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株式会社ヘッドウォータースと品川女子学院のコラボ企画として行われた、「Pepperアプリ開発講義」。女子生徒がPepperアプリの開発体験をするというユニークな授業は数々のメディアに取り上げられ話題となったが、その裏側を伝える記事は少ない。そこで、プロジェクトの始まりから、苦労を乗り越え成功へとたどり着いたコラボ企画の裏側に迫った。

株式会社ヘッドウォータース(以下、ヘッドウォータース)はシステム開発会社として、創業10年でさまざまな開発を手掛けてきた。近年ではソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」を中心に独自に開発したロボットアプリの提供を行っており、国内でも有数の開発実績とノウハウを有している。また、コミュニケーションロボットのさらなる有効活用場面を創造するため、AIを用いたクラウドロボティクスの開発にも注力している。

「生徒たちの思い出に残る授業を作りだす」ミッションへの挑戦

全ては一本の電話から始まった。東京都品川区にある品川女子学院で特別講義をしてほしいという依頼を受けた、ヘッドウォータースの責任者である塩澤 正則 氏(人とロボット事業部 事業部長)は当時を振り返る。

塩澤 :私たちヘッドウォータースはPepperの発売に合わせていち早くアプリ開発に取り組んでおり、これからより一層ロボアプリビジネスに力を入れていこうと奮起するタイミングで話が舞い込んできました。

「品川女子学院で講義をしてみないか?」

この一報はある企業の方からいただいたのですが、話を聞くと品川女子学院は情報教育に力を入れており、IT企業の担当者を特別講師に招いて授業を行っているそうで、その講師として私たちに白羽の矢が立ったのです。普段は、企業の開発案件をすることがほとんどだったため学校の案件は意外でした。しかし、Pepperアプリ開発の仕事はこれから確実に需要が増していく領域。私たちも今後に向けて何か新しい大人では考えられないようなアイデアが得られるのではないかと考え、品川女子学院とご一緒させていただくことになりました。

- 連絡をもらった瞬間の正直な感想は?
塩澤 :最初はやはり驚きましたね。「えっ、学校?」という感じでした。私たちは企業とお付き合いすることが普通なので、学校と仕事をすることは驚きもある反面、新鮮でもありました。その後のことも含め、今でもとても印象に残っていますね。
企業と組んでアプリ開発に注力していこうとしていた矢先、突如想定もしていなかった学校から特別講義の話が舞い込んだヘッドウォータース。普段のビジネスでは接することがほとんどない学校を相手に、何をすれば良いのか社内で議論を重ねたという。

塩澤 :私たちが講義で何を教えられるか検討をしましたが、最後はやはり「ロボットで新しい試みをしてみたい」という結論に至りました。品川女子学院は情報教育に力を入れているので、教育の一環としてロボティクスをテーマとし、Pepperに触れることができる講義を通じてICTに興味を持っていただこうと考えました。幸い、私たちの手元には当時、Pepperのデベロッパーモデルと一般販売モデルの2台があったので、実際に触ってもらえる機会を設けることができました。
- 企画自体への自信はあったのですか?
塩澤 :企画の草案段階では、学校側がどんなリアクションをしてくれるのか正直不安なところはありました。また、講義内容の詳細はこれから詰めていく段階だったので、どんな流れにしていけば良いかの悩みもありましたね。
企画の枠組みを決め、学校との打ち合わせに臨んだヘッドウォータース。普段、学校にビジネスで行くことのない同社が知った企業との違い、そして企画はどのように受け入れられたのだろうか。

塩澤 :初めに学校の情報教育を担当している先生と打ち合わせをしました。私たちのようなIT企業の会社員と学校の先生では、考え方や優先順位も異なり、話の1つひとつが新鮮で面白かったのを覚えています。例えば、学校ではカリキュラムに合わせ生徒の負担にならないスケジュールを組んで話を進める必要があるという説明をされました。普段の仕事では発注された事柄の納期に合わせて社員が動いていることを考えると新鮮でした。企画に関しては「品川女子学院は中高が一緒で幅広い年齢層がいるため、特に若い世代が喜ぶでしょう」という返事をいただきました。さらに、私たちが思うようなアプリ開発における新しいアイデアを出してもらうには、考えて作りきることまでできる中学2、3年生が良いと先生から提案をいただきました。
- 企画提案した瞬間の先生の反応は?
塩澤 :ヘッドウォータースが学校で特別講義をする意味付けとして、「ロボアプリ開発を早いタイミングから始めている自社の強みを活かし、Pepperを使った授業をしたい」と話してみたところ、その瞬間の先生のリアクションは上々だったので、とても安心しました。
- 中学生にアプリ開発を任せるのは難しかったのでは?
塩澤 :確かにアプリを全部開発してもらうとなると中学生には無理かもしれません。そこで、アプリ開発のメインは私たちが請け負い、生徒には簡単にできるプログラムの一部分を任せるということにしたのです。
企画は無事決まったが、次なる課題は「生徒にどのように楽しんでもらうか?」であった。楽しく飽きさせずに授業をすることは、学校の先生でも頭を悩ませるところである。この課題にヘッドウォータースはどのように向き合い解決していったのか。

