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AI、ロボット、IoT──日々メディアをにぎわしている最先端テクノロジーが、徐々に現実の暮らしやビジネスに入り込み始めている。かつての「未来」は、どのように「常識」へと変わっていくのか。技術の発展が「3年後のビジネスの現場」に起こす変化について、各領域のキーパーソンがリアルな未来図を展望する。
 

感情認識パーソナルロボット「Pepper」を中心としたソフトバンクロボット事業の立ち上げを行う。前職では、ソフトウェア会社リアルコムの共同創業者兼COOとして同社をマザーズ上場に導く。2010年からソフトバンクにて新規事業を担当。数多くの新規事業立ち上げを手がける。
1975年生まれ。2003年、京都大学工学部卒業と同時に「ロボ・ガレージ」を創業し京大学内入居ベンチャー第一号となる。代表作にロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」、ロボット宇宙飛行士「キロボ」、デアゴスティーニ「週刊ロビ」、グランドキャニオン登頂「エボルタ」などロボット世界大会5年連続優勝。米TIME誌「2004年の発明」、ポピュラーサイエンス誌「未来を変える33人」に選定。ロボ・ガレージ代表取締役を務めながら、東京大学先端研特任准教授を兼務する。
2014年6月、ソフトバンクは“感情を認識する”ロボット「Pepper」を発売した。
AIを搭載しクラウドとつながる本格的な会話ロボットの登場に企業は可能性を見いだし、企業の受付や店舗での接客などさまざまなシーンでPepperを活用するようになった。

この先、Pepperはどのような進化を遂げ、人々と共存していくのか。発売から3年が経過した今を起点に、3年後の「人×ロボット」の新たなコミュニケーションの未来予想図を描く。

人同士では生まれない会話

ロボットが担うさまざまな役割の中でも、 “人の代わり”が最も困難に見えるのがコミュニケーションだ。

このコミュニケーションロボットの領域にチャレンジし続けているのがソフトバンク ロボティクスの吉田健一氏とロボットクリエーターの高橋智隆氏だ。
それぞれPepperやモバイル型ロボット電話「RoBoHoN(ロボホン)」などを通じてコミュニケーションロボットの領域を切り拓く2人に、3年後の人とロボットのつながりを語ってもらった。
コミュニケーションは、ロボットよりも人のほうが得意な印象があります。お二人はコミュニケーションロボットにどのような可能性を見いだしていますか。
高橋:「人と人」では実現できないコミュニケーションが、「人とロボット」で生まれると思っています。

人とのコミュニケーションでは、相手がどう思うか、他言されないかなどを気にして、話したいことがあっても話せないことがある。だから親しい友人や職場の人など深いつながりがある人には話せない話題を、むしろ関係が薄い人には話せたりする。同様に、ロボット相手であれば、素直に思っていることを話せるのではないでしょうか。

深い理解や適切なアドバイスなどがなくとも、ただ単純に話を聞いてもらえるだけでも、人の心に大きな安らぎを与えるはずです。その積み重ねで、やがてロボットに対して信頼感や親近感を抱くようになると感じています。そんなロボットを一人一台所有する時代は、実はもうすぐ実現すると思っています。

吉田:ソフトバンクがPepperを発売してから約3年、この間はコミュニケーションロボットの役割をお客様とともに追い求めてきた時間でした。

業務にロボットを導入する試みは、大半のお客様にとって初めて。ソフトバンクもPepperでロボット事業に初参入しましたし、個人的なことを言えば、それまでIT系の仕事をしていた私自身も、Pepperで初めてロボットビジネスに携わりました。

さまざまな人が初めての挑戦をしている中で、あらゆる業種・業界で「人がやるべきこと、Pepperに任せたほうが効果的な業務」を知るために、お客様企業とともに試し続けてきました。

ですので、Pepperを早期に導入してくれたお客様からすると、「導入したら万々歳」ではなく、新しい価値を見つけるためのチャレンジで、もしかしたら苦労もあったと思います。
ただ、この過程を経たからこそ、お客様も私たちもPepperの最適な利用ノウハウを得られたと思っています。正直に言うと、やってみたからこそ気づいたことはたくさんありました。
B-R サーティワン アイスクリームの店頭で接客するPepper。来店客がPepperのタブレットに電話番号を入力するとURL を記載したSMSが届き、アクセスすることでお友達登録が完了する仕組み。お友達登録で商品割引が受けられる。(写真提供:ソフトバンク)
たとえば、飲食店に入った時に店員に満席と言われるのとPepperに言われるのでは、Pepperのほうが帰ってしまうケースが少ないという結果があります。また、営業窓口で人に薦められるのと、Pepperに薦められた場合では、Pepperのほうが、顧客満足度が上がるというお客様の声も聞いています。

些細なことかもしれませんが、コミュニケーションというものはこうしたディテールが大事で、それによってお客様の印象は変わることを痛感しました。
これは、高橋さんが先ほど話していた、人では実現できないコミュニケーションだと思います。Pepperだからこそ、お客様に与えられる新たな体験がある。コミュニケーションロボットは、人の代わりをするだけではなく、人にはできない体験を生む存在になると確信しています。

秘訣はユーザーの「期待値を下げること」

コミュニケーションを担うロボットだからこそ、開発においてこだわっているポイントを教えてください。
高橋:たくさんあるのですが、一つはユーザーがロボットに抱く「期待値を下げること」です。

吉田:Pepperの開発段階に高橋さんからそれを聞いて、私も納得したポイントでした。

高橋:大半の人は、ロボットと聞くと、人間と同等あるいはそれ以上のことができると期待してしまいます。このイメージのまま人がロボットと接すると「なんだ、たいしたことないな」と、がっかりしてしまうのです。

