICTを活用した着実な取り組みが都市部の“上士幌ファン”を増やし、それが多額のふるさと納税に繋がったというわけだ。
2016年度からは新たなステージに突入し、テレワーク実施企業の誘致を開始。さらに、地域活性とロボット関連技術の発展を目的としたイベント「Japan Innovation Challenge」では、ドローンやロボットによる遭難救助や、自動運転バスの実証実験を実施するなど、地域を支える新たなテクノロジーの発展と振興のための支援も始めている。

「上士幌町には『まずやってみよう』というフロントランナー精神があるなと感じます。多額のふるさと納税を実現したのは、そうしたところが大きいのかなと思います。テレワークについては、道内では、北見市や別海町、斜里町なども熱心に取り組んでいて、例えば北見市では、市・企業・地元大学などが連携して、ICT拠点を活用した人と仕事の誘致や人材の育成による地域活性化に取り組んでいます」(山下主任)

政府が「地方創生」を掲げて3年。道内でも新しい雇用を生み出す取り組みが加速しているようだが、成果を上げている自治体にはトップのリーダーシップという共通点があるようだ。とはいえ、何事もトップダウンかというと、そういうことでもないらしい。
「強いリーダーシップがありながらも、職員とはフラットな関係というのでしょうか。何でも話し合える環境があるからこそ、いろいろなアイデアが生まれて、それが大きな成果に繋がっているところが多い気がします。我々はそういう事例をどう発信していくかという立場ですが、持続可能な地域を創るためには雇用の創出が不可欠ですから、今後は東京をはじめ全国の企業にも、北海道内の取り組みを紹介していきたいですね」(山下主任)

創刊2年目を迎えた今、感じていることは?

編集チームには、生え抜きの道庁職員ではないメンバーが2人いる。青森県との相互交流というかたちで派遣されている七戸主任と、JTB北海道から派遣されている高野主任だ。「外の世界」から道庁に入った2人にとって、北海道や現在の仕事はどう映っているのだろう。

「北海道にはフロンティアスピリッツといいますか、新しいことに挑戦することを臆さない気風があると思います。多少のリスクがあっても、効果の方が高いと判断すれば『まずやってみよう』というエネルギーがある。人付き合いに関しても、とにかくフランクですね。青森の人よりも相手との距離を縮めるのが早いという感じです(笑)」(七戸主任)
「私は2017年4月から現職に就いているのですが、JTB時代は営業職で、いろいろなお客様のところに行って旅行に関する注文を承っていました。ときには修学旅行などに同行することもありましたが、広報に関する仕事は全く経験していませんでしたから、『創る』の制作に集中している今は毎日が新鮮ですね」(高野主任)

創刊から1年。各メンバーは、自前での誌面制作という慣れない仕事に戸惑いながらも、編集を続ける過程で、それぞれに取り組みたいテーマが生まれてきたようだ。
「私は現在、国や道内の地域創生に関わる団体との窓口で、最近は誌面づくりに直接タッチしていませんが、テレワークやパラレルワークといった、新たな働き方に関するテーマに興味があります。そうしたことに先駆的に取り組んでいる方たちのお話を聞いてみたいですね」(山下主任)

「私はJTBにいたこともあって、観光に繋がるような地域の活性化や交流人口について関心があります。あとは人にスポットを当てるということ。地域創生は人がやっていることですので、人が出てこない記事は読んでも実感が沸かないと思うんです。その意識は今後も持ち続けたいですね」(高野主任)

「私はこの4月に入庁したばかりですが、今いちばん気になっているのはスポーツです。地域創生には、今後を担う若者の力が欠かせませんが、若い世代が活躍しているのはその分野だと思うんですね。今後は雪まつりですとか、ウインタースポーツに関する取り組みを応援していきたいと考えています」(横浜賢主事)
「私は青森県で7年ほど、福祉系の仕事をしておりましたので、やはり福祉に関連するテーマが好きです。第2号では、知的障がいや発達障がいのある方を雇用して、十勝のジャガイモを使ったお総菜を作っている芽室町の取り組みを紹介させていただきました」(七戸主任)

「私は“地域おこし協力隊(※)”で活躍されているような方に取材をしてみたい。地域創生というのは、人口減少問題にどう対応していくかが主目的ですから、どうやったら若者を北海道にとどめておけるか、どうやったら他の都府県から若者を呼び込めるかが大きなカギだと思うんですね。そういったことに取り組んでいる若い人の話を聞けたら、と考えています」(日野石主任)
(※)人口減少や高齢化等の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行ってもらい、その定住・定着を図ることで、意欲ある都市住民のニーズに応えながら、地域力の維持・強化を図っていくことを目的とした制度
https://www.iju-join.jp/chiikiokoshi/
「北海道を活性化させたい」「地域創生の後押しをしたい」というメンバーの熱意が誌面を通じて、道民にも伝わり始めているのだろう。最近は取材に行くと、驚くほどの歓迎を受けることもあるという。
創刊2年目を迎えた『創る』をどういう情報誌にしていきたいか、編集リーダーの日野石主任に今後の展望を聞いた。

「将来的には、たとえば特派員とか遊軍記者のような形で多くの職員が関わるような情報誌にしていきたいですね。と言いますのも、『創る』に携わることで得られるものが非常に多いことが、この1年の制作を通じて実感したからです。毎号、大変な労力をかけて制作していますが、実際に現場に行って取材することで初めて分かることがたくさんある。生の声をインプットするだけでなく、それを整理してアウトプットすることで自分の知識になりますし、取材を通じていろいろな人と会いますので、人的なネットワークも広がる。そのネットワークは他の仕事にも役立ちますから、個人にとって大きな財産になると思うんです。こんないいことづくめを我々だけが体験するのはもったいないので、多くの人たちと共有して、北海道の「まち・ひと・しごと」の創生に繋げていきたいと考えています」
■北海道創生ジャーナル『創る』概要
創 刊 :2016年12月創刊(年4回発行/季刊)
部 数 :1,200~1,300部(足りなくなれば随時増刷)※WEB版は下記に記載
頁建て :20~24ページ
内 容 :北海道創生のキーパーソンへの取材記事、道内各地で進められている先駆的プロジェクトの取り組み事例の紹介などで構成
配布先 :道庁、各振興局(道内14ヵ所)、市町村を通じて、地域で実際に地方創生に携わっている組織団体や個人など、関係各所に配布
■北海道創生ジャーナル「創る」WEB版
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/csr/chicho/tsukuru/toppage.htm
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