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落合 陽一 (おちあい よういち)
1987年東京生まれ。メディアアーティスト、筑波大学助教 デジタルネイチャー研究室主宰、VRC理事。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学で学際情報学の博士号を 取得(学際情報学府初の早期修了者)。2015年より筑波大学助教。映像を超えたマルチメディアの可能性に興味を持ち、デジタルネイチャーと呼ぶビジョンに向けて研究に従事。 映像と物質の垣根を再構築する表現を計算機物理場(計算機ホログラム)によって実現している。情報処理推進機構よりスーパークリエータ/天才プログラマー認定に認定。 World Technology Award 2015年、世界的なメディアアート賞であるアルスエレクトロニカ賞受賞など、国内外で受賞歴多数。
メディアアーティスト、研究室のPI、実業家という多彩な顔を持ち、テレビ番組やCM、雑誌など多くのメディアで活躍する落合 陽一氏にインタビュー。人工知能(AI)をテーマに、現在身近なところで起き始めている変化や、今後AIがビジネスに浸透していく社会で起こり得る可能性について話を聞いた。

ビジネスにおける、AIが活躍する場と
人間との関わり

-AIが発達すると、身近なところでどのような変化が起きるとお考えですか?
落合:僕は働いている時間がすごく長いのですが、嫌な仕事はしなくていいようにしています。例えば苦手なメールの返信やスケジュールの調整などは全部秘書さんに任せています。しかし、AIが発達すると今秘書さんの手を煩わせているようなオフィスワークの仕事はほとんど無くなっていくと思っています。今でも、GoogleでGmailのアドレスを設定しておけば勝手に予定が全部入ってくるし、オートリプライで予定を組んでくれるサービスもシリコンバレーの企業から出始めてきている。

実はメールの返信や予定の擦り合わせに掛かる時間は結構長くて、1人当たり毎日1、2時間は使っていると思います。それが無くなると生産性が20%くらい上がりますよね。取材やテレビの収録現場などに一緒に来る秘書さんは必要だけど、会社の中で秘書さんの業務をする人はいなくなっていく。予定を調整したり、資料を取りまとめたり、締め切りにリマインドしてくれる人は減っていくんだと思います。
-「AIが人の仕事を奪う」という話もありますが、ナンセンスだと思いますか?
落合:人の仕事は少なからず奪うと思いますよ。ターミネーターの時代にならないだけで。例えば最近、Google翻訳の精度がすごく上がったので、論文の翻訳や添削のサービスをお願いする必要がかなり減りましたね。
僕はネイティブではないので論文を書くときはよく英語のチェックを外部にお願いしていたんですが、1つの論文に5万円ほどかかります。カンファレンスにもなると20本くらい論文を書くので約100万円のお金が飛んで行ってしまう。僕らは優良な顧客だったのですが、翻訳や添削サービスを利用しなくなったので、これで年間200~300万円が浮くと思います。
今のGoogle翻訳だと、論理的な文章なら論理的な英語になるんですよ。それで論理的な英語を論理的な日本語に直して変でなければ、そのまま出しても良いとなる。2回翻訳にかけるとおかしいかどうか分かる。こうした身近な翻訳を例に挙げても、すでに奪われているところはあると思います。Google翻訳の精度が上がってわずか3週間程度でこんな変化があったんだから、来年以降はもっと来ますよ。
-これから伸びていきそうな技術・サービスを教えてください。
落合:音声認識が最近すごく良いなと思います。手を使う選択行為の代替。音声認識が中心になればスマホやタブレットでも、アイコンをタッチして何階層か下に行くことをやらなくなると思うんですよね。今いるところの地図を見る場合「ロック解除」、「地図表示」、「現在地のボタンを押す」という3つの動作が入りますが、それよりも「Hey! Siri.現在地を教えて」のほうが早い。バックグラウンドにAIを仕込んで精度を上げるのも重要ですが、音声認識を軸としたUIを作る仕事はこれから増えていくと思います。タッチベースのUIに音声認識の概念をどう組み込んでいくかが今後の課題ですね。

あとは読唇術。Googleの子会社の「Google DeepMind(グーグル・ディープマインド)」が、最近読唇術の論文を書いていて、口がどう動いたかを見て単語を当てる研究をしているのですが、これが実現すると声を出さなくても音声認識が使えるんですよね。口の動きだけで通じれば外でやっても恥ずかしくない。それをGoogleは着々と進めているので頭が良いなと思いますよね。
-ビジネスの中でAIが特に活躍できそうな場所は?
落合:たくさんありますが、プログラムを書くことも無くなってくると思いますよ。今でもモジュールとモジュールを組み合わせているだけだから、AIに「このモジュールとこのモジュールを組み合わせて」と、音声で指示したら作ってくれるだろうし、デバッグに関しては人間よりもAIのほうが得意だと思いますよ。一度フレームを作ればメモリを最適化するのは得意なので、それは人間が設定すれば良いと思っています。
あとは作業系の仕事。例えば土木作業をするときも人間ではなくコンピュータに指示されるようになると思います。工期を最適化する「Uber(ウーバー)」みたいな感じ。Uberはタクシーの配車アプリで、誰が誰を拾ったら良いか機械の指示を受けて人間が取りに行くサービスですが、あれをすべての人間の関係性に落とし込んでいけばAIが活躍できると思いますね。例えば社長は人間で中間管理職はAI。その下の社員は人間みたいな。あとは取締役会の数人がAIとか。これは全然ギャグではなくて本当にあると思います。

実際にUberはその状態。タクシー運転手に指示を出しているのは機械ですよね。ファストフード店やコンビニでは現場を仕切ってリーダーの役割を果たす社員の代わりに、スマホから指示を出すだけで良い。店員がたくさんいても、その中に外国人の店員がいてもSiriが翻訳して話してくれるだけで良くなりますよね。データをもとに効率的に働くプランを作るのはAIで実働するのは人間。人がAIに動かされる。ビジネスでもそういう世界が来ると思っています。
AIが発達して、メールの返信やスケジュール調整、資料の整理などの仕事をしなくても良くなることで、今よりも約20%は生産性が上がるのではないかと語る落合氏。さらに身近なところでは、Google翻訳の精度が上がったことで、論文の翻訳を外部に依頼しなくなった例を挙げ、AIは人の仕事を少なからず奪っていくと予想。
一方、これからの技術では音声認識が伸びると考えており、必要な情報へ辿り着くのに何度もタッチやクリックするよりも早くて便利なのはもちろん、Googleの子会社が発表している読唇術の論文から、外で声を出さなくても良くなれば世の中に浸透するだろうことが語られた。また、プログラミングや土木作業などもAIが幅を利かせる分野になり、プランを最適化し指示を出すのがAIで、それを実行するのが人間になるという役割分担が図られるのではないかという考えだ。

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(2)“人の知能”と“環境の知能”のハイブリッドが 日常の未来化を加速する。
(3)やがて来る「デジタルネイチャー」の社会を、 人はどう生きるべきか
(4)AIに学習させる過程は「ぬか漬け」作りと似ている
(取材日 2016.12.14)

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