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安倍内閣が「一億総活躍社会」の実現に向けて「働き方改革実現会議」を設置したのは2016年9月。
政府内では、少子高齢化に伴う労働力人口の減少や長時間労働による過労死問題など、労働環境を取り巻くさまざまな課題を解決するための検討が重ねられている。
公益社団法人日本生産性本部の調査によると、2016年の日本の労働生産性はOECD(経済協力開発機構)加盟35ヵ国中20位。G7(主要7ヵ国)では1970年以降、最下位を記録し続けている。
成果主義がなかなか浸透せず長時間労働になりがちなこと、日本ならではの高品質な製品やサービスが比較的安価に提供されていることなどが要因として挙げられるが、その積年の課題を解決する施策の1つとして期待されているのが、RPA(ロボットによる業務自動化)とAI(人工知能)の導入による生産性の向上だ。
今回はその2つがコラボレーションした先進事例を取り上げ、「働き方改革」がもたらす労働環境の未来像を検証したい。

飯沼 純
株式会社 Cogent Labs
代表取締役

株式会社セールスフォース・ドットコムの13番目の社員として、創業当初より15年間同社のSaaS業界における急速な成長に貢献。幅広い業界・企業規模に対するソリューションとビジネスアプリケーション提案を牽引。Deep Learningをはじめ、社会を変える最先端技術の実ビジネス活用を信じ、Cogent Labsを共同設立。
上永吉 聡志
ソフトバンク株式会社 プロセスマネジメント本部
副本部長 兼 RPA推進室 室長

1994年現ソフトバンク入社。法人営業・事業戦略策定・通信事業者間の渉外業務を経て、法人向け事業のビジネスプロセスの設計・管理を担当。近年はソフトバンク社内でRPAなどのITツールを活用した働き方改革と、デジタル時代に適応した社員育成を牽引。同実績に関して、「RPA/ビジネスAIカンファレンス2017」など、数多くの社内外イベント・セミナーで講演。

RPAとAIのコラボで「働き方」はどう変わる?

我が国の労働力人口(15歳以上のうち、就業者と完全失業者を合わせた人口)は2016年時点で6,648万人。それが少子高齢化の加速により、2030年には1割減の5,880万人、2050年には3割減の4,640万人に減少すると見られている(総務省統計局『労働力調査』)。
一方、週49時間以上の長時間労働者の割合はG7(主要7ヶ国)で最も多い21.3%(2014年)。「現在の自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者が約6割に達するなど、鬱や過労死を引き起こしかねない長時間労働の常態化も社会問題となっている。
“経済大国ニッポン”を支えてきた労働力人口の減少と、長時間労働の解消――。その状況下で、日本経済の活力を維持していくのは至難の業のようにも思えるが、近年、解決策の1つとして注目されているのがRPAやAIの導入による業務の効率化だ。
このたび協業を発表した、RPAソリューション「SynchRoid」を運営するソフトバンクの上永吉 聡志氏(プロセスマネジメント本部副本部長 兼 RPA推進室室長)と、AIサービス「Tegaki」を開発したコージェントラボの飯沼 純氏(代表取締役)に、両者が果たすそれぞれの役割と、協業の意義について聞いてみた。

上永吉:人間は単純作業を繰り返していると、それに拘束されている時間そのものがストレスになります。その状況が長く続けば、仕事に対する視野が狭くなって、思考停止状態にもなりかねません。
我々が提供している「SynchRoid」は、企業のバックオフィスにおけるホワイトカラー業務などを代行するRPAソリューションですが、業務の処理手順をソフトウェアロボットに記憶させることで、PC上の単純な事務作業や膨大な書類業務などを自動的に処理することができるようになる。そうすれば時間の創出が図れますよね?RPAは業務効率化と企業の働き方改革に貢献する新たなツールとして、今後ますます需要が高まっていくと思います。
飯沼:僕らは手書き文字を高精度でデータ化する「Tegaki」というAIサービスを提供しているんですが、RPAとAIの親和性は非常に高いと考えています。
例えば人間が物を動かすとき、「掴む」という行為の前に、まずその物体が何であるかを認識しますが、「物を掴んで動かす」のはRPAの領域、その前の「物を知覚する」という行為はAIの領域。ですから、ある事柄を理解して、それをどう処理していくかを考える業務については、RPAとAIの連携はうまく貢献できるわけです。
今まで業務の大半を占めていたルーティンワークを、RPAやAIに代行させることで、長時間労働から解放され、創出された時間で、自身のスキルアップやキャリアアップを図れるようになるわけだ。だが、ちょっと待ってほしい。 巷では「ロボットやAIによって、10年後にはなくなる仕事」というような記事が溢れている。導入に対する不安や抵抗感を示す向きもあるのではないか。
上永吉:これは私がいつも言っていることですが、2005年から25年までの20年間で、東京の人口に匹敵する1,300万人の労働者が65歳を超えていきます。当然、家族も高齢化しますし、ワーク・ライフ・バランスを考えたとき、会社としてはどこでも仕事ができるようなテレワークとか、いろいろなやり方を採り入れていかなくてはならなくなる。ところが、個人情報などを扱うバックオフィスの業務は、セキュリティの問題もあって、固定された場所で決められた時間内にやらなければならない制約があるわけです。それを解決するにはロボットによる自動化しかない。
我々は長年、PC上の作業を繰り返してきましたから、すぐに新しいワークスタイルや仕事場をイメージすることは難しいかもしれません。しかし、どこでも働ける環境が整って、日常業務からの解放を体感できれば、本来、自分が持っている能力を生かせる仕事に意識が向くでしょうし、ひいてはES(従業員満足度)も向上する。そうなれば「今の仕事が奪われる」というような不安感は払拭できると考えています。
ですので、これからのマネジメントの在り方はとても重要であって、従来通り社員に業務を割り当て、ミスが起こらないよう品質管理に専心するのか、それともRPAのような自動化手段を提供して現場主導による業務の自動化を推し進めるのか、マネジメントの采配一つで部下のマインドセットや人材育成の進路を左右するわけですから、重要な岐路に立たされているといっても過言ではないと言えます。

