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今、世界的に注目を集めている自動運転。ソフトバンクグループもSBドライブを設立して昨春からこの市場に参入し、事業化に向けて日々挑戦している。しかし、その目指すところは、他の自動運転ベンチャーとは大きく異なっているようだ。同社が目指すスマートモビリティの未来とは?

佐治 友基(さじ ゆうき)

2009年、ソフトバンクモバイル株式会社(現・ソフトバンク株式会社)に入社。営業部門で携帯電話の販売戦略を手がける一方で、グループ代表・孫正義の後継者育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」第1期生として、新規事業の企画・提案に取り組み、2016年4月、30歳でSBドライブ株式会社の代表取締役社長 兼 CEOに就任。先進モビリティ株式会社社外取締役も兼任する。

ソフトバンクが目指す自動運転ビジネス

SBドライブの成り立ちと事業内容について教えてください。
佐治:SBドライブは、ソフトバンクと自動運転技術の研究・開発を行うベンチャー、先進モビリティによる合弁会社として、2016年4月に誕生しました(今年3月にはヤフーが第三者割当増資によって資本参加)。自動運転技術を活用したスマートモビリティサービスの事業化を目指し、研究を行っています。


SBドライブが誕生した時、「なぜ、ソフトバンクが自動車を?」と思った人も多そうです。ソフトバンクグループがスマートモビリティ分野に進出する意義についてどのようにお考えですか?
佐治:まず、最初にきちんとお伝えしておきたいのが、我々が目指しているのは、ハードウェアとしての自動運転車を作ることではないということ。もちろん、それを活用するバス会社やタクシー会社をやるということでもありません。SBドライブが担うのは、その運用を円滑にするためのITの部分です。
今、日本では iPhone が爆発的に普及していますが、そうなったのはスマートフォンで楽しめる魅力的なコンテンツやサービスがたくさん登場してきたからですよね。そして、それらはアップル社が作ったプラットフォームの上で提供されています。我々が考えているのもまさにそれ。自動運転車と連携したさまざまなサービスを提供するための土壌を作りたいのです。そして、そう考えた時、ソフトバンクが誇る通信インフラや、ヤフーが保有するビッグデータは大きなアドバンテージになるな、と。
佐治:自動運転は、「認知」→「判断」→「操作」という3つのステップに分かれています。先進モビリティは、そのうちの「操作」の部分を研究・開発してきました。「認知」を司るセンサーや、「判断」を司るプロセッサーは高性能なものを買えばいいのですが、それらをインテグレートする「操作」の部分はそうはいきません。そして、それをできる会社が国内には先進モビリティしかなかったのです。SBドライブを立ち上げるためにいろいろな企業の事業内容や実績を調査したのですが、先進モビリティは調べれば調べるほどすごい会社だということが分かり、これはもう一緒にやっていくしかないと考え、お声がけさせていただきました。
先進モビリティの技術はそれほどまでにすごいものなんですか?
佐治:今、自動運転を研究しているベンチャー企業が「自動運転車だ」と言っているもののほとんどは、電気信号で完全に制御できるEV(電気自動車)に、ありもののセンサーとありもののソフトを載せただけのものです。つまりロボットを作る感覚の自動運転。そんな中、先進モビリティは既存のバスやトラックをはじめとする大型商用車、しかもディーゼル車の自動運転を可能にしました。さらに、車両力学に裏打ちされた乗り心地の計算まで緻密に行っており、本当の意味で人や物を運ぶ「乗り物」を作っていたのです。こういった企業は世界でも稀でした。

自動運転というと、日本は出遅れている印象があったのですが、必ずしもそうではないんですね。 佐治:はい。そしてその背景には、日本特有のドライバー不足という問題があります。メディアでも報じられていますが、現在日本には、本来必要な数の約7割のドライバーしかおらず、旅客や物流に大きな支障をきたしているのです。SBドライブはこれを解決するために、先進モビリティの自動運転技術を活用。さらにそこに独自の運行管理システムなどを加えて提供していきたいと考えています。

