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IoT(Internet of Things)とテレマティクスのビジネス活用は多岐に渡る。日本でも注目が集まる中、海外ではどのような動きが進展しているのか。

IoT・テレマティクスのリーディングカンパニーであるAeris(エアリス)CMO Raj Kanaya氏と、三菱自動車工業 商品戦略本部 コネクティッド インフォメーション ビジネス部 担当部長 坂本康弘氏の2人の識者に最新の海外IoT・テレマティクスサービスのトレンドと先進的な事例について聞いた。

自動車を中心に拡大するIoT、テレマティクス市場

テレマティクスとは、移動体に通信システムを組み込み、さまざまなサービスを提供することを指す。近年ではインターネットに常時接続したデバイスがリアルタイムにデータを収集できるようになり、従来よりも高度なIoT活用が存在感を増している。
平成29年版 情報通信白書によれば、インターネットに接続するデバイスはすでに200億台を超えていると言われており、今後もさらに増加する見通しだ。台数増加の要因は、PCやスマートフォンだけでなく、自動車、医療機器、産業機械といった新しいデバイスにある。

IoTデバイスがビジネスに及ぼす影響は大きい。Kanaya氏は「IoT市場で成長が期待されている業種は、製造業、ヘルスケア、小売業。製造業の中でも、特に成長が期待されているIoTの市場セグメントが自動車産業です」と述べ、自動車関連市場におけるIoTサービスの代表例として「コネクティッドカー」「フリートマネジメント」「ライドシェア」「保険」を挙げた。

エアリス社による海外の先進IoT事例

Kanaya氏がCMOを務める米エアリスは、サンノゼを本拠地とするテクノロジーベンダーであり、10年以上に及ぶ企業支援の実績を持つIoT/テレマティクステクノロジーのパイオニアだ。同社はIoTサービスプラットフォームの提供をビジネスの中核としており、国内では、2016年からソフトバンクとの共同出資により設立したAeris Japanが事業を展開している。エアリスは、これまで約500社のIoTサービスの実現を支援してきた実績を持つ。
Kanaya氏は約500の実績の中から自動車産業を含む海外の先進事例を4つ紹介してくれた。
【 事例1 】ドライバー体験を向上させるコネクティッドカープログラム「Mitsubishi Connect」
現在の日本では、消費者が新車の購入にあたり、コネクティッドであることを重視する状況ではない。だが、海外では事情が違い、コネクティッドカーは完成車メーカーやディーラーにとって競争力の源泉になりつつある。

エアリスは、三菱自動車として初となるコネクティッドカープログラム「Mitsubishi Connect」のシステム実装を支援し、2018年1月から販売を開始したコンパクトSUV「エクリプスクロス」の北米仕様に搭載されている。今回の取材で同席した三菱自動車工業の坂本康弘氏が紹介した「Mitsubishi Connect」の利用シーンは次のようなものだ。
坂本:「Mitsubishi Connectは技術により自動車があらゆるものとつながっていく世界を目指しています。スマートフォンと連携し、運転中でもアプリを安全・快適に利用できるスマートフォンリンクディスプレイオーディオを搭載しているほか、車の衝突や盗難を検知すると自動でコールセンターとつながり、ドライバーの安全をサポートするセーフガードサービス。そしてスマートフォンを利用してドアの鍵の開閉や、車内温度の確認、エアコンの操作を遠隔でできるリモートサービスを提供しています。リモートサービスは、スマートフォンだけでなく、Amazon EchoやGoogle Homeからも利用することができます。三菱自動車工業では、この他にもドライバー体験の向上につながる新しいサービスを提供し、最終的にそのクルマのオーナーであることを誇りに思うような顧客との関係構築を目指しています」
また坂本氏は同サービスから生まれる新たな市場についても言及した。

坂本:「コネクティッドカーというと自動運転を想起する人が多いですが、コネクティッドカーはひとつのソリューションに過ぎません。コネクティッドカーはこれまでにないまったく新しい価値を消費者に提供できる可能性を秘めています。自動車メーカー各社はその新しいビジネスモデルを見つけようとしている段階なのです。
例えば毎日決まった時間に特定の車がコンビニエンスストアの前を通るとします。コンビニエンスストアは車が通ったその瞬間に、クーポンを発行するということも技術的には可能です。私たちがさまざまな産業と提携すれば、まだ見ぬまったく新しい市場を生み出せる可能性があるのです」
【 事例2 】テレマティクスによるフリートマネジメントでトラックの労働時間や運行計画を管理
企業向けのIoTサービスの代表例がフリートマネジメント、つまり車両管理である。通常、事業資産として保有している車両台数が多いほど、購入費用に加えて定期点検などの保守費用がかさむ。米国では、整備費用の平準化や点検業務の軽減を自社単独で行うのではなく、専門のソリューションプロバイダーに管理業務をまとめてアウトソースするケースが多い。その最新のソリューションには、車両追跡にテレマティクスが活用されている。
Kanaya氏によれば、米国では罰則付きのドライバーの労働時間上限規制があり、事業者は運転時間の監視義務を負うのだという。長距離移動の多いトラックの運行情報をモニタリングするにあたり、テレマティクスは必須となる。
エアリスは、業務用トラックのフリートマネジメント領域で豊富な実績を持つ。FleetUp(フリートアップ)もその中の1社であり、多くの物流会社などにソリューションを提供している企業だ。同社は、ドライバーの労働時間規制対応に加え、ジオフェンシング技術を使った車両の追跡、走行履歴、燃料、ドライバーの行動履歴などのデータを駆使した予防保守など、総保有コストの低減を実現するソリューションを探しており、エアリスをパートナーとして選んだ。
【 事例3 】患者の服薬指導を支援するIoTサービス
薬の飲み忘れや飲み過ぎは、医療機関、患者とその家族にとって大きな問題である。スウェーデンに本拠地を置くMevia(メビア)は、服薬指導支援のIoTサービスを提供している企業だ。リアルタイムに適切な時間に患者に服薬を促すため、インターネットに接続したピルケースやピルディスペンサーを提供している。患者が処方された薬を決められた時間に服用すると、かかりつけの医療機関に服薬フィードバック情報が送られる。医療機関は、患者が世界中のどこにいても服薬指導を行うことができ、患者自身の生活品質の向上につながるのだ。エアリスは、メビアのソリューション提供実現を支援した。
【 事例4 】通信環境の悪い地域でのデバイスのリモート監視
英BBOXX(ビーボックス)は、発展途上国向けに小型家電製品用の電力を供給するためのバッテリーボックスを提供しているスタートアップ企業だ。同社は、ユーザーがバッテリーをできるだけ長く使えるよう、遠隔地にあるデバイスの問題を早期に特定し、顧客サービスエージェントに送る仕組みを作ろうとした。そのためには、ローカルの通信事業者のサービスには限界があったが、エアリスは、ビーボックスの事業エリアである東アジアと中央アフリカで信頼性が高い通信を提供し、データのリアルタイム収集を可能にした。
IoTサービスは今後さらに充実していくことが予想され、今はないまったく新しいサービスが生まれる余地も大きい。自動車産業に限らず、今後10年に向けて、あらゆる業種の企業がIoT戦略を進めていくことになる見通しだ。

