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ソフトバンクは2018年5月、「5G×IoT Studio」お台場ラボをオープンした。まだ一般には提供されていない5Gに触れられる機会が少ない中、5GとIoTの組み合わせによる新ビジネス創出を狙う企業に対し、トライアル環境を提供する。いわば、戦略的次世代ビジネスの創出基地。

このラボを統括するソフトバンクの湧川隆次氏の元を訪れたのは、テックショップジャパン社長の有坂庄一氏。TechShopはアメリカ発祥の会員制DIY工房で、有坂氏はサンフランシスコから本場のノウハウを持ち帰り、アジア第1号店となる「TechShop Tokyo」を日本で立ち上げた。東京発のオープンなエコシステムによるイノベーション拠点として、そのコミュ二ティのハブとしての役割も果たしている。

最新テクノロジーとデジタルものづくりの融合によって生まれた共創を、数多く目の当たりにしてきた有坂氏。そしてモバイル通信の研究者でもあり、5Gの技術ポテンシャルに精通する湧川氏。5G×IoT Studioで起きる化学反応が、近未来に何をもたらすのかを語り合った。

先端技術開発本部本部長 IoT事業推進本部副本部長
2004年、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程を修了。ソフトバンクでは、先端技術開発本部を率いる。5Gを筆頭に先端技術の研究開発および事業化に携わる。主な著書に「モバイルIP教科書」や「ITの正体」がある。
代表取締役社長
成蹊大学法学部法律学科卒業後、1998年に富士通入社、ICTシステムの海外向けマーケティングを担当。2015年10月、テックショップジャパンの代表取締役社長に就任。多くの人が創造 力をカタチにする社会を目指し、2016年4月に東京都港区で “TechShop Tokyo” をオープン。「全てのアイデアは良いアイデアで、試す価値がある」

5Gはどこまでの爆発力があるか計り知れない

有坂:私は、デジタルものづくりを活用したオープンイノベーションの場を提供するビジネスを手がけていますが、最近IoTを意識した製品・サービスを手がけるお客様が非常に増えています。
その意味で、今回の「5G×IoT Studio」は非常に興味深く思っていますので、今日はいろいろ教えてほしくて。最初にお聞きしたいんですけど、このスタジオを開設した目的を教えてください。

湧川:5Gは2020年ころのサービス提供開始を目指しており、特徴として「高速・大容量」「低遅延・超高信頼」「多数同時接続」の3つが挙げられます。
通信速度は、LTEの約10倍。これまでとは桁が違う速さを得られます。通信速度が変わったとき、私たちの生活やビジネスは大きく変化しましたよね。

写真が送れるようになったと思えば動画をスマホでサクサク見られるようになったり。Webアプリの動きが軽快になったり、場所を問わずオフィスと同じ環境で仕事ができるようになったり。
スマートフォンの可能性を大きく広げたのは、本体の進化以上にLTEの登場が大きかったように感じます。動画や音楽のストリーミングが当然となり、実用レベルのビデオチャットも実現しました。あのとき、サービス提供者はLTEで何ができるのか、必死に頭をひねったはずです。

5Gはこれまでの速度とはレベルが違いますから、これまで以上に大きな変化を生む可能性があり、企業側にとっては大きなビジネスチャンスを得られるはずです。
というのも、5G前夜のこのタイミングで、IoTを具現化するソリューションが続々と登場してきた。あらゆるものがネットワークにつながるIoTは、5Gと同様に社会や暮らし、ビジネスを大きく変化させる潜在能力を秘めています。

IoT関連のサービスを生み出そうとすればネットワークを常に意識する必要がありますから、5GとIoTはとても相性がいいんです。
経験したことがない次世代ネットワークが、どんなビジネスを生み出すか、正直に言って、私にもわかりません。通信キャリアだけが考えてもなかなか出てくるものではないんです。だから、5GやIoTでビジネスを創りたいと考えている方々に参加してもらって、アイデアを出し合い、可能性や課題を見つけていく場所を作りたかったんです。
< ソフトバンクの「5G x IoT」 >
有坂:確かに、どんなビジネスが生まれるかわからないほどの可能性を私も感じています。TechShop Tokyoに訪れるお客様にもIoT関連のプロダクトを考案している人は非常に増えているんです。新たなビジネスの芽として、わからない中でもどんな可能性があると見ていますか。

湧川:一例をあげれば、アイデアはあっても通信速度がネックだったのが自律制御の分野です。現時点での自動運転やロボット制御は、データのやりとりはするものの、反応速度が遅いという課題から制御そのものはスタンドアロンにせざるを得ません。
これが、「高速・大容量」「低遅延・超高信頼」を併せ持った5Gによって、解消できる可能性があります。産業用ロボットや自動運転車だけでなく、Pepperのようなコミュニケーションロボットも進化するでしょうね。
有坂:ここにPepperと手の動きを5Gを介して共有できるハプティクス(触覚技術)のデモがありますが、これなどまさに可能性を感じました。たとえば医療現場で、遠隔地からロボットを通じて間接的に患者の患部に触れたり、もっと高度化すれば遠隔手術だってできるようになったりしそうな気がします。

湧川:触覚技術では、ソフトバンクは慶應義塾大学と共同研究を行っていて、まだコンセプト段階ではありますが、有坂さんの言う通り、5Gの実力を発揮できる分野だと感じています。

