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近未来、日本は世界中のどの国も経験したことのないような高齢社会へと変貌していくと言われている。2025年に総人口に対する65歳以上の人口が30%に到達。2060年には約40%に到達するという予測もある。これほどのハイペースで高齢化が進んだ先に、まず大きな問題となるのは労働力の枯渇だ。生産性の高い若年層が減り、定年退職を迎えた高齢者がどんどん増えていく現実。そんな社会構造において、ひとつの効果的な策は、定年退職者の活躍の場を作ること。この取り組みを実践し、既に大きな実績をあげているのが一般社団法人「ディレクトフォース」だ。今年で設立から16年目。その活動の中身について代表理事の真瀬宏司さんに話を聞いていく。

真瀬宏司氏

一般社団法人ディレクトフォース代表理事、日本CIO協会会長。1965年、慶應義塾大学法学部卒業後、日本IBMに入社。取締役流通・サービス産業営業統括本部長、常務取締役東日本支社長などを歴任。04年に日本パソナテック取締役会長に就任。その後、パソナグループの発足に伴いCIO担当常務、パソナ会長を経て、第四代一般社団法人ディレクトフォース代表理事に就任。ディレクトフォースでは企業の役員OB会を組織化し、社会貢献を標榜してベンチャー企業を支援している。

新しいビジネスを次々と芽吹かせた、日本IBMでの経験

かつては、日本IBMで辣腕を振るっていた真瀬さん。若手社員の頃から、やりたいと思ったことは必ず実現してきた。外国人のスタッフが当たり前のように周囲で働いていることも、真瀬さんにとっては好影響を及ぼした。

「外国人と仕事をすることで感じたことはすぐに質問、アピールするという習慣がついていった」

仕事をすればするほど地位が上がっていくという外資系のスタイルも真瀬さんにフィットした。コンピュータ産業の黎明期といっていい時代。仕事の手法にも決まった型がなく、システムを導入するといってもどんなメリットがあるのか顧客にも分からない。
そんな空気を敏感に感じた真瀬さん。ハードウェアの機能やシステムを使うことのメリットを伝える講習を企画し、こうした催しを無料で開催するという試みにチャレンジもした。

「そういう体験を通じて、多くのお客さんたちがシステム導入に興味を持ってくれました。誰もやっていないことに挑戦して、成果を挙げ、評価してもらえるということにとても充実感を感じていたんです」

さらに真瀬さんはこうしたクライアントワークだけではなく、同時に社外での人間関係づくりにも強い興味を覚えた。大企業とのハイテクビルの構築、グローバル展開における戦略策定など。日本IBMに籍を置きながら、未来のコンピュータ社会を見据えた真瀬さんの画期的な取り組みは、社外での人脈づくりや、人材発掘における天賦の才がなければ成し得ない大仕事ばかりだった。

「妙な言い方にはなりますが、大企業の社員でもやっぱりベンチャー志向がないとうまくいかないと思うんですよね。社内のリソースだけではなく、社外にある材料をどう組み合わせて、機能させて、大きな成果にしていくという起業家精神。ゼロからなにかを作り上げていく、ということになにより面白さを感じていたわけです」

こうしていつも何かと何かを結びつけ、新しいビジネスを生み出そうと思案していた真瀬さん。そんな長年の経験で行き着いたのが、「人材の有効活用」によって、まだまだ無限のビジネスが生み出せるというひとつの答えだったという。

経験豊かな企業OBが集結して若い企業を支援
超高齢社会を高齢者が支えられるモデル

「さまざまな有力企業で活躍された方が改めて社会の力となれるよう、南部パソナグループ代表の発案でこの団体は設立されました。あらゆる業界でさまざまな能力、人脈、見識を培ったものの、定年退職や自主的な引退によって自身の力を発揮できなくなってしまっている方は多い。しかも日本はこれから未曾有の高齢社会を迎えます。まだ働ける高齢者にどう活躍してもらうかは、国としても企業としても非常に重要な課題なのです。そこで私たちは一般社団法人ディレクトフォースと、株式会社DFマネジメントの活動を通じ、広く社会に貢献したいと考えました。深い実践的経験、幅広い知見、多様なネットワークを有する人材リソースを土台とし、ベンチャーや小さいけれど有望な団体を力強く支援していくことが私たちの使命です」

もともとは、企業役員のOBを社会で活躍させることなどを目的として設立に至ったディレクトフォース。金融、メーカー、商社、ITなどあらゆる分野で辣腕を振るったベテランたちが600人以上集結。現在はベンチャー企業を中心に250社以上の事業を支援しているという。
支援といってもアプローチは多彩だ。人材を派遣し、事業運営を直接後押しするほか、講義や研修に通じた人材開発、さらには社外取締役や社外監査役など企業のカギとなる人材を紹介するといった業務もこなす。ディレクトフォースでは研究会や交流会を通じ会員の能力向上に務める一方、DFマネジメントは外部企業との橋渡しを事業とする役割分担。こうした取り組みが多くの企業にとって大きな助けとなっている。長年IBMで働いてきた真瀬さん自身、企業OBの持つポテンシャルを実感しているという。

