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AI、ロボット、IoT──日々メディアをにぎわせている最先端テクノロジーが、徐々に現実の暮らしやビジネスに入り込み始めている。かつての「未来」は、どのように「常識」へと変わっていくのか。技術の発展が「3年後のビジネスの現場」に起こす変化について、各領域のキーパーソンがリアルな未来図を展望する。

1952年生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。慶應義塾大学大学院経営管理研究科(MBA)修了。鉄鋼メーカー、英ハル大学客員研究員、文教大学などを経て、2001年度より早稲田大学教授(現職)。早稲田大学IT 戦略研究所所長(現職)。経営情報学会会長、国際CIO学会副会長、組織学会理事・評議員、Systems Research誌Editorial Board、Systems Practice誌International adviserなどを歴任。他に、エグゼクティブ・リーダーズフォーラム代表幹事、経済産業省IT経営協議会委員、IT Japan Award審査員なども務めている。経営情報学会論文賞を3回受賞。
2002年、早稲田大学 理工学部卒業、大学卒業と同時に企業し後に事業譲渡。エムスリー株式会社 マーケティングプロデューサーを経て、2012年ソフトバンク株式会社に入社し、ソフトバンクグループの社内ベンチャー制度「SBイノベンチャー」よりOpenStreet株式会社を設立し、代表取締役に就任。現在、ソフトバンクグループ代表・孫正義による後継者発掘・育成プログラム「ソフトバンクアカデミア」に在学する。
2016年11月、ソフトバンクは自転車シェアリングサービス(シェアサイクル)事業に参入した。
ソフトバンクグループの新規事業提案制度「ソフトバンクイノベンチャー」を通じて立ち上げた社内ベンチャー子会社のOpenStreetが、シェアサイクル「HELLO CYCLING」を開始。世界では中国を筆頭に徐々に根付き始めたものの、日本ではまだ黎明期にあるシェアサイクル市場に名乗りを上げたのだ。

花盛りのシェアリングビジネスの中でも、未踏の地と言える自転車に着目した理由と狙いは何か。

起爆剤は常に手元にあるスマホ

自動車に始まり、家やオフィス、衣類や家具、家電などさまざまなモノがシェアされるようになった。人々の意識は「所有せずに利用する」へと移り、その影響でシェアリングビジネスは伸び盛りだ。
テクノロジーの普及・進化で提供者と利用者を結びつけやすくなったことで隆盛している「シェアリングエコノミー」。今後どのように変貌を遂げるのか。
IT/ネットを活用したビジネスモデルに精通した早稲田大学ビジネススクール教授の根来龍之氏とOpenStreet株式会社の代表取締役、横井晃氏が語り合う。
根来先生は、ITやネットビジネス、シェアリングビジネスの研究に熱心に取り組んでいますが、隆盛期にある「シェアリングエコノミー」の未来をどのように予測していますか。
根来(早稲田大学):リユース(再利用)市場も含めて、マーケット規模はますます拡大し、2020年頃には、少なくとも今の2倍くらいになることが予測されます。「所有から利用」への流れは拡大していくでしょう。その流れを、とくに若年層がつくっていくと思います。
私が教える学生たちを見ていても、例えばアパレルでは「買って所有する」のではなく「一時的に使ってその後ネットで売る」という消費の仕方が根付き始めている。新品を買いそれをずっと保有し続けるという考えは、若ければ若いほど薄れ始めていると思います。
シェアリングサービスは、ここ最近になって大きな注目を集めていますが、広い意味で言えば、だいぶ前から存在しています。例えば、アメリカのカーシェアリングサービスである「ZipCar」は1999年の創業。今から18年も前です。
それが最近になって、UberやAirBnBなどシェアリングサービスベンダーが続々と登場し、大きなムーブメントを起こしているのは、スマートフォンの影響がやはり大きい。

いつも手元にスマホがあり、情報の受発信と共有が常にできるようになったことで、「売りたい人が売りたいもの」を「買いたい人が買いたいもの」を簡単に意思表示できるようになり、それを容易に仲介して決済できるようになった。眠っていた「売り買い」のニーズをスマホが掘り起こしているのです。

“ショートな移動”に変革の余地あり

シェアリングサービスの中でも、横井さんが「自転車」に着目した理由は、何ですか。
横井(OpenStreet):“ショートな移動”、つまり短距離の交通移動インフラにイノベーションを起こせると感じたからです。
移動手段は複数ありますが、私は飛行機や新幹線、電車、車などを使った“ロングな移動”(長距離の交通移動インフラ)と、小型モビリティや自転車を活用したり歩いたりといった短距離移動インフラの2つに大別できると思います。
ビジネスという観点で見ると、長距離の交通移動インフラは膨大なコストがかかり、ベンチャーが戦うのはまず難しい。一方で、短距離の交通移動インフラは「スマホ×IoT」で、ベンチャーでも交通インフラを構築することができる絶好の機会、チャンスだと感じました。

