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アリババ グループは、現在 世界で最も人口の多い国である中国で成功を収め、2017年度では流通総額で7,680億ドル とグローバルの小売業において圧倒的No.1の地位を築いている。その基盤を支えているのが「Alibaba Cloud(アリババクラウド)」だ。

Alibaba Cloudは、2016年末の日本におけるサービス開始以降、日本国内でも徐々に認知を拡大している。本記事ではSBクラウドのソリューションアーキテクトである奥山朋氏に話を伺い、Alibaba Cloudの現在と今後について考察していく。

SBクラウド株式会社
技術統括部 技術部 部長 奥山 朋 氏

日本進出から2年。他社パブリッククラウドと遜色ないサービスラインナップへ

2016年にアリババグループとソフトバンクの合弁会社として、SBクラウド株式会社が設立され、日本でAlibaba Cloudの提供を開始した。当初のサービスは、パブリッククラウドとしては一般的な「仮想サーバ」や「オブジェクトストレージ」など限定的なものだった。

しかし、SBクラウド内に設けられたAlibaba Cloudの国内ローンチを推進するチームにより、プロダクトが充実。中国や英語圏でしか使用できなかったプロダクトが日本国内でも展開され、標準的なIaaSからSaaS、PaaSとして活用され始めている。

2018年7月時点では、ECSにビッグデータやデータ分析のプロダクトも加わり、他社パブリッククラウドと比較しても遜色のないラインナップになった。今後は、Taobaoのアプリなどで使用されている、「Image Search*」などAIやIoTに関わるプロダクトの国内展開にも力を入れていく。
 
これまでは中国でのプロダクトをリリースした後、日本で同じプロダクトがリリースされるまでタイムラグがあったが、2018年内には、日本を含め世界中で中国と同タイミングで新しいプロダクトをリリースできる状態を目指す。これに伴い、Alibaba Cloudを導入する企業にも変化が生じた。中国に支社を持つ、もしくは中国展開を考える企業群から、Alibaba Cloudのプロダクトやソリューション自体に魅力を感じた企業群への変化だ。
* Image Search・・・AIを活用した画像検索。数百万点に及ぶ商品から、対象となる画像と近い商品の検索などを可能にするプロダクト。

世界最大のモバイルコマース企業であり、フィンテック企業でもある「アリババグループ」の基盤を支える、Alibaba Cloudの凄み

日本国内でAlibaba Cloudの認知が拡大し、マーケットでの存在感を増していく中、その強みをSBクラウドの奥山氏はこう話す。

奥山:Alibaba Cloudには3つの強みがあります。ひとつは、中国のブラック・フライデーとも呼ばれ、同国のネット通販における最大の商戦日である  『独身の日』に記録した、1秒あたり約25万件の決済処理をさばけるほどのスケーラビリティ。もうひとつは、世界最大の金融サービス「Alipay(アリペイ)」を支える堅ろうなセキュリティ。最後は、中国や英語圏でこれまでにアリババグループが蓄積してきた、さまざまな業種や業界でのユースケースやインフラ構築のノウハウです。
奥山氏の話すスケーラビリティとは、処理能力の最高到達地点だ。Alibaba Cloudは、日に数件を処理するようなスモールスタートから、1日で約2.9兆円の流通額を記録するECの決済処理を行うまでのスケーラビリティを誇る。
また、セキュリティ面においても、1日に1,000回を超えるDDoS攻撃や、2億回を超えるパスワードクラックにも耐える堅ろう性を持っている。これらは、サーバ構築の技術の高さと、後発のパブリッククラウドであるがゆえの利用するハードの新しさに由来する。結果的には他社パブリッククラウドと比較した際に、同等のスペックの機能を安価に提供できるというコストメリットにもつながっているのだ。

ここに、世界一人口の多い国である中国でトップシェアを獲得している、Alibaba Cloudの凄みがある。
 加えて、世界トップの流通規模をもつアリババグループ自体で培ったノウハウ、中国国内のパブリッククラウドで47%を超えるマーケットシェア率から生まれた多彩な業界でのユースケースを、日本市場にも提供していくのだ。

奥山:現在SBクラウドでは、  Alibabaが中国で培った知見をスピーディに、より詳しく日本にも展開しようとしています。Alibaba Cloudのビッグデータを活用した、生鮮食品スーパーマーケット『盒馬鮮生(ファーマーションシェン)』の事例など、中国でのノウハウは日本でも応用できるものかもしれません。並行して、アリババでは最新技術の研究も進んでいます。量子コンピューティングやブロックチェーンの基礎研究に1.5兆円の投資を行っているのです。
盒馬鮮生のAlibaba Cloudの活用事例では、ビッグデータをもとにスーパーの属する商圏内の生鮮食品の需要を予測。予測結果を基に、スーパーに陳列する商品在庫を決定し、売れ筋以外の商品はオンライン販売に切り替えている。
 
また、店内では顔認証による顧客データと紐づけたリアルタイムでのクーポン広告配信やQRコードおよび顔認証によるスピーディな決済。配達においてはAIが担当ドライバーへの荷物の割り振りとルートの算出を行うことで短時間での配送を可能にするなど、Alibaba Cloudをベースとしてさまざまな先端事例が生まれている。
 
これらのユースケースや基礎研究から生まれるノウハウは、今後さらにAlibaba Cloudの強みとなっていくだろう。

パブリッククラウドの提供は、あくまで“部品”。目指すのは利用者に価値を提供すること

Alibaba Cloudでは、小売・製造・物流など産業単位で領域を区切り、それぞれの産業を再定義していくことを目指している。そのいくつかの産業のなかで、現在SBクラウドが日本展開において注力しているのが、先の盒馬鮮生の事例に代表される「ニューリテール」と定義される小売産業領域だ。

奥山:日本国内で大手と呼ばれる小売企業の流通額の大部分はいまだオフラインです。そして、“購入”というひとつのアクションがオフラインとオンラインで別々に提供されてきました。これをオムニチャネル化し、お客さまである消費者から見ても最適で、品質の高いものに変え小売を再定義する。例えば、オンラインデータを解析し、オフラインでの商品の陳列や、在庫管理に活用すること。これも『ニューリテール』へのアプローチの1つです。
パブリッククラウドのプロバイダーとして、プロダクトの機能を担保するだけでなく、Alibaba Cloudを活用し経営の改善まで見据えたソリューションの提案が進んでいる。

奥山:国内大手食品メーカに対してのソリューション提供など、大手企業との取り組みも複数進んでいます。食品メーカの事例では活用しきれていなかった膨大なPOSデータを、Alibaba Cloudの分析プロダクト『DataV』により可視化し、さらには、経営への活用まで見据えて行ったワンストップのソリューション提案を行い、評価を得ました。

奥山氏は最後にこう結んだ。
 
奥山:パブリッククラウドはあくまで部品にしか過ぎません。それを使って何ができるか、あるいは、その基盤に他のテクノロジーを掛け合わせることで業務改善や売上向上などクライアントに価値を提供できるか。それが私たちの一番大切にしていることです。

テクノロジーは“国”を意識せず広がっていき、私たちのビジネスや生活を社会構造自体から変えていく。
 中国での経験に裏打ちされた、Alibaba Cloudの技術力や堅ろう性、そしてノウハウ。そしてソフトバンクのテクノロジーや戦略。この2つを掛け合わせて展開される日本国内のAlibaba Cloudは、テクノロジーによる社会構造の変革を目指す。よりよいビジネスや暮らしやすい世界を作るために――。


取材日 2018年6月13日
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