「若く有望な企業にはアイデアや技術力があるかもしれません。でも事業を拡大し、成功させるためには当然ながら営業力、応用力、そのための人脈や資金が必要です。こうした場面で私たちの力が生きてくるのです。例えばひとつの企業から相談を受けて課題を認識した時、全く異なる業界のある企業を結びつけるというアイデアが生まれることもあります。あるいはひとつのモノを売ろうとする時、販路拡大においてはあの企業のスキームを利用すればいいのではというアイデアが出てくることもあるでしょう。私たちはそのような形で社会の役に立ちたいのです。また、このような気持ちを持つ企業OBの方にとって有力な受け皿となりたい。私たちのような団体が増えていくことが、高齢社会を乗り切るためのひとつの解決策となり得ると考えています」

企業OBの総合力をさらに高め、若い力も積極採用
幅広いコンサルティングで若い企業に成長力を

ディレクトフォースの会員に求める条件はただひとつ。自分が稼ぐためではなく、社会に貢献しようという気持ちを優先させること。そのような人材を集め、互いに支え合う関係を多くの企業とともに築くことが理想だと真瀬さんは熱く語る。

「何かを作って、どこかへ売るというのがビジネスですが、自社の強みを理解していないことから売るべきものが何か分かっていない若い企業が意外に多いと感じます。そんなケースにおいても私たちの団体は十分に力を発揮しています。事業そのものや事業計画を客観視する力は、多くの経験を積んだベテランの社会人に一日の長があるんですよ」

 今後は若い企業がどんな力を必要としているかについて一層研究を深め、そこで起きうる課題を解決できる人材を積極的に集めていきたいと語る真瀬さん。ディレクトフォースの会員構成は企業OBを軸としているが、若い現役の参画も視野に入れ、総合的なコンサルティング能力を高めていきたいと説明する。

「この分野は強いが、この分野には疎いということではビジネスを支援する団体として不十分だと考えています。また、事業計画立案、営業支援、資金繰りなど、ビジネスのさまざまなフェーズにきちんと対応できるよう、各分野のエキスパートを揃えることが肝要です。こうした強力なチームを形成する上で、若い力はやっぱり欠かせません。私たちが求めるエキスパートは65歳以上でなければいけないということではなく、知識や経験を共にし企業の成長を後押しできる志が大切なのです。若手会員の活躍にも期待しています」

教育現場でも現役時代の知見は活きる!
世代を超えてつなぐ、社会貢献への想い

理科実験による社会貢献活動にも力を入れている。
事業領域が若い企業の支援にとどまらない点もディレクトフォースのユニークな側面だ。たとえば複数ある部会のひとつ、教育部会ではこんな取り組みを行っている。

「教育部会には理科実験グループ、授業支援の会という2つのグループがあって、前者は各所の要請にもとづいて、理科実験を現地で行う”出前授業”を実施しています。核となっているのは最先端の企業でものづくりの知見を得た会員。彼らが経験と基礎理論をもとに、小中学生の理科への興味を高めるといった活動を行っています。このように現役時代に十分な経験を積んだ人が、何のために勉強するのか、知識がどう社会に生かされるのかを子供たちに教えていくのは非常に重要なこと。これは私たちのような団体だからこそできる社会貢献だと自負しています」

かつてIBMでは情報システム関連の事業領域に関わっていたという真瀬さん。多くの企業から相談を受けるなかで、点と点を1つの線につなげる幅広い知見を持った人間の重要性を痛感していたという。
「例えば工場系と営業系でコンピュータの連携が取れていないという企業を多く見てきました。それが原因で事業がうまく連携できない、会社全体として機能不全に陥ってしまうという事例も少なくありませんでした。そんな経験を通じて、外部から客観的に事業を見つめる重要性や、縦軸でなく横軸で事業をつなげられる人材育成の必要性を痛感していたんです。現在、私たちの強みは幅広い事業領域における豊富な経験と多様なモノの見方。こうした力によって、あらゆる事業における幸福なマッチングを実現できればと考えています」
観光立国研究会の活動内容をまとめた書籍。
登山や写真など同好会によるメンバーどうしの交流も盛ん。
手前の写真は真瀬氏の作品。
企業OBが若手企業の課題を手助けし、共に成長する。「これまでに培ってきた知識や経験を生かせれば、日本社会はもっと元気になる。是非ディレクトフォースの活動に賛同いただけたら幸いです!」と語る真瀬さん。定年を過ぎてもまだまだ活躍できると思える社会の実現に向け、今後の動向に期待が高まる。

(取材・文 : 宇都宮ミゲル、写真 : 小山幸彦)
一般社団法人ディレクトフォース
http://www.directforce.org/
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