「SynchRoid」と「Tegaki」が目指すもの

ソフトバンクは2017年7月、国内RPA分野のリーディングカンパニーであるRPAホールディングスと業務提携契約を締結。「SynchRoid」は、国内で最も多くの導入実績を持つRPAツール「BizRobo!(ビズロボ)」をベースに、RPAホールディングスと共同開発した独自のRPAソリューションだ。
同年11月からは、法人向けにサポートサービスの提供を開始。すでに社内の業務でRPAを導入しているソフトバンクでは、そのノウハウを生かして、eラーニングや検定試験、ワークショップ形式の研修や開発支援などを行っている。

上永吉:ソフトバンクはデジタルツールをどんどん採り入れていく会社でして、オンリーワンやナンバーワンの企業さまとお付き合いをして、そのツールを社内で浸透させていく文化があります。
「SynchRoid」については、まず社内の働き方改革をしっかりと推進して、人材育成がきちんとできる体制を構築していこうという前提があって、そのためのデジタルツールを自社で開発・導入しました。結果的に、社内の反響が大きかったものですから、「これは売れるのではないか」ということで、RPAホールディングスさんとパートナーシップを結んで、11月の商用化に漕ぎ着けたわけです。
サービス開始を公表してから1ヵ月あまりで、およそ600社の企業さまからお問い合わせがありましたが、そのうち約3割がOCR(光学的文字認識)といわれる領域。手書きの文字や紙に印刷された活字をまずはテキスト化し、次にこれらのテキストをRPAにより社内のシステムへ入力していく、というものでした。そのご要望にお応えするために、飯沼さんのところと協業を図ったというわけです。