そこで、自転車に着眼しました。自転車は徒歩では行けないけれど自動車を使うまでもない5km圏内の移動手段として最適で、しかもノーライセンスで誰でも運転できる。
日本の自転車保有台数は7200万台程度とかなりのボリュームです。しかし、1台の自転車の利用時間は1日30分程度。利用していない時間が圧倒的に長いんです。
この利用されていない自転車をシェアして、ユーザーが乗りたい時だけに手軽に利用できる環境をつくることができれば、新しい短距離の交通移動インフラを構築できると思いこのビジネスに踏み切りました。

世界初の「オープンプラットフォーム型」

根来:シェアサイクルと言えば、世界で見ると中国の「Mobike(摩拜単車)」が有名ですよね。

横井:Mobikeも「スマホ×IoT」で一気に事業を加速していますが、OpenStreetとはビジネスモデルが違います。
Mobikeは自転車やスマートロック(専用鍵となるIoTデバイス)の開発や専用システムの開発・運用を自前で提供している「垂直統合型」モデルです。一方、私たちはテクノロジー部分に特化して、複数の事業者と協業しながらインフラをつくりあげる「水平分業型」モデル。この点が大きく異なります。
私たちは、IoTとスマホを中心としたテクノロジー部分で、シェアサイクルをリードするプラットフォーマーの位置付けです。

根来:水平分業のかたちを詳しく教えてください。

横井:私たちの役割は大きく2つです。「シェアサイクルを提供したい事業者」が容易に参画できるオープンプラットフォーム型のシステムを提供すること。2つ目は、その事業者とシェアサイクルを利用したいユーザーをつなぐことです。
事業者には、スマートロックやユーザーが課金した料金の代行(決済システムの提供)、自転車の稼働状況のリアルタイム可視化などの一般的な機能に加えて、多角的に分析可能なシステムを提供しています。

一方、ユーザーには、ユーザが乗りたい場所の近くにあるシェアサイクルの情報を提供して簡単に決済できるアプリを提供しています。1つのIDで参画するすべての事業者のシェアサイクルを全国横断的に利用してもらえます。
根来:なるほど、シェアサイクルの世界ではまれな存在ですね。

横井:はい。私の知る限り、シェアサイクルを提供する企業はまだ世界で1000システム程度なのですが、垂直統合型でビジネス展開している企業がほとんど。当社のような水平分業型のプラットフォーマーは、グローバルでは存在しません。

加速度的にインフラを整備する方法

根来:今、ステーション(自転車置き場)と自転車は何台くらいあるのですか。

横井:現在8社の事業者と協業していて、ステーション数は30カ所、自転車は150台くらいです(2017年6月末時点)。まだまだ少ないですよね。
ただ、主事業が異なる有力な事業者が、私たちのプラットフォームに魅力を感じていただきパートナーになってくれれば、ステーションと自転車インフラが加速度的に増えると思います。“群戦略”の効果が飛躍的に高まり、ユーザーの利便性を一気に高めることができると思っています。

根来:どのような企業が興味を持っているのでしょうか。

横井:すでに協業している事業者で言うと、パーキング事業者です。車を駐車した後に、目的地までの短距離な移動を自転車がサポートするといった「パーク&ライド」に期待を持っていただいています。また、ホテルや商業施設を複数保有する企業からの関心も高いです。

店舗の軒先をステーション化することで、借りる時と返す時にユーザー接点を持つことができるわけですから、店舗の集客効果にも貢献できます。また、すでにレンタルサイクルを展開している小規模の自転車ショップや自治体も興味を示してくれています。
事業者のメインビジネスのユーザーの利便性向上や集客効果において相性が高い企業や、交通施策をデータを利用して進めたい企業から関心が高く、導入準備を進めています。

私たちのプラットフォームは、既存の自転車に後付けでスマートロックを搭載するだけで開始できますし、課金や管理のシステムをすべて私たちが提供しますので、ビジネス展開するまでのハードルが低い。さまざまな事業者の方に新たな可能性を提供できると思っています。

水平分業プラットフォーマーの効率性

根来:水平分業型モデルのプラットフォーマーの利点ですね。

横井:水平分業型のメリットはそれだけではありません。これは、シェアサイクル特有の利点かもしれませんが、各地域特性やニーズは異なりますので、その場所ごとに強い事業者と協業することで、ローカライズされたシェアサイクルを提供することが可能です。
例えば、自転車の種類で言えば、この地区は坂道が多いから電動自転車のニーズが高いとか、都心部であれば小回りが利くシティーサイクル型に需要があるなど、地域によってニーズが異なります。

