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前編では、北海道天塩町(てしおちょう)における「Pepper 社会貢献プログラム」に着目したが、後編では、同じく天塩町の「ICT部活動支援」に紹介していく。いずれも、ソフトバンク株式会社と連携し、子供たちの可能性を引き出すICT活用プロジェクトである。

キーマンはやはり、若き天塩町副町長、齊藤啓輔氏。外務省、首相官邸を経て、自ら志願して天塩町へやってきたという、異色のキャリアの持ち主である。北海道の最北部に位置する人口約3,000人の天塩町に着任し、「未来への投資」というコンセプトのもと、特産品の掘り起こし、ライドシェアの導入など多彩なプロジェクトを矢継ぎ早に実行してきた。

後編では、数々のプロジェクトの中から天塩町の未来を担う子供たちへの投資といえる「ICT部活動支援」に迫る。

齊藤 啓輔氏

1981年、北海道紋別市生まれ。2004年、外務省入省。対ロシア外交でキャリアを積んだ後、首相官邸で国際広報戦略に携わる。2016年7月、地方創生人材育成制度を活用し、自ら志願して天塩町副町長に着任。「未来への投資」をコンセプトに、「天塩國眠れる食資源活用プロジェクト」、総務省「ICT地域活性化大賞2017」優秀賞を受賞した中長距離ライドシェア、そして、ソフトバンクと連携した「Pepper 社会貢献プログラム」「ICT部活動支援」など、さまざまなプロジェクトを矢継ぎ早に実行している。

トップアスリートが、3,000人の町へ

北海道天塩町では、人口減少と高齢化が急速に進んでおり、2017年の人口は約3,000人。北海道最北端の稚内市から、車で1時間半。札幌からは、何と車で4時間半。そんな最果ての小さな町に、2017年12月3日、2人のトップアスリートがやってきた。

ひとりは、建山義紀さん。元北海道日本ハムファイターズの投手で、メジャーリーガーとしてもテキサス・レンジャーズなどで活躍した。もうひとりは、迫田さおりさん。元女子バレーボール日本代表のウイングスパイカーで、ロンドン五輪では28年振りのメダル獲得に大きく貢献した。

2人のトップアスリートは、その日集まった約100人の小中学生に対して、基本的な技術の指導を行った。加えて、スポーツの素晴らしさや、スポーツマンシップとは何かを、自らの言葉で子供たちに伝えた。
その背景には、天塩町がソフトバンク株式会社と連携してスタートさせた、「ICT部活動支援」があった。天塩町副町長の齊藤啓輔氏は、プログラムに対する思いをこう語る。

「天塩町では、未来への投資を念頭に、子供たちの教育環境の整備を行っています。距離と時間のハンデを無効化するICTを活用し、地方の子供たちにこそ、スポーツをもっと楽しんでもらえるような環境を用意したい。そして、子供たちには、スポーツマンシップの精神を持って成長してほしい。そんな思いでプログラムをスタートさせました」。

ICTの力で、地域格差を是正する

雪が多く、天候面での制約も受けやすい地域のひとつである天塩町では、スポーツ教育の地域格差の解決に向けた取り組みについて、継続的に議論されてきた。そんな中、2017年12月から北海道内ではじめて導入されたのが「ICT部活動支援」。ICTを活用することで、地方で暮らす子供たちも、元アスリートをはじめ専門コーチの遠隔指導を受けることができるプログラムである。

そのシステムは、いたってシンプル。まず、体育の教員や部活動の顧問が生徒の練習風景をスマートフォンやタブレットで撮影し、動画や質問をアップロードする。すると、それを見た専門コーチから、動画や質問に対するアドバイスがオンラインで送られてくる。

注目したいのは、指導者にとってのメリットである。公益財団法人日本スポーツ協会によると、顧問の半数以上が、自分の担当する競技を経験したことがない。そして、自分の専門的指導力が不足していると感じている教員は、4割にものぼるという(2014年7月「学校運動部活動指導者の実態に関する調査報告書」)。「ICT部活動支援」は、それらの現状を改善することができる。

指導者側の悩みなどを解決することで子供たちの成長をサポートし、スポーツ教育の地域格差の解消を目指すプログラムは、天塩町をはじめ全国累計36の部活動で展開されている。

距離のハンデの無効化、そのはじまり

2017年12月3日、「ICT部活動支援」のキックオフイベントとして、「スポーツマンシップチャレンジ2017 in 天塩」が開催された。ゲストとして迎えられたのが、元メジャーリーガーの建山氏、そして、元女子バレーボール日本代表の迫田氏という2人のトップアスリート。会場の天塩町ファミリースポーツセンターには、約100人の小中学生を含む総勢約250人が集まっていた。