一方のコージェントラボは、最先端のAIを活用し、人々の生活の質を高めることを目指して2014年に設立された日本発のスタートアップ企業。2016年にAIを活用した手書き日本語のOCRソリューション「Tegaki」を開発し、現在、その精度は99.22%の認識率を誇る。
2017年8月からは企業向けの提供を開始。業務プロセスを変革し、働き方改革を支援するAIサービスとして、各方面から熱い注目を浴びている。
飯沼:僕らはもともと、AIを使って新しい未来を切り拓こうということで会社を興したのですが、実は2015年の半ばから2016年の頭くらいまで、AIの開発はほとんどやっていませんでした。
当時はちょうど「AI」という言葉がバズワードになり始めた頃で、いろんな業界の方と話をしていると、皆さん、「AIをどう使えばいいのか」ということに意識が向いていて、自社の課題を置き去りにしている傾向がありました。だから僕らは「一旦AIという言葉は忘れて、御社の課題や、何を目指しているのかを教えてください」と。そこから出てきた課題の中で非常に多かったのが「自社にあるデータを活用して、労働生産性や売り上げを伸ばしたい」というものでした。
そこで「そのデータはどこにあるのですか?」と訊くと、ほとんどが手書きの紙データで保管されていることが分かった。これほどAIが注目されて「ビッグデータを活用しよう」という機運が高まっているにも関わらず、日本企業が対応しきれていない要因はそこにあったんですね。
しかも多くの企業が紙データをテキスト化するときは外部企業に委託していて、委託先ではそれを人海戦術で打ち込んでいた。それはテクノロジーで解決できるし、どの企業にとっても絶対に必要なことだと確信して、手書き文字を認識するという開発をスタートさせたわけです。
プロジェクトがスタートしてからわずか2ヵ月半後に98.66%の認識率を確保したというから驚くほかない。「Tegaki」については、既存のテクノロジーをAPIとして使うのではなく、アルゴリズムを独自に開発している。スタッフの8割を外国人が占めるコージェントラボは、量子物理学、統計学、脳科学、機械学習など、各分野のリサーチャーやエンジニアを集めたプロフェッショナル集団だ。
飯沼:日本語ってすごく難しくて、たとえば平仮名の「く」「し」「つ」「て」などはワンストロークで表記するじゃないですか。そういう単純な平仮名や片仮名のほかに、複雑な漢字や英語も混じる。だから日本人の手書き文字を認識するのは非常に難しいのですが、だからこそチャレンジする意味がありますし、それができればインターナショナル化も可能だと考えています。
今の僕らは手書き文字の認識率向上だけにはこだわっていなくて、例えば住民登録の用紙や宅配便の配達伝票、顧客アンケートなどに記入されているチェックボックスや丸囲いなど、さまざまな手書きフォームのあらゆるパーツをすべて読み取るテクノロジーを目標としています。
今後、日本はダイバーシティ化が進んで、外国の方が今より多く日本に住むことになると思うのですが、そうなったときに彼らの住民登録票を母国語のまま読み取れるテクノロジーは絶対に必要になる。
ソフトバンクの「SynchRoid」も今後はグローバルな視点で展開されていくと思うので、僕らも一緒に歩いていけるよう、インターナショナル化にはこだわっていきたいですね。
米ブルームバーグが2016年に発表した機械学習関連企業の業界地図で、数少ない日本企業として取り上げられたコージェントラボのオフィスは代官山にある。一歩、足を踏み入れると、ゆったりとしたスペースにソファが点在し、壁一面がホワイトボードになっている。オフィススタイルはフリーアドレス。各メンバーが自由に議論できる環境が先進的なテクノロジーを生み出す原動力となっているのだろう。

協業から見えてきた今後の課題と展望

ともに2017年に法人向けのサービスを開始し、2018年になってコラボレーションを発表した「SynchRoid」と「Tegaki」。働き方改革を推進する最強タッグが実現したように思えるが、今後はどういう展開を目指しているのか。また解決すべき課題はあるのか。当事者2人はこう締めくくった。
上永吉:まだ始まったばかりのサービスですから、当面はトライ&エラーで実績を蓄積していくしかない。すでに爆発的なご要望をお客さまからいただいているので、それをどう受け止めて、お客さまに刺さるソリューションとして提供できるかがカギでしょう。
電子化が進むことで紙データは減っていくかもしれません。例えば地方自治体や金融機関など、顧客と直接対面する業界は、電子ボードに替わっていくにしても、お客さまに記入してもらうという行為は残ります。また、特に自治体がそうなんですが、過去に蓄積された膨大な手書きの書類がありますから、それらを電子データ化したいというニーズも非常に高い。
まずはそういう業界からご活用いただいて、高齢者にもやさしいインターフェースを提供するなど、実績を積むことで ユーザエクスペリエンスを高めていきたいですね。

飯沼:RPAとAIの連携は、業界別というより、業務別にパッケージ化するべきものじゃないかと考えています。例えば経理業務なら、経理部の方が帳票をチェックした後、交通費ならWebサイトで料金を確認して・・・みたいなことを、どの会社でもやっていますよね。
そういう共通点が業務ヒアリングによって分かってくれば、どの企業でも使えるパッケージを作ることは可能だと思うんですね。
最近、教育関係の方から「最近は教師の業務量が格段に増加している。このシステムを教育現場に導入できれば、先生たちのハードワークが軽減され、その分本来の業務に集中できるのではないか」というご意見を頂戴しました。
今回、コラボレーションを発表したことで、今後もさまざまな声が寄せられると思いますが、我々はニーズに合った商品をただ納品するのではなく、「こうした方 がいい」とか「この認識は間違っているよ」といったお客さまからのフィードバックに真摯に耳を傾けて、常に商品へ磨きをかけていくことが重要だと考えています。
特にAIはそうやって精度が上がっていくわけですから、顧客とパートナーシップを築いて、サービスをよりよいものに育てていきたいですね。
 
取材日 2017年12月8日
関連リンク
 
ソフトバンクのRPAソリューション「SynchRoid」
http://tm.softbank.jp/sme/rpa/
 
コージェントラボ
https://www.cogent.co.jp/ja/
 
Tegaki
https://www.tegaki.ai/
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