日本のIoTの現状と今後

エアリス・ジャパンのCEOでもあるKanaya氏は日本のIoTについて次のように語る。

Kanaya:「日本のIoTサービスの事例が少ないとしたら、2つの阻害要因があります。ひとつは、まだ日本では新しい分野であるためビジネス計画の策定が難しいこと。不確実性が大きく、ハードウェアや新しいチームの組成など多額の投資に対して、どのようにコスト削減や顧客満足度向上につながり、最終的に収益を上げるのか、証明しなければなりません。もうひとつはテクノロジーの選択肢が多すぎることです。ハードウェア、ネットワーク、コネクティビティ、アプリケーションごとに最適なものを選ばなければなりません。エアリスジャパンは、PoC(Proof of Concept)の段階からコンサルティングを行い、日本の企業の悩みに応えることができます」
三菱自動車工業の坂本氏は、エアリスをパートナーに選定した理由として、テレマティクスに限らず総合的なIoTサービスプロバイダーとしての実績があると語る。

坂本:「私たちはコネクティッドカーの領域において、マーケットリーダーではありませんでした。だからこそ、どこのサービスプロバイダーとパートナーシップを組むかが重要だったのです。私たちは競合他社に対して明確な差別化をする必要がありました。既存のいわゆるテレマティクスサービスプロバイダーも検討しましたが、そのいずれもがコンサバティブに感じられたのです。それに対してエアリスはシリコンバレーを拠点とする、もっとも先進的なIoTサービスプロバイダーであり、テレマティクスに限らず、総合的なIoTサービスを提供できる企業でした。それが、エアリスをパートナーに選んだ理由のひとつです」


最後にkanaya氏は今後のエアリスジャパンの展開について、次のように締めくくった。

Kanaya:「エアリスが欧州や米国でサービスを展開する際は、AT&TやVodafoneなどのネットワークパートナーのほか、私たちのサービスと市場をつなげる戦略パートナーがいます。ただこの日本での展開においては、ソフトバンクがネットワークパートナーであり戦略パートナーの役割も果たしてくれます。つまり、私たちが直接提供しないのはハードウェアのみなのです。三菱自動車の例のように、ハードウェアのパートナーは私たちにとって非常に重要です。今後はさまざまなハードウェアパートナーと協調し、日本でのビジネスを拡大していくつもりです」
■後記
エアリスジャパン(ソフトバンクと米エアリス社による合弁会社)について

今後、エアリスとソフトバンクは、両社が持つIoT分野における高度なテクノロジーやビジネス基盤をベースに、さらに多様化、高度化する企業のIoTの利活用ニーズに対応したサービスを共同開発し、合弁会社であるエアリスジャパンを通して主に日本の企業向けに提供していく予定だ。
そして、産業や社会のIoT化を今後下支えするのが、実用化が目前に迫っている5G(第5世代移動通信システム)である。IoTのサービスコンテンツと、「高速大容量」「低遅延」「同時他接続」が可能な5G環境が揃うとき、私たちの暮らしとビジネスは変革の時を迎える可能性がある。あらゆるものと情報がネットワークでつながる日は、すぐそこまで来ている。

(2018年6月7日取材)

【お知らせ】
SoftBank World 2018の展示ブースにて、エアリス社の展示がございますのでぜひ足をお運びください。
7月19日、20日 10:00~19:00
■関連リンク
ソフトバンク プレスリリース
ソフトバンクと米Aeris社、IoTやテレマティクスのサービスプラットフォームを提供する合弁会社を設立
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20160714_01/
 
Aeris Japanに関するお問い合わせ
https://info.aeris.com/aeris-softbankworld-release
 
Aeris Communications, Inc.
https://www.aeris.com/
 
MITSUBISHI CONNECT
http://mitsubishi-connect.com/jp/SafeguardRemote/

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