塩澤 :例えば、どこかの店舗にPepperを設置するなどの活用方法であればイメージしやすかったのですが、学校の生徒が相手なので、「作って納品すれば良いわけではないな」と思いました。授業だからと言ってホワイトボードに書いて説明するだけでも面白くないし、生徒は飽きてしまいます。やはり手を動かして何か成果物ができる流れを作らないと生徒には満足してもらえません。そこで解決のヒントとなったのが、Pepperのアプリ開発に使うソフトウェア、「Choregraphe(コレグラフ)」でした。コレグラフは、ほかの開発ツールと比べると見た目も分かりやすく使いやすい。きちんと説明をすれば、中学生でも簡単な作業であれば可能なはず。そこで、生徒にコレグラフを触らせてプログラミングしてもらうことにしました。
Pepperに触れ、手を動かして生徒が楽しむためのコアアイデアは見えた。しかし、塩澤氏は特別講義を進めていくステップについても相当考えたという。生徒をやる気にさせるため、どこからスタートし、どこまでを任せるのか。さらに、ヘッドウォータースと生徒の業務の切り分けも重要であった。

塩澤 :特別講義は全部で5回あったため、各回の授業内容を考えました。まずは実施内容の説明をした後、生徒をグループに分け、アプリのアイデア出しのディスカッションをしてもらいます。2回目では各グループで考えたアイデアを整理して発表。その後、私たちが生徒のアイデアを整理し、どんなアプリにして、どこを開発してもらうのかを決めます。3回目では開発するアプリの発表と、開発環境に慣れてもらうためコレグラフの使い方を教え、実際に触ってもらいながら開発をスタート。そして4、5回目も生徒の手で開発を行い、最後にお披露目会で発表するという流れにしました。
- 毎回テーマを変えて飽きさせないようにスケジュールを組んだ?
塩澤 :そうです。開発に100%時間を費やすことのできた講義は実質2回ですが、生徒にお願いする内容を絞れば問題ありません。むしろ、その程度にまで作業を限定しないと、中学生の手に負えない内容となる懸念もありました。また、最初から作るアプリが決まっているよりも、アプリのアイデアを考えるところからスタートしたほうが、生徒もやる気になるし楽しめるだろうと判断しました。ただし、中学生からどんなアイデアが出てくるのか全く分からず、技術的な面で実現可能なものへと着地できるか不安はありました。
こうして講義の各回の内容は決まった。しかし、企業とは異なる「学校特有の事情」を考慮したスケジュール調整をする必要があり、その点においても苦労したという。

塩澤 :最初に特別講義の話をいただいたのは2015年の初め頃です。その後すぐに品川女子学院の先生と顔合わせをしました。ここまで進むのに時間はかからなかったのですが、全5回ある講義の初回を実施できたのは5月になってからでした。学校には試験期間や長期休暇もあるので、そうした時期に入ると生徒はもちろん、先生ともコミュニケーションが取りづらくなります。今回のプロジェクトも年度末の期末試験、春休み、1学期の中間・期末試験、さらに夏休みを挟んで2学期にまで渡って行われました。先生と話すなかで1学期はどこまでやるか、2学期にはどこから始めるかなどの議論をしたのですが、学校行事の合間を縫って上手くスケジュールを組むことは新鮮である反面、苦労した点でもありました。
- プロジェクトが間延びして、生徒が飽きてしまう問題をどうクリアしたのですか?
塩澤 :企画フェーズと開発フェーズを分けてスケジュールを組みました。1学期の中間試験期間に入る手前までに、アプリのアイデア出しと発表の授業を終わらせ、1学期後半になってからアイデアをもとにアプリ開発してもらう構成です。こうすることで学校の試験期間を利用して、企画フェーズで出てきたアイデアを私たち側で時間をかけて整理し、実現可能な企画へと調整する期間へ充てることにしました。こうしていくつかのハードルを乗り越え、特別講義当日のスタートラインに、ようやく立つことができたのです。
Pepperのアプリ開発に取り組むヘッドウォータースにある日、「品川女子学院で特別講義をしてほしい」という依頼が舞い込んだ。一般企業相手の仕事を日常業務としていた同社は、学校が相手ということで驚く。しかし、大人が考えもつかない新しいアイデアの発見や、Pepperを通してICTに興味を持ってもらうことをメリットと捉えて快諾し、プロジェクトはスタートした。生徒を飽きさせない授業の進め方、さらに試験期間や長期休暇を避けてスケジュールを組み立てていくなど、一般企業とは勝手の違う学校特有の事情に試行錯誤しながらも、無事、特別講義の日を迎えるのだった。


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女子中学生のアイデアをカタチにして成功へと導け!ヘッドウォータース・品川女子学院コラボ企画 -開幕当日-
 
取材協力 株式会社ヘッドウォータース 様
http://www.headwaters.co.jp/
(取材日 2016.09.08)

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