「問題を解決するため」の自動運転と、これからの課題

そこに向けた具体的な取り組みについて教えてください。
佐治:まずは第1ステップとして、公共の路線バスに特化した自動運転システムを開発しています。走行ルートが決まっていて、交通環境が予測しやすい路線バスは、自動運転との相性がとてもいいんです。また、たくさんの人員を移動させられるバスは、我々がビジネス上のターゲットとする車を運転しない人・できない人たちのためのものでもあります。
「車を運転しない人・できない人たち」がターゲットなのですか?
佐治:既存の自動車メーカーが自動運転車の開発に取り組む最も大きな理由は、車の付加価値を高めるため。それはつまり自社の車を高く売りたいということですが、実際にそれを購入できる人は、ごくわずかですよね。でも、今後の日本は、若者の車離れや、高齢者の免許返納促進などの流れを受けて、人口の半数以上が車を持たない・持てない時代になります。社会の課題を解決し、より多くの人たちを助けたいと考えた結果、贅沢品=自家用車ではなく、必需品=公共路線バスでビジネスをやっていこうという結論になりました。

先ほどおっしゃっていた国内のドライバー不足は路線バスにおいても大問題になっています。 佐治:路線バスは、電車に次ぐ、国内第2位の交通インフラで、タクシーの3倍もの人員を運んでいるにもかかわらず、約7割のバス会社が赤字経営で、ドライバー不足にも苦しんでいます。結果、地方自治体の多くが膨大な予算をその赤字補填に投入しており、大きな住民負担になっています。
バスの自動運転が実現すれば、その問題を一気に解決できますね。
佐治:そう期待しています。そんな中、SBドライブは内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「自動走行システム」のプロジェクトを先進モビリティと共同で受託し、2017年3月に沖縄県南城市において全国初のバス自動運転実証実験(※)を行いました。片道約1.5kmと短い距離ではあるのですが、交通規制のない公道をハンドル操作とアクセル操作を自動化したバスで走行。実験は大成功でした。
実際に乗った人たちの感想はいかがでしたか?
佐治:約30人の関係者に事前アンケートをとったところ、乗車前はほとんどの人が不安感を抱いていたのに対し、乗車後は結果が真逆に。皆さんが自然な乗り心地を高く評価してくださいました。また、現地の報道を見て見学に来た近隣住民の方も多かったです。地方ではお子さんの送り迎えなどをすべて親御さんがやっているところも多く、その負担が軽くなるのではないかと期待してくださっているようです。
バス会社からも、自治体からも、住人からも求められているというのは嬉しいことですね。
佐治:ええ。この結果を受けて内閣府は石垣島での追加実験を決定。6月下旬から7月初めに、南城市の約10倍となる全長16kmのコースを走行しました。また、今後、さまざまなシチュエーションでのノウハウを積み重ねていくため、北九州市や浜松市など、4地域と連携協定を締結しています。地元のバス会社や警察などとの調整をサポートしていただくことになっています。
そんな自動運転バスの現在の「課題」について教えてください。
佐治:現在、直面している課題は、自動運転バスを安全に走らせるために、みんなが守るべきルールを作らねばならないということですね。現在の道路交通法でも、路線バスの走行を妨げてはならないといった規定はあるのですが、内容が漠然としすぎていて、現実的にはほとんど機能していないようです。これをもっと具体的なものにしていく必要があります。道交法の強化という、規制緩和とは逆の流れになってしまうのですが、まずは特区などでこれを導入し、課題を洗い出していくべきだと考えています。

それらの「課題」を乗り越えた後、将来的に自動運転車とその周辺ビジネスはどうなっていくのでしょうか? 佐治:自動運転車が普及すると、運転の必要がなくなった人間は、移動中にさまざまなことができるようになります。動く会議室、動くデスクに食卓、寝室……自動車という“ハコ”が、あらゆる“場”と融合する可能性が出てくる。そうすると、移動中に快適な食事をレストランが提供したり、長距離移動中に快適な睡眠をホテルがプロデュースしたりといったことがおこるでしょう。先ほどもお話ししましたが、SBドライブはそうした新しいマーケットのファンダメンタル(基礎)を作っていきたい。そこにさまざまな業界の人たちが種をまき、新しいビジネスを生み出していってほしい。バス停近くのスーパーで買い物をするとバス料金が無料になるなどです。皆さんの力で、“移動”をどんどん面白くしていってほしいですね。
(取材日 2017.6.27)
 
SBドライブ
https://www.softbank.jp/drive/
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