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北海道の最北部に位置する人口約3,000人の町、天塩町(てしおちょう)。人口減少や高齢化など、深刻な課題が山積する小さな町で今、それらの解決を目指した革新的なプロジェクトの数々が進んでいる。

仕掛人は、天塩町副町長の齊藤啓輔氏。外務省、首相官邸を経て、自ら志願して天塩町へやってきたという異色のキャリアの持ち主だ。2016年7月に35歳という若さで着任するやいなや、「未来への投資」というコンセプトのもと、特産品の掘り起こし、ライドシェアの導入など、多彩なプロジェクトを矢継ぎ早に実行してきた。

今回はそのプロジェクトの中でも、天塩町の未来を担う子供たちへの投資ともいえる「Pepper社会貢献プログラム」に迫る。ソフトバンクグループ株式会社、ソフトバンク株式会社(以下ソフトバンクグループ、ソフトバンク)と連携し、子供たちの可能性を引き出すICT活用プロジェクトである。

齊藤 啓輔氏

1981年、北海道紋別市生まれ。2004年、外務省入省。対ロシア外交でキャリアを積んだ後、首相官邸で国際広報戦略に携わる。2016年7月、地方創生人材育成制度を活用し、自ら志願して天塩町副町長に着任。「未来への投資」をコンセプトに、「天塩國眠れる食資源活用プロジェクト」、総務省「ICT地域活性化大賞2017」優秀賞を受賞した中長距離ライドシェア、そして、ソフトバンクと連携した「Pepper 社会貢献プログラム」「ICT部活動支援」など、さまざまなプロジェクトを矢継ぎ早に実行している。

最果ての町にこそ、ICTの力を

北海道最北端の稚内市から、車で1時間半。札幌からは、何と車で4時間半。江戸時代に日本海で積み荷を各地で売買して巡る商船であった北前船の寄港として栄えた町であるが、近年は少子高齢化が急速に進み、2017年の人口は約3,000人。最果ての町である北海道天塩町は、全国各地の地方の市町村と同様、多くの課題を抱えている。そんな天塩町の小中学校3校で、2017年5月から、人型ロボット「Pepper」を活用したプログラミング授業がスタートした。

これは、2020年のプログラミング教育必修化に先駆けたソフトバンクグループの「Pepper 社会貢献プログラム」への参加によるもので、北海道内でいち早くアクションを起こした人物が、天塩町副町長の齊藤啓輔氏であった。齊藤氏は、外務省、首相官邸というキャリアを経て、政府が全国の市町村に有識者を派遣する地方創生人材支援制度を活用。2016年7月、35歳という若さで天塩町副町長に就任した。
齊藤氏は、早い段階から同プログラムの趣旨に賛同し参加を検討したが、天塩町の小中学校が全3校であるのに対して、参加の必須要件は5校以上。そこで、近隣4町の首長との合意形成をはかり、天塩町を含む5町連合として、北海道内で唯一の参加を実現させた。そこには、天塩町の未来を担う子供たちに対する、齊藤氏の強い思いがあった。

「地方の子供たちにこそ、最先端の技術に触れ、世界に通用するプログラミング的思考を身につけてほしい。そんな思いを持っています。私自身、北海道紋別市の田舎町で生まれ育ち、都市部へ進学・就職するために町を離れました。しかし、時代は変わりました。ICTは、地方で暮らす人たちにある、距離や時間のハンデを無効化します」。

子供も大人も、試行錯誤を楽しむ

生徒の自己紹介を、Pepperに話してもらう。2017年5月、天塩中学校で行われた初回授業の内容である。

たとえば、「明日、豊富町で野球の試合に出ます」という内容を話してもらいたい場合。漢字で「豊富町(とよとみちょう)」と入力すると、Pepperは、ほうふまち、と読んでしまう。そこで子供たちは、漢字ではなく、ひらがなで入力。すると、Pepperのイントネーションが違う。今度は、カタカナも混ぜて入力してみる…。

子供たちは、そんな試行錯誤を重ねながら、Pepperに正しいイントネーションで「豊富町」と話してもらうことに成功した。
このように、Pepperを活用したプログラミング教育では、生徒の行動がすぐにPepperに反映される。そのため、コミュニケーションをとりながら楽しくトライアンドエラーすることができ、アクティブラーニングにつながる。また、自分の意思を伝える難しさや、伝わったときの喜びを感じることができ、他者を尊重する心も育つ。そして、齊藤氏は、都市部と地方とのICT教育格差を是正できる点に意義を見出している。

「これから先の未来は、たとえ小さな町にいても、世界と渡り合えるようになります。天塩町の未来を担う子供たちには、ぜひそう実感してほしいですし、そのための環境を用意することこそ、大人の責任であると考えています」。

天塩町の小中学校では、Pepperの台数が限られていても全員がプログラミングを体験できるように、グループワーク制で、それぞれの生徒に役割を与えるなど、さまざまな工夫を行った。試行錯誤しているのは、子供たちだけではない。そして、教室に響く笑い声、楽しそうな表情、一人ひとりの目の輝きに、齊藤氏もたしかな手応えを感じていた。

