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ソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2017」では、AIやPepperをはじめとするテクノロジーの最新トレンド、それらを活用したビジネス変革の最新事例が多数紹介された。進化を続けるAIとロボットはビジネスを、社会をどのように変えていくのか。2日間にわたるイベントの中から注目の講演を取り上げ、そのダイジェストをレポートする。

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業界別パックで進化を続ける「Pepper for Biz」

ソフトバンクロボティクス株式会社
事業推進本部 本部長
吉田 健一
「Pepper for Biz」は、提供開始から1年半で2,000社を超えるお客さまに導入いただきました。現在、ソフトバンクロボティクスは、それらの実績で培ったノウハウをもとに、さまざまな業種のお客さまの課題を解決するアプリの開発を推進。具体的には「小売り」「医療」「ホテル」「教育」などの業種別サービスパックを豊富に提供しています。例えば、小売りでは、店頭のPepperが会員向けサービスを案内し、そのまま会員登録まで行えます。LINE向けに会員サービスを提供する某大手流通チェーンでは10日で約1,400名の会員を獲得。ROIに換算すると、その効果は40万円以上だといいます。
医療では、Pepperが出す質問に答えていくと、病気や診察の必要性などが分かる疾患啓発に貢献しています。ある病院は導入から2週間で骨粗しょう症の検診受診率が2倍以上に拡大しました。ホテルでは訪日外国人向けの接客や案内、チャット形式による外国語での予約受付業務などに活用されています。今年7月には、観光案内に特化した観光コンシェルジュアプリもリリースしました。活躍の場が広がれば、さらにさまざまな知見を蓄積できます。それを再びアプリ開発にフィードバックし、Pepperのさらなる進化を目指します。
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4つの壁を乗り越えてAI導入を成功させる

ソフトバンク株式会社
法人事業戦略本部 戦略事業統括 エヴァンジェリスト
立田 雅人
ソフトバンクは2年前から働き方改革の一環として、AIの社内導入を始めました。今では40を超えるAIプロジェクトがあります。例えば、ソフトバンクの法人営業では提案アドバイザーとして活用しており、お客さまに対する効果的なアプローチの仕方や提案方法などを紹介してくれます。もちろん、最初からうまくいったわけではありません。当初はAIの理想と現実のギャップに悩みました。その経験から多くのことが分かってきました。AI導入を成功に導くには「検討」「構築」「導入」「定着」という4つの壁を乗り越えることが重要です。まず検討段階ではAIの得意・不得意を見極め、業務スコープを絞って要件定義したうえで、それに合うAIを探すこと。
構築段階では現場の生の声から学習データを作成する。導入段階では最初から完璧を求めず、スモールスタートする。そして定着段階では、学習データの追加・更新などAIに対して継続的教育を続けることです。AIは魔法の箱ではありません。人が手を加えていくことで賢くなり、人に役立つものになっていきます。そして、育ての親はIT部門ではなく、業務現場のユーザであるべきです。小さく生んで、企業全体で大きく育てていく。これがAIとの正しい向き合い方であり、大きな成果を生む秘訣です。
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感情AIと自走ロボットが創り出す新たな未来

cocoro SB株式会社
取締役
大浦 清
cocoro SBは、自然言語処理のサイネット、音声感情認識エンジンのAGIと共に、感情を生成するAI「感情エンジン」の研究・開発に取り組んでいます。人の怒り、喜び、悲しみなどの感情には、脳の内分泌物質が大きく影響しています。感情エンジンは、話し方や言葉、声の強弱などから、それら内分泌物質の量を推測し、「感情地図」にマッピング。人の感情を理解し、自身もそれに対して感情を表現します。「こう言ったら、こう反応する」とあらかじめプログラムされたコミュニケーションではなく、感情を持った話し相手となれるのです。この技術を活用して、本田技研工業様や三菱自動車様とはドライバーと感情を持った対話を行えるクルマの開発を、川崎重工業様とは感情を持つバイクの開発に取り組んでいます。
ドライバーやライダーの感情を理解することで、適切なサポートとリラックスした運転空間を提供できると考えています。もちろん、感情エンジンは、クルマだけでなくあらゆるデバイスに適用可能です。弊社では、感情を持った自走ロボットがオフィスの清掃を行っています。社員と会話しながらゴミを拾ったり、時には注意したりします。人とロボットが共存し、より豊かで快適に暮らせる社会の実現に向けて、これからも感情エンジンの高度化を進めていきます。