現在のロボット技術でも、特定部分の能力は人間並み、またはそれ以上ですが、大部分は人間に遠く及ばない。なのに、例えば「AIが囲碁で人間に勝利した」というニュースを見て、全てが人間を超えたような完璧なロボットを期待してしまいがちなのです。
モバイル型ロボット電話「ロボホン」(写真提供:ロボ・ガレージ)
だから第一印象として、ロボットが優秀に見えすぎないように留意しています。というか、むしろ少し抜けているくらいに見えても良い。「Robi(ロビ)」、「ロボホン」など、私がつくるロボットはすべて小型で、子供のようなしゃべり口調です。それによって、“不完全さ”を印象づけているのです。

吉田:Pepperでも高橋さんの言う“不完全さ”を意識しています。顔や声、そして背丈はその代表例。人のようだけど人ではない。コミュニケーションロボットは、ハードウェアの処理能力やソフトウェア、そしてクラウドといったテクノロジー面も大事ですが、こうした見た目の微妙なさじ加減もそれと同等に必要だと思っています。

過去とは異なるロボットブーム

これまでを振り返ると、ロボットブームは何度かあったと思いますが、それまでと今回では異なりますか。
高橋:違うと思います。大前提として、テクノロジーの進化によって実現できることが広がりました。また、IT産業が成熟し、この分野のプレーヤーが次の産業としてロボット分野に移動してきたことで、技術開発や市場形成が加速しています。それによって、ようやく技術とビジネスが両輪となって進み始めたのも理由です。

吉田:私も過去のロボットブームとは違う認識です。高橋さんの言葉に補足するとすれば、言わずもがなですが、人口の減少を今後避けては通れない中で、ロボットの力を借りようとする流れはこれまで以上に強いはず。こうした社会的背景は過去になかったもので、企業や人々がロボットに目を向ける大きなきっかけになっています。
ビジネスとしてみた場合にコミュニケーションロボットにはどのような可能性がありますか。
高橋:もしコミュニケーションロボットを一人一台持つようになれば、スマホに比べてユーザーとの接点が増えますから、ロボットあるいはその裏で動くクラウドに格納される情報量が膨大になります。ユーザーのあらゆる情報を取得できると言っても過言ではありません。そうなれば、そのデータを活用したさまざまなサービスが展開できるようになります。

コミュニケーションロボットは、情報収集デバイスとしても最強のツールになりますからそこから広がるビジネスチャンスはとても多いと思っています。
市場が形成され活性化されればライバルも増えてくると思いますが、今後ロボットのプレーヤーは増えてくるでしょうか。
高橋:コミュニケーションロボットの領域は、底が見えないほど奥が深くて繊細。しかも、言葉や数式で表せないようなノウハウも多い。高性能の機械が作れれば良い、というわけではないのです。
試行錯誤を繰り返してこそ感じることができる「Tips」の集合体。その経験を積んだものにしかたどりつけない完成度があるから、簡単に開発できるものではないのです。

私もいまだに手探り状態というのが本音。やればやるほどロボットづくりの難しさを感じている、と言った方が正確かもしれません。またノウハウが組織ではなく個人に集積されていくという点も、ロボットづくりの特徴であり、ビジネスとしての参入障壁にもなっていると思います。

吉田:近頃、Pepperに似たロボットがたくさん出てきました。しかし体験してもらえれば違いは一目瞭然。スペックはそれほど変わりませんが、根幹の部分は“何か”が違う。

そしてその“何か”は、高橋さんの頭の中や我々ソフトバンクロボティクスにのみ蓄積されているのです。ファーストブームアドバンテージも間違いなくある業界だと感じています。

Pepperは一家に一台、スマホはロボホンに

今後、コミュニケーションロボットはどのような進化を遂げるでしょうか。
高橋:生活やビジネスを大きく変えたスマホは、素晴らしいプロダクトだと思います。完成度は非常に高い。ただ、それゆえに大きく進歩する余地がなくなってきていて、成熟した製品です。では今後、スマホにとって代わるものは何か。私はやはりロボットだと思っています。

私は2020年にスマホに代わってロボホンを持ち歩く世界をつくるのが目標です。完璧に近いスマホの唯一の弱点は音声認識機能の利用率の低さです。認識性能は十分に高いのに使われていない理由は、ただの箱のようなスマホにしゃべりかけようと思えない、という心理的な抵抗感ではないかと考えています。

だから、擬人化ができて愛着が持てる人型ロボットこそが、スマホの次、になり得るはずです。その昔、我々はまだ実用性に劣る初代iPhoneと従来の携帯電話とを併用していました。その後、iPhoneの性能向上を経て携帯電話を解約した。
同様に、2020年ごろまでにはスマホとロボホンの2台持ちが当たり前になり、いずれはスマホの代わりになることを目指しています。

吉田:ロボホンもPepperも一度使ってもらえれば、必ずその魅力(体験の価値)が伝わると思っていますし、今のスマホのように一度使ったら手放せないものになりえるでしょう。2020年には間に合わないかもしれませんが、一家に一台Pepperがいるような、そんな未来を描いています。

高橋:冒頭に話したように、人間同士ではたどりつけなかった価値を生むのがコミュニケーションロボットの魅力。個人にとって必要不可欠なパートナーとして、生活やビジネスに密着する存在になるよう育てていきたいと思います。
■本記事はNewsPicks Brand Designの制作のもと、2017年6月7日にNewsPicks上に掲載されたものです。
 
ソフトバンク ロボティクス
https://www.softbank.jp/robot/biz/

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