人間の感覚は、視覚とズレが生じると認識しなくなることがわかっていて、20ミリ秒が限界とされています。5Gは5ミリ秒を実現しますので、違和感なく遠隔操作が可能になります。
湧川:ただ、ネットワークの課題をクリアしても、デバイス側の開発が追いついていないのが現実なんです。これは、ロボットに限った話ではなく、あらゆる分野で同じ状況。ネットワークだけでなく、その周辺デバイスまでも含めて考えないと、5Gは意味がありません。

だからこそ、「5G×IoT Studio」なんです。私たちだけでなく、ハードベンダー、ソフトベンダー、システムインテグレーターなどさまざまな業態が混じり合って知恵を出してこそ5Gを生かした一つのソリューションが出来上がると思っています。

「通信>コンピューター」。速度の逆転現象が常識をひっくり返す

有坂:ネットワークの提供だけでなく、トータルコーディネートに取り組む必要があるということですね。一方で、現時点で感じている課題は何ですか。

湧川:これまでは通信速度がコンピューターの処理速度より遅いのが常識でしたが、5Gの登場はこの前提を覆します。
大量のデータを瞬時に流せるようになりますから、重い処理はサーバーに任せてしまって、デバイス側は入力と結果表示だけの役割で済むので、例えば3D CADを現場のタブレットで自在に動かすことも可能になるでしょう。
そうすると、ハードウェアスペックによる制約がなくなり、ソフトウェアで実現できる範囲が広がるため、アイデアを具現化できる余地もより大きくなります。
ただ、技術面で考えると扱えるデータ量が膨大になるので、サーバーサイドの負荷が集中することも懸念されます。エッジコンピューティングによる分散処理や省電力化への取り組み、そこで効率的に動くソフトウェアと、新たに生じる課題は少なくないはずです。

有坂:せっかくの通信スピードをエンジョイできないのは残念。ハード、ソフト、ネットワークの処理能力を見極めた上で、これまでのアーキテクチャを根本から見直す必要が出てくるということですね。

湧川:最適な形はまだない状況なので、最初に成功したら先行者利益を総取りできる可能性があります。

有坂:ビジネスモデルを一気にひっくり返すチャンスが登場するかもしれませんが、技術ハードルは高そうです。

湧川:だからこそ、2020年に始めたのでは遅いんです。今からお客様のニーズを知り、それに合わせてトライしておく必要があるんです。ソフトバンクとしても、まだ完成形のインフラが出来上がっているわけではなく、5Gを使いこなすのに最適な形を探っているところ。5Gは標準化技術に過ぎないので、それをサービスにまで昇華させることが大事です。

共創はあくまで結果的に生まれるもの

湧川:私も質問させてください。有坂さんは自由なものづくりと共創の場としてTechShop Tokyoを運営されています。ドリルなどが置いてあるのを見ると、トラディショナルなものづくりというイメージを受けるのですが、さきほど、IoT関連に興味があるお客様も増えてきたとおっしゃっていました。ネットワークの充実によって、ものづくりの志向に変化は見られますか。

有坂:“ガチのものづくり” だと思われがちですが、TechShop Tokyoがいちばん重きを置いているミッションは、クリエイティビティを形にすることであり、アウトプットはなんでもいいんです。実際には3~4割がIoTのような通信が絡んだモノです。今後、その比率は確実に上がっていくでしょう。
有坂:TechShop Tokyo。さまざまな人が設備や機材、そしてコラボレーションを求めて訪れる。
先ほど、3D CADがどこでも使えるようになる話がありましたが、みんながこれをやりだしたら、日本全体が面白いことになりますよ。数年前、3Dプリンタが一気に盛り上がりましたよね。使うにはCADが不可欠ですが、やはり習得するのにはハードルが高い。
この残念なギャップを解消するために、例えばAIが3Dデータを自動でモデリングしてくれるなどして誰もが作れるような世の中にならないかなと、この2年ぐらい考えていたのですが、デモに触れて「5Gならできるようになる」という実感を得ることができました。
さらには、アイデアをカタチにするツールも5G、インスピレーションをどう増やすかも5G。5Gによって支援できるツールが増やせるんじゃないですか。
湧川: TechShopとコラボレーションできそうな気がしますね。ものづくりからIoTや5Gの世界に、またその逆もあって、交流すると化学反応が起きそうな予感が勝手ながらあります(笑)。
現在、5Gを使える場所は限られていて、このラボは外部に電波を漏らさないシールドルームがあり、それによって利用できるんです。手前みそですが、貴重な施設です(笑)。24時間、自由に5G通信を使った実験が可能な場所なので、ぜひ使ってください!

有坂:今、TechShop Tokyoには1000人ほどの会員がいて、自分が面白いと思うモノを作りたい人が集まっていますので、新しい発想のネタとして5Gの可能性を提案してみるのもアリですね。
湧川:このラボでは、テクノロジーや情報、ソフトバンクの知見を提供することに力を尽くしますが、それと同時に化学反応が起きそうな企業と企業の橋渡し役を担っていきたいと思っています。
まだ5Gは始まっていませんが、そんな今だからこそ、今からその可能性を探る価値がある。このインフラをどれだけ理解して未来のビジネスに生かすのか、今の段階で考えている人は強い。そうした野心的な人たち(笑)を私たちがこの場でつなぎ合わせていければと考えています。
■本記事はNewsPicks Brand Designの制作のもと、2018年6月28日にNewsPicks上に掲載されたものです。
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