AIチャットボットでヘルプデスク業務を自動化

株式会社大京
グループ情報システム部 担当部長兼システム開発課長
川口 宏和氏
大京グループでは、競争力強化に向けて、グループを挙げて働き方改革を推進。その一環として、AIを活用した社内業務改善に取り組んでいます。まず手を付けたのが、年間1万件以上に及ぶ社内のITヘルプデスク業務です。2017年7月より、ソフトバンクからチャットボットサービス「hitTO(ヒット)」を本格導入し、FAQナレッジを活用した問い合わせ対応の自動化を実現しています。hitTOを採用した理由はユーザインターフェースが分かりやすく、学習能力を高める作業がやりやすいこと。IBM Watson™をベースとしており、将来の拡張性が高いことも評価しました。問い合わせ対応の自動化により、ITヘルプデスク業務は大幅に効率化されています。ここで培ったノウハウを活かし、今後は総務部門や施工管理を担う子会社の社内問い合わせ業務、お客さま対応サービスへの活用も検討しています。テキスト情報だけでなく、画像や動画、音声認識機能の実装などhitTOの進化にも期待したいですね。多様な情報を処理できるようになれば、活用範囲もさらに広がるでしょう。

学習能力の向上には業務部門の知見が不可欠

株式会社大京
グループ情報システム部 係長
吉田 倫子氏
社内ITヘルプデスク業務へのhitTO導入プロジェクトに主担当として携わりましたが、成果を出すまでは試行錯誤の連続。例えば、できるだけピンポイントの回答をユーザに提示するために、当初は1つの回答に15パターンの質問を紐づけるようにしていました。しかし、人によって質問の仕方はさまざま。その意図を理解し、AIに学習させるのは簡単ではありませんでした。また、回答をシンプル化しすぎると、かえって混乱を招くことも分かりました。
そこで、1つの質問で複数回答がある場合は、無理に絞り込まず、補完候補としてまとめて提示する。回答の仕方も、いきなり答えを提示するのではなく「なぜ」「どうして」といった理由を示してから、解決策に落とし込むという方法に変えました。この変更は、大きなブレークスルーとなりました。今後も、さらなる成長を図りますが、回答の精度を上げていくには、業務を知る現場社員の知見が不可欠です。業務部門のスタッフと共にhitTOを育てる活動を継続し、さらなる精度向上を目指していきます。

医療×AIで新しい価値創出を支援していく

木村情報技術株式会社
代表取締役
木村 隆夫氏
医療情報は専門性も高く、膨大です。例えば、医薬品には、効能や副作用、飲み合わせの注意事項などさまざまな関連情報があります。製薬会社のコールセンターは、日々こうした問い合わせに対応しなければならないのですが、中にはオペレーターがすぐに答えられない場合もあります。この問題を解決するために、当社はIBM Watson日本語版を活用した「24時間お問い合わせ受付サービス」を開発・提供しています。PCやスマホから音声やチャットで質問すれば、AIが即座に的確な回答をしてくれるサービスです。実際に製薬メーカのノボノルディスクファーマ様は、社内ヘルプデスク業務に活用し、大きな成果を上げています。
導入当初40%程度だった正答率は、継続的な学習により、1カ月後には80%に大幅アップ。お客さまのヘルプデスクへの評価も高まり、不満足率は21%から1.8%に減少し、満足度指標も3.6から4.5に向上しています。この成果を受け、同社は、社内学術担当者の情報検索にも活用。結果、検索サービスを使う場合に比べて、求める情報を入手する時間を劇的に短縮できることが分かりました。
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説明力の高い検索データの可能性

ヤフー株式会社
マーケティングソリューションズカンパニー
データ事業推進本部 リサーチアナリシス部 部長
天野 武氏
データの価値は説明力で決まると思っています。説明力とは将来を的確に予測して結果を導き出す力。検索サービスはこの説明力を持つデータの宝庫です。「あのニュースを深掘りして知りたい」「おいしいお店を探したい」「流行の服を買いたい」――。人は何らかの欲求を満たすために検索サービスを使います。検索ワードや検索行動は言語化された消費者の欲望です。これを解析することで、人々の無意識の意図を読み解き、説明力の高いデータを獲得できます。ヤフーでは、グループ会社のHandy Marketingを通じ、検索データを活用した新しいマーケティングソリューションを開発・提供しています。これは従来のマーケティング手法とはまったく異なり、ペルソナ分析はしません。
関連する属性を網羅的に抽出し、要素の組み合わせで、将来を予測します。ある製造業の企業は、新商品の需要予測にこれを活用し、77%の的中率となりました。今後は販売数量予測や生産調整、新商品のプランニングへの活用も検討しています。検索してクリックしていく。それはユーザの選択的行動であり、そのデータは説明力が非常に高い。検索データを活用したマーケティングソリューションの提供を通じ、多くのお客さまのビジネス変革に貢献していきます。
 
進化を続け、その活用範囲も広がりを見せるAIとPepper。2つの組み合わせによるソリューション開発も進んでいる。AIとロボットは検討段階を過ぎ、すでに実用段階に入ったといえるだろう。成果を上げるためのノウハウも各企業で蓄積、研鑚が進んでいる。また感情を持つロボットやデバイスの可能性、人との共存による未来社会の展望も示された。こうした情報を共有できた今回の多数の講演は、AIとロボットの導入、さらなる有効活用を目指す企業にとって非常に有意義なものとなるだろう。

(取材日 2017.7.20、7.21)
 
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