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落合 陽一 (おちあい よういち)
1987年東京生まれ。メディアアーティスト、筑波大学助教 デジタルネイチャー研究室主宰、VRC理事。筑波大学でメディア芸術を学び、東京大学で学際情報学の博士号を 取得(学際情報学府初の早期修了者)。2015年より筑波大学助教。映像を超えたマルチメディアの可能性に興味を持ち、デジタルネイチャーと呼ぶビジョンに向けて研究に従事。 映像と物質の垣根を再構築する表現を計算機物理場(計算機ホログラム)によって実現している。情報処理推進機構よりスーパークリエータ/天才プログラマー認定に認定。 World Technology Award 2015年、世界的なメディアアート賞であるアルスエレクトロニカ賞受賞など、国内外で受賞歴多数。
メディアアーティスト、デジタルネイチャー研究室主宰、実業家という多彩な顔を持ち、テレビ番組、CM、雑誌など多くのメディアで活躍する「現代の魔法使い」こと落合 陽一氏にインタビュー。第3回はメディアアートの世界と来たるべきデジタルネイチャーの社会がテーマ。メディアアートにおけるAIの活用方法、そしてAIによってもたらされる未来の社会の姿について話を聞いた。

これまでの記事はこちら
(1)落合陽一が語る ~AIと仕事を分け合う時代は始まっている~
(2)落合陽一インタビュー「生活・趣味・教育まで、日常に広がるAI」

「デジタルネイチャー」の社会におけるAIとの付き合い方

- メディアアートの世界ではAIによって、どのような変化が起きるとお考えですか?
落合:すでにAIを使ってDJをしている人もいるし、三次元の造形物には入ってくると思いますね。あるいは二次元アニメーションの作り方。エフェクトを付けるのにディープラーニングは結構便利です。例えば触ったり、触られたりという認識は機械学習でできますよね。アート以外でもそうですが、単純に機械学習が関わっていない分野は無いと思っています。

アートに利用する際には入力と出力の関係性をどう変えるかがポイント。造形物を作るときにどういう入力をして、どういう出力をするか。その間の関係性をAIで定義することが一番重要で、それができるものは全部AIを使ってできると考えています。彫刻でも人間のほうが特徴的な形を作ることができますけど、誰かが作った特徴的な形に似せて作るならロボットのほうが精度は良いと思いますよ。人間は半導体をはんだ付けできないけど、機械は光転写できるし、そういうことを人間よりも細かくやっていくことだと思いますね。
- AIによってもたらされる未来の社会のイメージとは?
落合:デジタルネイチャーですね。うちの研究室の名前です。デジタルネイチャーを簡単に説明すると、人工物と自然物の区別がつかない世界なんですよ。今ここにVRが表示されていたら、VRと物質の区別はつきますが、僕らはVRか物質か分からなくなる世界があると思っていて、それをデジタルネイチャーと呼んでいます。

そこでは人と機械、物質とVRの区別がつかない。イメージして欲しいのですが、あらゆるものの解像度が上がったら、それは写真なのか本物なのか、画面の中なのか外なのか分からなくなる。例えば奥さんと会話をしているうちに喧嘩が始まり、どっちかが先に謝らないといけないとき、機械が先に謝ってくれたら良いですよね。自分と自分の機械、奥さんと奥さんの機械、4人で会話している状況。機械が旦那と似ていたら奥さんは区別がつかないですよね。謝るbotを作っておけば相手の機嫌が良くなるわけです。
- デジタルネイチャーの社会像を見据えて、どのような研究をしているのですか?
落合:人間はどうやったら制御できるだろうか、データはどうやって物質化できるだろうか、物質はどうやってデータ化できるだろうか。あるいは、人はどうやって機械のようになるんだろう、機械はどうやって人のようになるんだろうとか、その間の関係性をひたすら行ったり来たりしているのがうちのラボ。そこは将来間違いなくごちゃ混ぜになると思ってるので、その研究をやっています。

例えば200インチの高精細ディスプレイがあれば、このインタビューもできますよね。なぜなら我々が互いに触れ合っていないから。よくゼミの生徒に「君はここに来るまで何を何回触った?」と聞きます。すると大体は自分の体と服と、取っ手のドアノブと、携帯電話くらいなんですよ。あとはエレベーターのボタンとか。本当に意外と物に触らないんですよね。特に他人の体はあまり触らない。だから体はあまり必要ないんですよ。ディスプレイは立体物の表示ができるので、それで良いのかとなると、それで良いとなるんですよね。
- 人の個性までそっくり模写できれば、2馬力で仕事もできる?
落合:2馬力で仕事できるようになると思いますよ。我々の国は生活が便利になってもお金にならないですよね。App Storeに3割、Google Playに3割持っていかれているじゃないですか。これは歴史上の東インド会社より並にキツいですよね。だから我々の生活は便利になってもお金は全然増えない。スマホが普及して早8年、でも、お金的には増えていない。日本企業としてもITの外周部にある、車や電化製品、服飾、無形サービスなどからお金をどうやって集めてくるかが課題ですね。

ちなみに2馬力になって働かなくても良いかというと働かないと駄目。でも、2馬力になっても賃金は上がらないかもというのが今の弱点。もしかしたら上がるかもしれませんが、働く人の数は減るんですよ。失業率が上がります。優秀な人が2倍働けたら、普通の人にとっては問題ですよね。お金持ちがさらにお金持ちになるだけ。特定の人が社会を動かして、中間層はいなくなりますね。居心地の良くない人は多くなると思います。そこで何歳までチャンスがあるかはポイントで、AIで突然職を奪われた人が再就職できる歳までは大丈夫だけど、そこを過ぎると変化の中で生きていくのは大変だから、他の国に移住する人が増えるかもしれませんよね。
- そのような未来をふまえ、落合さんが受け持っている学生さんには、AIとどのように付き合えば良いかお話されていますか?
落合:AIというツールの使い方として、「戦術より戦略が重要だよ」と話しています。戦略は難しいけど戦術は機械が勝つからねと。戦略も機械が勝てそうな状況ですけど、戦術レベルだとAIのアップデートが早いため勉強し続けないといけないですが、戦略レベルなら割と長い間、人間の出番があると思っています。

また、一番失われにくい価値は何か、という話題として、人間にはフィジカルを使う価値があるとも話しています。人間の体はコストが良いですからね。一方で、機械の体は大したことない。だから体を使うことは重要だと思いますね。肉体でしかできないことをするのが人間にとって大事なことです。AIによって仕事は奪われやすい状況にあるけど、日本はベーシックインカムを全国民に支給する財的余裕は無いので、結局はずっと働くことになると思いますよ。
メディアアートの世界でも、三次元・二次元の造形にディープラーニングを生かすことが可能で、入力と出力の関係性を定義できるものは大抵AIで解決できると落合氏は語る。
また、未来の社会はほぼ間違いなく人と機械、物質とVRなど、人工物と自然物の区別がつかない「デジタルネイチャー」となる、と落合氏は予見する。人工物と自然物の境界が曖昧になれば「優秀な人のコピー」によって特定の人だけが社会を動かすようになり、今よりも格差が生じやすくなる可能性があるとも言う。
では、そんな未来を踏まえ、AIと向き合った時、人の価値はどうなっていくのか。落合氏はAIの得意とする戦術よりも戦略を重要視すること、そして機械の体よりもコストのかからない、人間の優れたフィジカルを使うことがキーになると考えていると語った。

(取材日 2016.12.14)
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