天塩町から東京へ、シリコンバレーを目指す旅

2018年2月11日、天塩町の子供たちは東京にいた。ソフトバンクグループによる「プログラミング成果発表会」に出場するためである。

「Pepper 社会貢献プログラム」に参加している約50チームが、プログラミングを学んできた成果を競い合う全国大会。小学生部門と中学生部門は「○○に役立つPepper」、部活動部門は「○○を笑顔にするPepper」という課題に基づいたプログラムを開発し、発表・実演する。最優秀チームには、シリコンバレーへの招待旅行が贈られる。

天塩町は、天塩小学校から小学校部門に4名、天塩中学校から中学校部門2名・部活動部門2名、合わせて8名の小中学生が参加。放課後の時間を使って、チームごとにテーマの設定やプログラムの作成を行った。
インフルエンザによる学級閉鎖などの影響から、短い準備期間となったものの、天塩町で暮らす子供たちの視点が生かされた、素晴らしいプログラムとプレゼンテーション資料が完成。「子供たちの可能性の大きさを改めて実感した、とても貴重な経験でした」と、齊藤氏は語る。

そして、いよいよ成果発表会当日。参加自治体の中で、もっとも小さい町である天塩町の子供たちは、全国の舞台で堂々とプレゼンテーションを行った。

大舞台で光った、小さな町からの提案

小学校部門の子供たちは、「防災に役立つPepper」というテーマを設定。高齢者が多く、海沿いにある町であるという天塩町の特性に着目し、火災、地震による津波、台風が起こったときの対処法について教えてくれるプログラムを作成・実演した。「事前に対処法を知ってもらえれば、命が助かるかもしれない」という思いから、災害の対処法についてインターネットや本、取材などで調べ、説明のための画像や動画も自分たちで探した。

中学校部門の子供たちによるテーマは、「町おこしに役立つPepper」。人口減少と高齢化が進み、閉まっている店が多いという問題を解決するためにPepperを活用し、商店街の活気を取り戻すというアイデアである。既存の各店舗には、商品管理や在庫確認などを担当するPepperを配置。効率の良い店舗営業の支えになり、観光客の誘引にもつながると訴えた。また、プロジェクトの目玉として、Pepperが接客を行う「元祖Pepper亭」を新規オープンするとした。天塩町の特産品を使った料理の提供や、特産品の販売も行う店舗である。実演では、席までの誘導や注文の聞き取りを行い、待ち時間には天塩町の観光情報まで教えてくれるPepperを披露した。
部活動部門の子供たちは、「医療に関わる人を笑顔にするPepper」というテーマを考えた。天塩町には総合病院が1件しかないこと、いつも混み合っていること、診療科が多くないこと、救急の場合は1時間以上かけて稚内の病院に行かなくてはならないことなど、町の医療の現状をきめ細かく分析。病院で働く人たちが専門業務に集中でき、それによって患者さんも笑顔になれるというコンセプトから、病院内の案内を行い、家庭でできる健康管理法なども教えてくれるPepperのプログラムを実演した。

過疎地域でも、まだまだ復活できる

天塩町を含む子供たちの発表は動画中継され、全国に配信された。そして、天塩町内ではパブリックビューイングが行われ、クラスメイトや保護者の方々などがその様子をあたたかく見守った。

「中には、感動して涙が出そうになった、とおっしゃる方もいました。入賞は果たせませんでしたが、自分たちの町、自分たちのアイデアを全国に向けて発信したいという熱い思いが伝わり、受賞チームに引けを取らない発表でした」。齊藤氏は笑顔でそう振り返る。

人口約3,000人という小さな町に住む子供たちだからこそ気づいた視点、そして、自分たちの町を元気したいという気持ちが伝わる発表は、多くの人の心にたしかに届いた。そして、発表を行った子供たち自身の心にも変化があったようだ。発表を終えた中学生は、こんなコメントを残した。
「過疎地域でも、住んでいる人たちが元気になれば、まだまだ復活できるのではないかと思っています」。

齊藤氏による「未来への投資」が、ひとつの大きな価値を生み出した瞬間であった。
(後編へ続く)
北海道天塩町

北海道の北部、国内第4位の長さを誇る天塩川河口に位置。天塩川は、幻の魚と呼ばれるイトウの生息地として知られている。1955年頃は約1万人だった人口が、2017年時点で約3,000人にまで減少した。基幹産業は漁業と酪農。シジミとサケが名産で、人口の約3倍にあたる約1万頭の乳牛が飼育されている。全国各地の地方の市町村と同様、人口減少、高齢化、職の不足による若者離れなど多くの課題を抱える中、特産品の掘り起こし、ICTの活用など、課題解決に向けた地方創生事業を展開している。
 
http://www.teshiotown.hokkaido.jp/
関連リンク
【後編】地方の子供に一流コーチの指導を。北海道天塩町の「未来への投資」
https://tm.softbank.jp/future_stride/ignitions/20180418_1/
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