イベントの主旨について、齊藤氏はスポーツマンシップの浸透を挙げている。「これから天塩町では、都市部との距離のハンデがICTによって無効化されます。そして、専門的なノウハウを持つ一流のコーチから、子供たちはスポーツを学べるようになります。そんな新たなスタートに際して、未来を担う子供たちにはもちろん、保護者や指導者の方々にも、スポーツの意義やスポーツマンシップの精神を理解してもらえるような機会を設けたいと考えました」。
また、独自の工夫も施された。一般的なスポーツ体験イベントでは、野球であれば、野球に興味のある子供しか参加しない。しかし今回のイベントでは、どんなスポーツに興味があっても、野球とバレーボールの両方を体験できる。そこには、普段は体験しないスポーツを経験することで、「今自分がやっているスポーツを別の視点から見つめ直してほしい」、そして、「競技が違ってもスポーツマンシップの精神は変わらない」というメッセージが込められている。

野球やバレーボールの経験者は、本格的な技術指導を受けた。未経験者は、ゲーム形式で各競技のおもしろさを体験した。子供たちは、憧れのトップアスリートの指導を受けながら、輝いた表情でスポーツを楽しんでいた。外の気温はマイナス10度。一生忘れないであろう、寒い冬の熱い一日であった。

スポーツマンシップとは何か

「スポーツマンシップチャレンジ2017 in 天塩」では、建山氏・迫田氏に加え、千葉商科大学サービス創造学部専任講師の中村聡宏氏も招かれた。スポーツ教育の専門家として、スポーツビジネス界における人材開発や育成プロジェクトに携わる中村氏は、スポーツマンシップについての講義を行った。

「楽しくなければ、スポーツではありません。そして、スポーツを楽しむためには、プレイヤー、ルール、審判を尊重しなければなりません。自分で決めたことをやり遂げる覚悟と、恐れず全力で挑戦する勇気も必要です。それらすべてを満たす人こそ、スポーツマンであるといえます」。

子供たちも、保護者・指導者も、中村氏の言葉に熱心に聞き入っていた。「開会式で宣誓するスポーツマンシップとは、相手を尊重し全力を尽くす覚悟。負けても相手を称え、敗因を分析し、努力を続ける Good Loserの考え方です。ぜひみなさんも、かっこいいスポーツマン、かっこいい大人になってください」。
そして、イベントの最後にはトークショーが開催され、2人のトップアスリートからも、子供たちにエールが送られた。

建山氏は、「審判に文句を言わない」というチームの約束事にも触れながら、スポーツマンシップについて伝えた。「負けたときにこそ、相手を尊敬し、仲間を励ます。そんな気持ちで取り組んでください。そして、一生懸命取り組めば、負けたとしても課題が見つかります。それを克服できれば、次は勝てるはず。そう信じてチャレンジしてください」。

迫田氏はもともと、レシーブが苦手だったという。「苦手なことも、できるようになる。それが、自分を超えるということです。今の自分を超えることができたとき、家族やまわりの人はきっと喜んでくれます。一人でやっているように思うかもしれないけど、喜んでくれる人がたくさんいます。そんな人たちへの感謝を忘れないでください」と、心に響くメッセージを残した。

「未来への投資」は続いていく

天塩町では、トップアスリートを招いたスポーツ体験、スポーツ教育の専門家によるスポーツマンシップ講義、そして「ICT部活動支援」を継続していく予定だという。

齊藤氏は、すでに次の展開を見据えている。「今回のキックオフイベントに参加したのは、少年団や部活動をやっている子供たちでした。次回は、運動に苦手意識のある子供たちこそ、参加できるようにしたいと考えています」。

苦手だからとあきらめるのではなく、最後までやりとげること、恐れずに挑戦すること。そして、他者を尊重すること。それらの精神を学ぶというスポーツ本来の意義を理解してほしいという思いが、齊藤氏にはある。

「そのような環境づくりを、大人の責任として果たしていきます。そして、未来を担う子供たちへの投資の重要性を、天塩町から、北海道、全国に伝え続けていきたいと思っています」。
北海道天塩町

北海道の北部、国内第4位の長さを誇る天塩川河口に位置。天塩川は、幻の魚と呼ばれるイトウの生息地として知られている。1955年頃は約1万人だった人口が、2017年時点で約3,000人にまで減少した。基幹産業は漁業と酪農。シジミとサケが名産で、人口の約3倍にあたる約1万頭の乳牛が飼育されている。全国各地の地方の市町村と同様、人口減少、高齢化、職の不足による若者離れなど多くの課題を抱える中、特産品の掘り起こし、ICTの活用など、課題解決に向けた地方創生事業を展開している。
 
http://www.teshiotown.hokkaido.jp/
関連リンク
【前編】Pepperで子供の可能性を引き出す。北海道天塩町の「未来への投資」
https://tm.softbank.jp/future_stride/ignitions/20180418/
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