また、どこにステーションを設置するのが良いのか、どんな利用の仕方が多いのか、どんな利用の仕方がされればその地域性が生かせるかという各地域のニーズを、全国津々浦々、私たちだけで拾い上げ、対応していくのには時間もコストもかかってしまう。

それなら、その地域を熟知し、その地域で強い事業者や団体と組んだほうがはるかに効率が良く、ユーザーにとって良いシェアサイクルになると思っています。こうしたアライアンスを組めることも、プラットフォーマーのメリットだと思います。
根来:面白い戦略ですね。ただ、水平分業型モデルだと、事業者各社がそれぞれ好きなように自転車やステーションを構築してしまうことが考えられる。事業者に対する「制約と自由」、つまり、自由にやってもらうところと統一性を確保するために制約すべきことの組み合わせが肝ですね。

横井:そうですね。 「HELLO CYCLING」という統一したブランドや、わかりやすいWebユーザーインターフェイスを提供して私たちの世界観を維持しながら、自転車やステーションについては、各事業者の色が出るようなバランス作りには気をつけていきます。

例えば、浦和レッズの本拠地があるさいたま市美園エリアで参画している街づくり団体は、レッズのチームカラーを意識して赤い自転車で統一しているんですね。こうした取り組みは非常にユニークですからどんどんやってほしいと思っています。

「自転車活用推進法」が追い風に

環境対策に熱心な自治体に対して、シェアサイクル戦略特区のようなかたちでシェアサイクルを部分的に一気に普及させていくのも面白いですよね。
横井: 2016年12月に「自転車活用推進法」が国会で可決、公布されました。その中に、自転車専用道路や通行帯の整備、シェアサイクルの整備といった項目があり、シェアサイクルの追い風になっています。自治体の方々にも興味を持ってもらっていますので、将来的に「シェアサイクル戦略特区」ができる可能性がないわけではないと思っています。

根来:特に観光都市はシェアサイクルをやりたい、やり始めているというところが多いので、新たにHELLO CYCLINGのプラットフォームを活用してシェアサイクルを開始するほかにも、または、すでに提供している事業者に既存の自社システムから乗り換えてもらうという手段もいいですね。

シェアリングのカギは「定額、使い放題」

根来さんはシェアリングサービスの成功のカギは何だと思っていますか。
根来:BtoCシェアリングの場合は、まず使いやすさ。ユーザーが圧倒的に使いやすいものでなければいけない。スマホアプリもそうですし、必要な場合は個人情報の登録、決済、サポートなどあらゆる面で利用のしやすさを追い求めた企業が勝つと思います。

また、急速に規模を拡大して、どこでも使えるとか、いろいろなものがあるというような「ネットワークの大きさ」で勝つことも重要です。
冒頭にお話した通り、シェアリングは決して新しいものではありません。にもかかわらず、今盛り上がっているのは簡単にシェアする仕組みができたからです。この点を重視することが大事です。

二番目に大きな最近のポイントは定額化です。「定額/使い放題」は生活の中にサービスが入りやすいんです。
一見すると、使った分だけお金を払う従量課金制のほうがユーザーに受け入れられるように思えますが、「使った分だけお金を払う」は、逆に言うと「たくさん使ったら、たくさんお金を払わなければならない」。これがユーザーにとって心理的抑制となって、使うこと自体に二の足を踏ませてしまうことがある。

定額料金の設定にセンスが必要ですが、一度会員になって満足してもらったら、ユーザーは「定額/使い放題」を享受するようになる。そうなれば、安定的収入が得られますし、ユーザーがユーザーを呼び顧客基盤が広がっていきます。

だから、HELLO CYCLINGにもぜひ使いやすさだけでなく、将来は定額制も検討してほしい。
たまにしか行かない観光地は別として、都市部など定常的に使う可能性があるエリアは定額のほうがいいかもしれません。

それと、自転車シェアリングで最も価値が高いことは「乗り捨て自由」だと思いますが、それができない日本ではとにかくステーションの数が重要だと思う。全国ネットワークでなくてもいいのですが、地区ごとにはトップにならないとだめだと思います。
「最もステーションを持っている事業者」にならないと勝つことはできません。だから、早期のシェア獲得が雌雄を決する。そのための戦略として水平分業型は面白いし可能性を感じます。

横井: OpenStreetという社名は、それぞれの単語の頭文字をとって、「OS」と略せます。これには、「都市のOS(オペレーションシステム)」になりたいという思いにひも付けているんです。

HELLO CYCLINGのロゴが都市のピクトグラムのひとつになり認知できるような、そんなインフラにしていきたい。それを私たちはプラットフォーマーとして1社単独ではなく水平分業型で実現していきたいと思っています。
■本記事はNewsPicks Brand Designの制作のもと、2017年7月31日にNewsPicks上に掲載されたものです。
 
HELLO CYCLING
https://www.hellocycling.jp/
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